『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』をみた

ゔぇのむ2をみた。ヴェノムというコンテンツについては、原作を全く知らず、そしてスパイダーマン(サム・ライミ版の)で鉄パイプカンカンしてたなぁ〜くらいの印象。そういうノリで書いていく。


ざっくり感想

なんか中途半端だった。色々と。


自分の記憶を整理するためのあらすじ

ヴェノムとエディ、互いに互いが少し鬱陶しくなってきたところから話が始まる。

“普通”に、ライフ財団事件以前程度の知名度を維持しつつ生活したいエディと、せっかく自分が無双できる地球での生活を謳歌したいヴェノム。一時は巨悪と戦うことで団結していた二人(?)は共通の敵を失ってしまい、その内に不満を募らせていた。

そしてついに決別。きっかけはシリアルキラーへのインタビューを通して、彼の余罪を明らかにした功績による。これにはヴェノムの記憶力とトレス力、そしてエディ保有のPCとインターネットが寄与しているのだが、これを機にさらに鼻が高くなったヴェノムに対してエディがキレる。

悲しいかな二人は離れ離れ、個別の生活を歩むかと思いきや、ヴェノムは適合者が見つからず、エディはシンビオート強化されたシリアルキラーに命を狙われ、互いが互いを必要とする状況に。

またもアンがシーヴェノムとなってヴェノムをエディに配達、エディは元カノと元カノの今カレの前でヴェノムに謝罪という名の告白を余儀なくされる。

なんやかんやでまた一緒になった二人はシリアルキラー(とその恋人)が待つ結婚式場へ……まぁ勝つよね。ダークとはいえ、ヒーロー映画の主人公だし。

そんで最後に馴染みの警官が次回の布石っぽく写って終了。


見る前の不安

1の方でヴェノムとの出会い、異種間で友情が芽生え、ライオットを倒すという王道ストーリーを消費してしまったため、2はどうなるのか心配ではあった。1が思ったより平和な話だったのでヴェノムの凶悪さをクローズアップしてくれるのか? という期待もあったけども。

ヴェノムとの関係も既に最高に近かったため、2で関係にフォーカスするなら一度離縁させなければならないなと思っていたり。それは当たっていた。

そして1の最後にあった次回へ続く引き(洋画はこれをしないと気が済まないのか)に出てきた、凶悪犯罪者っぽい敵役があまり魅力的でなさそうというか。

1のボス、インドっぽい彼には、人類種の宇宙進出という大きな夢があった。そのためにシンビオートを研究し、異星生命体相手に対等な関係を結ぼうというハングリー精神があった。

端的に言えば、カリスマがあるということだ。敵役にも彼らなりの正義(というよりは大義)があり、しかし世間との価値観のズレによって排除されてしまう。ぼくはそういうのが好きなのだ。

だからもう捕まってる時点で、もうね。やらかしてるってことやん。下手打っとるやんけ。

そんな感じで、正直なところ2に関しては期待よりも心配が大きかった。そしてそれは杞憂ではなかった。


頑張ってストーリーラインを追いながらグチグチ文句を垂れ流す

1.謎の収容施設からスタート

ここどこだよ。また「見る映画間違えた?」って不安になった。

原作をしっかり押さえていればこんなことにはならないかもしれないけど、いきなりゴツい白人男性と恋仲にあるらしい黒人女性(しかも異能持ち)が出てくると「映画の主役乗っ取られた?」と思ってしまう。

どうやら数多の社会不適合者たちを収容している宗教施設というか孤児院らしく、その中でも”力”が強すぎる女が更なる高等監視機関へ護送されるらしい。

ところが随伴している警官が女に絶叫を喰らわせられ、パニクった結果発砲。最終的に女は収容されるが、ぺーぺーの警官には死んだと伝えられていたらしい。

なんで絶叫用の対策してねえんだ。施設からなんの連絡も受けてなかったのか? 「なんかヤバそうなやついるんで引き取ってくださーい」くらいの里親気分でノコノコやってきたのか? 杜撰すぎでは?

時は流れ女は収容プロトコルがしっかりしたSFチックな施設に転居。男は社会に出るも殺人を繰り返し投獄されてしまいましたとさ。


2.エディと警官と殺人鬼

ライフ財団のいざこざ後、それなりに復帰しつつあるがまだかつての栄光を掴めていないエディ。と、なにやら仲が深そうな警官。あれ? こんなやついたっけ?

どうやら色々な事件に巻き込まれ、それでも「何も知らない」で一点張るエディに辛酸を舐めさせられ続けている警官の様子。事情聴取とかを通してよく会うようになったのかな。エディはともかく、ヴェノムはあまり好きではなさそう。女性用トイレで仕返しの作戦会議を開く程度には。

そんな中、エディに連続殺人鬼からの招待がかかる。他の人間は面会させないのに、エディだけとはお話しする彼の名はクレタス。前回の面会では特に何も得られなかったエディは、記者生活再興を願ってもう一度会いにいくことに。

会ったけど別によく分からんこと言われて残念なエディ。シリアルキラーのポエマーとか相手にできませんわ。

しかしヴェノムは壁に書いてあった色々を完全記憶しており、エディの部屋で再現大会。両手を同時に使うという「らしい」アクションが見れて良かった。

すると判明したのが死体遺棄現場の岬。これを期にエディ・ブロックが有能記者として返り咲くことができました。めでたしめでたし!

