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多くの名曲を残したバート・バカラック/古いロマコメに感じるミソジニー/あのドラマが再放送されないわけは

2023年2月13日

作曲家バート・バカラックが亡くなった。94歳だった(正直言いますと、まだご存命だったとはー)。稀代のヒットメーカーと言われ、その名曲の数々は多くの映画の主題歌や挿入歌として作品に彩りを与えてきました。

映画『アルフィー』

映画『明日に向かって撃て』(1969年)の「雨にぬれても」(B.J.トーマス)や、映画『ミスター・アーサー』(1981年)の「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」(クリストファー・クロス)などが大ヒット。

マイケル・ケインがプレイボーイを演じた映画『アルフィー』(1966年/2004年にジュード・ロウ主演でリメイク)の主題歌は、主人公アルフィーに対する女たちからの愛あるお説教という歌詞。そこにバカラックのこの上なく美しいメロディが。

さらに映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年)での「世界は愛を求めている(What The World Needs Now Is Love)」、映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997年)での「小さな願い(I Say a Little Prayer)」が使われたシーンは、これらの映画の最大の見どころといってもいいでしょう。

多くの名曲を残していただいた感謝とともに、ご冥福をお祈りいたします。


で、そんな名曲が使用された映画にケチをつけるわけじゃないですが、いや、つけます。映画『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997年)に一言。

別れたあと、今は”親友”という男女。が、この男のほうが富豪の娘と結婚することになり女(ジュリア・ロバーツです)はオモシロくない。なんとか結婚を阻止しようと奔走する、というあらすじです(ザックリでスイマセン)。

もう、ただの嫌がらせです。「カラオケはちょっと苦手……」という婚約者(キャメロン・ディアスです)にわざわざ大勢の前で歌わせたりするわけです。が、すべて裏目に出てしまい元カレの婚約者への愛はむしろ強くなる。結婚式当日までその妨害工作が続くのですがー。

ま、ロマコメなので「こんな嫌がらせ、ひどいっ! なんて女なのっ!」なんてことは言いません。こっちもそれ込みで楽しんでいるのですから。

問題はこの女のこじらせの根の深さです。女を出さない、出せないタイプで、それがもとで結婚を望んでいた彼氏とも破局。なのに「そんなこと引きずらない私、イイ女」って自負もあって破局後もその彼氏の恋愛相談に乗ったりして、「この男のことを一番わかっているのは私よ」って思ってる。いますよね、そんな人。

マニッシュなファッションとラフなヘアスタイル、大口を開けて豪快に笑う”自称サバサバ女”。女、女した女のことを下に見ているくせに、自分自身も元カレにめちゃくちゃ執着していて、しまいにゃ「私と結婚して」と言い出す。は?

この主人公の女に内包されたミソジニーは、2020年代の世においてはなかなかキツイ。しかも1990年代のジュリア・ロバーツだからそんな痛さも魅力的に見えてしまうから恐ろしい。まさか、ラストに本当に好きな人と結ばれて良かったね! となりはしないかとハラハラ(結末はネタバレ禁で)。

さらにこの自称サバサバ女の恋のアドバイス役がイケメンのゲイ友、というテンプレ設定。映画『ロマンティックじゃない?』にある指摘そのもの。

ま、時代なのでしょう。そういうことにしておきましょう。

最後に見どころを。そのゲイ友を演じるルパート・エヴェレットが最高です。彼がレストランで突如歌い始めるのが、バカラックの「小さな願い(I Say a Little Prayer)」

ココ!この映画の見どころはココです!


そういやちょっと前に見た昔のキムタクのドラマ(『眠れる森』1998年・フジテレビ)もそんなこんなが気になって、肝心のミステリーもピンとこなかった。

結婚を控えた女性(中山美穂)が主人公で、彼女につきまとったり守ったりするのがキムタク。婚約者が仲村トオル(ホント、ザックリでスイマセン) 。

この中山美穂といい、キムタクにいいように扱われる本上まなみといい、もうひとりの横山めぐみといい、登場する女性がまるで男性の所有物。結婚がすべて、といった感じモロ出しで、小さな食卓で鍋なんかしちゃって、いや、していいんだけど、目の前にある鍋を当然のごとく彼女たちによそわせる。テメェのほうが近いだろっ!ってドラマです(ん?)

一部じゃ「このドラマの影響で引き起こされたと考えられる凶悪事件があって再放送できない」なんてことが言われているようですが、たぶん違います。再放送されないのは、今見てもつまんないからだと思います。

2000年直前の日本って、こんなでしたっけ? ま、今もアレだけど。


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