見出し画像

【詩作】花

小さく か弱き種子は
海を漂い 流れ着いた
どこでもない所へ

その子はみなしご
非力で 威厳もない
みじめで みすぼらしい

世の人は 子どもを嘲り
あるいは手を叩いて
口々に 讃えた

耳をつんざく 侮蔑と賞賛の嵐
少女は手で顔を覆い
孤独に住処を求める

まことに かの人は
我々の病を背負い
我々の悲しみを担った

人々よ 記憶せよ
剝きだしの肌に 釘打たれ
刻まれた血痕を

はだしの野生児よ
還りたまえ
海へ

癒えぬ傷口が
塩辛い涙に沁み
痛みで 顔が歪まぬように

そして 咲き誇れ
したたかに 気高く
美しく

砂の大海原を生き抜いた
一輪の薔薇
ここにありと


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?