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Smart Eye Cameraで眼科診療が劇的に身近になる話

Smart Eye Camera(SEC)とは

現役眼科専門医が日本及び開発途上国での眼科診療を通じて感じた問題点を解決するため自ら発案して開発を行い,医療機器として実用化に成功した眼科医療機器.
SECはスマートフォンのアタッチメントであり、スマートフォンに取り付けることによって,既存の細隙灯顕微鏡と同様に眼瞼・角結膜・前房・虹彩・水晶体・硝子体の観察を行い,白内障などの眼科疾患を診断することができる.

https://ouiinc.jp/product/

要は眼科医にとってはおなじみのハンドスリットのスマホ版といったところ.
アタッチメントの変更で直像鏡にもなったり,開発中(2023/10時点)ではあるが倒像鏡にもなったりする.

以前からぐちょぽい先生がSECについて言及されていたのは知っていたので,今年の臨眼でも器械展示があり直接足を運んでみた.

本件はPR案件ではないのでガチのレビューです💪

外観

実際に手に取った第一印象は「めちゃくちゃ軽い」
光学系以外のパーツは3Dプリンタで出力されており,前眼部アタッチメントの重量は約20g.
前眼部アタッチメントと直像鏡アタッチメントを一般的なメガネケースに入れた状態+スマホでトータル295gであった.
これなら白衣やスクラブのポケットに入れても全く問題ない.
基本的なパーツはレンズ・スリット・ブルーフィルターの3つに分かれている.
これらを取り外したり順番を入れ替えることで、スリット・ブルーフィルター・ディフューザーとして撮影が可能.

前眼部アタッチメント
ブルーフィルターモード
ディフューザーモード
眉毛部にあてがって眼との適切な距離を取りやすくするアタッチメント
タイヤ部分を転がせば左右の眼を平行移動できる
直像鏡アタッチメント

現時点で対応スマホはiPhone8,SE(第2世代,第3世代)となっている.

画質厨のねむた医がTwitterで
「我,iPhone 15 Pro Maxの民ぞ?😒そんな化石iPhoneで大丈夫か?🤷‍♂️」
的なツイートをしていたところ,OUI Inc.の戸澤さんから
「ぜひデモ機を使ってみてください!😉(使ってから言え!)」とお声掛けいただき快諾した.

使用感

届いた即日,自宅に持ち帰って愛猫2匹の眼を診た結果
画質に全く不満なし.
なんならオンボロ病院の据え置きスリットやハンドスリットよりよっぽど見やすい.
ハンドスリットにありがちな前房深度の過小評価(浅めに見える)もない.
そして眼の中まで可愛い我が家の猫たち.(noteにアップロードできる画像の容量的にgifの画質は泣く泣く落としている)

1号(9歳)の右眼前眼部
一瞬Grade3くらいの白内障に見えるが
タペタムの反射と思われる
虹彩が青くてかわいい🐱
2号(6歳)の左眼前眼部
昔から7時方向に虹彩メラノーシスがある
虹彩はやや緑がかっていてかわいい🐱
1号の右眼直像
ヒトの網膜だと萎縮網膜っぽいが、
これもタペタムと思われる
2号の左眼直像
人間だとrim菲薄化から緑内障を想起しそうな視神経乳頭

@獣医眼科の先生 猫の眼の正常がわからないので所見があれば教えてください🐱

これらは専用アプリを用いて動画で撮影(最大1分),クラウドにアップロードされる.
撮影はメディカルスタッフでも問題なく,「D273 細隙灯顕微鏡検査(前眼部)48点」の保険点数請求も可能である.
他科の医師やメディカルスタッフが撮影し,それをアプリ上のスレッドやブラウザから眼科医に診断を仰ぐことも可能となっていた.

直像鏡アタッチメントは「D255 精密眼底検査(片側) 56点/(両側)112点」の請求可能.
本来の直像鏡には撮影機能はないため,アプリ上での録画機能は搭載できないとのこと(搭載すると眼底カメラになってしまう?)
しかしそこはiPhoneベースなので画面収録機能を使えば裏技的に動画撮影は可能だった.
録画自体はNGではないが,診療記録とすることはできない模様.

