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オルガに拒まれる虚無感 映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

2024年8月2日

モノクロで映すタバコを持ったミハリーナ・オルシャンスカ。
もうこれだけで「見たい!」となったこの映画。

1970年代にチェコスロバキアに実在した女性大量殺人犯の物語。非常に重い……。

映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』(2016年)

裕福な家庭に育つものの両親の無関心と虐待により心に傷を抱えるオルガ。
酒とたばこに溺れ、自身を「性的障害者」と呼び女性たちと性交渉を重ねる。心を許せる相手が現れるが、やがて破綻。

自分には自殺か殺人による死刑しか選択肢はないと考えるようになり、プラハの中心地で電車を待つ人々の列に大型トラックで突っ込む。

8人の死者と12人の負傷者を出したこの事故により、オルガは死刑が宣告される。1973年、22歳のオルガは同国で最後の女性死刑囚となった。


舞台は1970年代。民主化運動「プラハの春」(1968年)の後のチェコスロバキア。この作品はあくまでもオルガの内面を描いているが、そこに弾圧された社会の空気そのものを映しとらずにはいられない。

が、「オルガだけの問題ではない」とオルガに気持ちを近づけようとしても、スッと距離を置かれてしまう。

薄いグレートーンのモノクロ映像がたまらなく美しく、一方、あまりにも淡々とした展開に、オルガの不遇(虐待は直接描写はなし)が最後までそれほどのものとは思えなかった。そしてラストのオルガ自身の態度もー。

この映画を見ている自分自身が、まるでオルガが耐えられなかった「社会の無関心」を体現しているような気がして、オルガに拒まれているような気がして、オルガの周りの人もそんな気持ちだったんじゃないかな、なんて思ったところでどうしようもない虚無感が残った。後味は悪いが、これを味合わせたい映画なんだろう。

オルガを演じるのはミハリーナ・オルシャンスカ。
一度見たら忘れられないクールな美しさ。が、この映画ではその美しさを見事に封印。歩き方、たばこの吸い方、すべてで落ちていくオルガを演じています。

◆こちらの映画では美しさ全開でロシア最後の皇帝ニコライ2世を翻弄。

◆ポーランドを舞台としたこちらではチョイ役で出演。

◆『カルガ 積荷の女』(2018年/ポルトガル)は主演。結構暗い。
(こちらでちょっと紹介)

◆こちらでもちょっとだけ紹介。

映画『私、オルガ・ヘプナロヴァー』原題:Ja, Olga Hepnarova
2016年/105分/チェコ・ポーランド・スロバキア・フランス
監督:トマーシュ・バインレプ、ペトル・カズダ
出演:ミハリーナ・オルシャンスカ、マリカ・ソポスカー、クラーラ・メリスコバほか

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