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【映画日記】アカデミー賞を予想する気にもなれず

2024年2月24日

例年ならそろそろアカデミー賞の予想でもー、とウキウキする時期だけど、今年はなぜだかその気になれず、ひたすら自分が見たい映画を見る日々。

『ジャングルのけもの』(2022年)

映画『ジャングルのけもの』

MyFFF(マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル/今年で14回となるフランス語圏最大のオンライン映画祭)で紹介された1作。

ある出来事の到来に備えて25年もの間、ナイトクラブに通う男と誘われて共にする女。

原作はヘンリー・ジェイムズの短編で、何かよからぬことに見舞われるのではないかという予感に取りつかれた男のー、という映画のメタモチーフ。
男女2人しか登場しない原作を、映画では1979年~2004年のナイトクラブに置き換え、怪しい案内人(ベアトリス・ダル)が登場。

クラブカルチャーの変遷だけじゃなくその間の社会情勢の変化も描かれる。こうやって世界は変わっていくのに、この男はー、と考えさせられる。

残念なことにヘンリー・ジェイムズ(↓調べました)を知らず、クラブの流行りも90年代あたりまでしかわからず。 それでも楽しめた1本。

*ヘンリー・ジェイムズ(1843-1916年)
19世紀から20世紀の英米文学を代表する小説家。
『ねじの回転』ほか、トリュフォーの『緑色の部屋』(1978年)、『ある貴婦人の肖像』(1996年)『鳩の翼』(1997年)など映画化された作品も多い。

『スペアキー』(2022年)

映画『スペアキー』

こちらもMyFFFの1本。
フランス東部の低家賃住宅に家族と暮らす15歳の少女フィフィのひと夏の成長ストーリー。

リッチな旧友一家がバカンスで家を空けることを知り、スペアキーを拝借して家に入り込む。が、バカンスには行かなかった兄が帰ってき鉢合わせしてしまう。そこから2人のひと夏がー。

若い2人のひと夏、というとロマンスを想像してしまうけれど、この作品はそうならないところがミソ。そこがイイ。フィフィの家族は、父親違いのきょうだいに母のイマ彼、長姉の赤ちゃんもいて心休まることはない。

そんな一家の中でちょっと冷めた少女が”スペアキー”を手にしたことから外の世界を垣間見、自由に目覚めていく。その姿がとても清々しい。

ちょっとエリック・ロメール風な佳作。

『5時から7時までのクレオ』(1961年)

映画『5時から7時までのクレオ』

アニエス・ヴァルダ監督初期の作品。
癌の不安を抱き検査結果を待つクレオの2時間をほぼ2時間で描く。

冒頭のタロット占いのシーンだけがカラーで、以後モノクロ。パリの街をさまよい歩くクレオをとらえるカメラはドキュメント風。友人の音楽家にミシェル・ルグラン。作中の短編コメディにゴダールと当時妻のアンナ・カリーナが登場。

個人的にはクレオが全編サッパリで。が、ラストの気持ちはよくわかる。
見どころは、短編コメディに登場するサミー・フレイ。遠目だけどめちゃカッコイイ。

『テオレマ』(1968年)

映画『テオレマ』

初パゾリーニとなる1本。

映画『ソドムの市』(1975年)完成直後に惨殺体として発見されたピエル・パオロ・パゾリーニ監督。かなりの胸糞と言われる『ソドムの市』とその後のエピソードに映画も敬遠したくもなるけれど、嫌なものを見たいという気持ちは抑えられない。アマプラで見放題ならなおさらー。

とあるブルジョア一家に謎の男がやって来る。その男の怪しさに魅入られた一家の面々は男が去った後に奇怪な行動をとり、一家は崩壊する、という話。

男が何者なのか、家族それぞれの崩壊のしかたから、何かしら神的な信仰的な、映画『マザー!』(2017年)みたいな話なのかと思ったけれど、パゾリーニはこの男をキリストと見る解釈を否定しているらしい。

年嵩の家政婦をかわきりに、妻、息子、娘(ゴダールの『中国女』のアンヌ・ヴィアゼムスキー。全然印象が違う)がその性的な魅力に魅入られていく。が、案外表現はソフト。直接描写はほとんどナシ。なのに父親もー、って話で、嫌でもこちらの想像力が掻き立てられる。

少々言いにくいけれどー、面白い、好き。








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