Good!🤩

  • 小さくて軽いので持ち運びが超簡単

  • スマホ世代なら直感的に使えるアプリの完成度

  • ネット環境があれば遠隔診療も可能(バイトください)

  • クラウドにアップされた動画はAIによって診断補助される(ベータ版)

  • 画質ヨシ!

  • 外部光源不要

  • AirDropで他のApple端末に簡単に動画を送れる

  • 直像鏡アプリのオートフォーカスが優秀

  • 税込286,000円 or 6,600円/月と従来のハンドスリットより激安(興和の乾電池モデルは定価55万円,カメラ内蔵モデルは90万円,据え置き型はさらに桁がひとつ増える)

  • 女の子に「最近ちょっと眼の調子が悪くて…」と言われた際にサッとポケットから取り出してすぐに診察可能

Hmmm…🤔

  • 対応iPhoneの問題(iPhoneSE 第3世代のiOSサポートはおそらく2027年まで,Lightning端子問題)

  • 前眼部アタッチメントのパーツが細かくて紛失しそう

  • アタッチメントと干渉するためスマホリングくらいしかiPhoneを守るものを装備できない

  • 医療機器なので個人で購入するには価格面でややハードル高め

  • iPhoneのステータスバーがアタッチメントで隠れるのでバッテリー残量などの確認ができない(小窓があれば🙆‍♂️)

  • 使用中は常時ライトONなのでバッテリー消費と発熱が激しい(理論上は満充電から5時間以上点灯できるらしい)

  • ねむた医が会話の流れで急にポケットから細隙灯を取り出して診察しようとするとキモくなる可能性大

Next🫡

  • Magsafeで装着できるアタッチメントがあれば度重なるiPhoneのモデルチェンジにも対応できそう?位置ズレ問題はあるか🤔

  • 前眼部アタッチメントのパーツは取り外さずにスライドのみで切り替えられるシステムになると良さそう🤏

  • スリット光は左右からの2アングル,可能なら縦横90°回転出来ると最高(現行モデルは左側からのみ,上下持ち替えれば左右2アングルは可能)

  • カメラの位置関係上,縦持ちで左眼の撮影をすると鼻と干渉しやすいので撮影距離をもう少し離せるとよい(現在は2cm程度,これもスマホの持ち方を横持ちなどに変えれば干渉自体はある程度避けられる)

  • 散瞳していれば直像鏡アタッチメントでも結構広範囲の観察が可能だったので倒像鏡アタッチメントとの差別化に期待

  • 直像鏡アプリにも光量調節バーが欲しい

  • 前眼部アプリの光量は現状より低めをデフォルトにしても良さそう(もしくは個人設定をセーブ)

  • 動画撮影時に音声も録音されるのでアプリ上で録音のオンオフ設定したい

まとめ

めっちゃサイコー🤩
現時点でも眼科専門医から見てほぼストレスなく使用できる代物だった.
実際の往診バイト先にも導入を打診した.
ヒトだけでなく動物にも使いやすく獣医の先生方の間でもユーザーは増えているらしい.
これまで眼科診療といえばパッケージの大きさから導入しにくい場面が多かったが,ガジェットレベルまで落とし込めたSECであればポケットサイズで導入可能である.
しかも眼科医が常駐していなくても,ネット環境さえあればリアルタイムまたは後日確認して診断する事が出来る.
ガジェットとAIの発展で眼科診療はより身近なものとして世界中に広まっていくに違いない.

また現在スマホ一体型のSECも開発中とのこと.
iPhoneは古めのモデルでもなんだかんだ言ってカメラもOSもめちゃくちゃ便利かつ優秀なのでそこがAndroidになるとどうなるか気になるところ.
画素数が高い=美しいという訳ではないのでカメラ選びも難しい.
Android OSの自由度の高さをどう乗りこなすかもポイントになりそう.
iOSは5年サポートだがAndroid OSは2〜4年と言われている.

端末価格が低いほど普及させやすいためコンセプトと反するかもしれないが,個人的にはiPhoneのProモデルによる超画質撮影に期待したい.
3Dプリンタで現行パーツを流用して改造するオタクが現れそうな予感だが,改造したら診療報酬請求に問題があるかもしれない.
iPhone 15 Pro Max用の特製アタッチメント作ってください(超小声)

Smart Eye CameraならびにOUI Inc.さんの今後の展開に超期待してます.

https://ouiinc.jp/

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