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猫と格闘しながら本棚の片づけをしたら、本の神様が舞い降りた。

9月も半月が過ぎ、風が心地よくなってきた。

毎年、部屋の模様替えや大がかりな片付けをしたくなるのもこの時期。台風で家がめちゃくちゃ揺れるという体験をした今年、寝床の横にある本棚への恐怖心がただならぬものになった。

本は好きだけれど、本や本棚に潰されて命を失うのはイヤだ。そもそも1階の仕事部屋(仕事をしたり、するふりをして本を読んだりネットをしたりする部屋)で本が必要になったときに、2階まで取りに行くのがめんどくさい。

持って下りた本は案の定、2階に戻されることはなく仕事部屋もしくはその隣のリビングに積みあがっていく。

というわけで、本棚を階下の仕事部屋に下ろすことになりー。

猫と本棚と私

本棚の本を全部出し、紙袋や段ボール箱に詰めて1階に下ろす。本棚は夫が運んだものの、非力+加齢のこの身体では一度に多くの本は運べない。何度も何度も往復しなければならない。

部屋のドアは開けっ放しにしておくと猫がドドドドッ!と侵入してくるし、階段の途中には猫がドーン!と居座るし、空いた段ボールには大猫が子猫のふりして入ってるし、本だけでもたいへんなのに、猫が、猫がとにかく邪魔をする。

「邪魔じゃありませんよ、お手伝いですよ」というのをガン無視して、なんとか全部の本を下ろしたところで1日目が終了。


2日目。

朝起きたら、仕事部屋が見事に片付いてー、いるはずはなかった。

2階から下ろした本棚と、そこにおさめる予定の本と、もともとこの部屋に積みあがっていた本で、なぜか前夜よりも雑然としていた(猫か......)。

「さ、お手伝いしましょうか?」とやってくる猫たちを丁重にお断りし、ひとり片付け作業に取り掛かった。

本の美しさを再発見

本を片付けるときの「あるある」といえば、片付けながら「これどんな話だっけ?」と思い読み始めてしまうこと。

今回も何度もその危機が迫ったが、なにせ作業が大掛かりなので「読む」気にはならず「パラパラと見る」にとどまったことは、われながら賢明だったと思う。

で、あらためて本の、特に単行本の美しさを実感した。

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カバーを外したときの表紙の意外さや、表紙の見返しの次にあるタイトルが書かれている紙との間の薄紙(「力紙(ちからがみ)」とか「遊び紙」というらしい)のこだわりには驚かされる。(写真は『愛なき世界』三浦しをん著の薄紙、装丁は田中久子さん)

本を読んでいるときに、ではなく、こうして片付けをしているときにあらためて気づくのだから、なんだかちょっと得した気分になった。

本の神様が舞い降りた

猫たちの数々の妨害行為にもめげず、黙々と本を片付けた私にご褒美があった。偶然にも「本の装丁」をテーマにしたTV番組を見る機会に恵まれたのだ。

Twitterでいつも素敵な気づきを与えてくれる、おそらく相当ダンディーでクールなナイスガイに違いないそのお人(ろぎおさん)が、NHKの『美の壺』で「本の装丁」の回が再放送されることを教えてくれたのだ。

番組に登場した装丁家の坂川栄治さんは、「白場」と呼ばれる白い部分の比率を大事にしているという。

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私の本棚にあるこの本も、装丁は坂川栄治さん。

これまでは「シンプルな表紙」としか思わなかったけれど、こうして見るとこれ以上ない絶妙の「白場」に思えてくる。そうだ、そうに違いない。

さらに、装丁家といえば中野翠氏のコラム集の装丁を手掛けている菊地信義さんという方がいるのだけれど、と、調べていたら、なんとドキュメンタリー映画があるというじゃない。

映画『つつんで、ひらいて』 広瀬奈々子監督

今の今までこのことを知らずに過ごしてきたなんて、なんという不覚。

でも、こうして本棚を片付けたから知ることができたわけで、きっと神様からのご褒美なのだと思う。

おまけ

本棚にはこんな本も。

昭和29年の絵本『こねこのぴっち』

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ご覧のようにかなりボロボロなんですが、ハンス・フィッシャーの絵は、「紙」とマッチしているな、と。

本の神様は「紙」に宿っているのかもしれない。なんつって。


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