そして間に警官を一切通さなかったので好感度ダウン。やっぱめでたくないかもしれない。


3.果たし状

エディが余罪を確かなものにしたために、前倒しで死刑が決定してしまったクレタスから感謝の手紙が届く。

文字をぐるぐる回転させながら書くという特徴はたしかにサイコっぽいけど、少し狙い過ぎな目もある気が。そして書いてる最中によちよち歩いてきた蜘蛛を素手でバーン! からの味見はかなりきつかった。自分自身、知らねー虫を進研ゼミの雑誌でぶっ叩いたらメチャクチャ臭かった経験があるので、マジで鳥肌が立った。狂ってるよ、貴様ら。

ここでクレタスの悲しい過去が明らかになる。曰く家庭内暴力を受け、復讐として家族を殺し、施設でもいじめられ、助けてくれた黒人女性に恋をしたらしい。しかしある日二人は離れ離れになってしまったというのだ。可哀想だねぇ。こんな可哀想な俺を死刑にしやがって地獄に堕ちろエディ!

しかしエディはそんなこと知ったこっちゃないし、凶悪殺人犯は世間にとって快楽殺人のキチ○ガイであってくれた方が分かりやすくて良い。

最後の面会にもエディは立ち会うが、何故かクレタスはエディの荒んだ家庭環境をべらべらと喋り出し、キレたエディと同調したヴェノムが檻の中の囚人に対し暴力を振るう。その際にエディ・ブラッドを舐めたクレタスが「おめぇの血変な味すんなぁ!?」隠し味シンビオートに気づく。

指先についたエディの血ってあんな磁性流体っぽい動きするんすね。献血してみてほしい(バイオテロ)。


4.倦怠期なふたりと元カノ

再帰して経済状況が良くなったのか、でかいテレビ(SONY製)なんかも買っちゃったエディルーム。鶏二羽も室内で放し飼いする余裕を見せている。糞とかどうしてんだ。

ストレス発散用の噛めるタイヤなんかも用意されており、なんやかんやこの部屋でエディとヴェノムが生活してきたなりの変化が見れたのは嬉しい点。なんならこの部屋になるまでの買い物とかを映像化してくれ……。

しかしヴェノムは脳みそを食わないと必要な栄養素が摂取できない。妥協案としてチョコレートでも代用できるらしいが、唯一の入手ルートはあのおばちゃんが経営しているちっちゃい店。入荷も一定ではないらしく、度々養鶏場に忍び込んでは忍び食ってる。

養鶏場に行くまでにビルとかの壁バリバリしながら移動してたのは大丈夫なのか? 下の方で不明な落下物による死傷者とか出てないか? と心配になってしまうのはぼくが面倒くさい人間だからなのでしょうか。そして養鶏場の管理というのは、勝手に食ってもバレないくらいのゆるいものなのでしょうか。私、気になります!(氷菓未履修)

そんな日常に嫌気が差してきたヴェノム、そして元カノからの連絡を受けてちょっと期待なんかしちゃったりしているエディ。

まぁ元カノからの連絡内容は復縁どころか医者と結婚する報告なんですけどね、初見さん。

そんなわけで二人が二人とも精神的にやられてしまい、溜まった鬱憤はついに危険な領域に突入する。

離別!!


5.失って初めて気づく

ヴェノムはエディから離れ、男(女)をとっかえひっかえにする。しかしエディほど長続きする関係は見つけられず、一時的にパーティでハイになるもやっぱりエディのことをサカナクションばりに忘れられない。

エディはエディでシンビオートパワーで自由の身になった殺人鬼に狙われ、ただの人間に過ぎない状態で狙われるともうめちゃくちゃになってしまうので恐怖。

やっぱりデカい敵がいないと二人はひとつになれないのだ。バットマンもジョーカーがいないと成立しないみたいなやつ。しらんけど。

まぁスーパーヒーローっていうものは逸脱者に他ならないからね。AC4系の世界でもリンクスとネクストが強すぎて、代替可能な多数の凡人によって制御されるアームズフォートが覇権を握るわけだし。パイルの前には無力だったけど。

そんなこんなでシーヴェノムを経由して、他人の前で女の子の特権大胆な告白をさせられたエディは再びタッグを組んでやり直すことに。

レッツゴー結婚式。


6.その結婚、異議あり

クレタスと黒人女性(名前完全に忘れた。ごめん)の結婚を神父がムリヤリにさせられてる。互いに手土産というか復讐相手を用意しておいて、感情が高まりきった頃に多分殺そうとしている。わかりやすい悪党ムーブだ。

しかしそれを見逃すわけには行かない本映画の主人公たるエディ&ヴェノム。さあ敵をやっつけるぞ、と思いきやヴェノムが急に弱気。

「赤いのは無理」らしい。赤とはつまりカーネイジの体色であるんだが、なぜ?

そもそもがカーネイジ、ヴェノムのことを「ファーザー」と呼んでいるからヴェノムの子供、ほど直接ではなかろうとも、何かしらの因子を受け継いだ子孫であると思われる。しかし「赤いのは無理」。おまえにも赤い素質はあるんと違うんかい。

原作知識があればすんなりわかる理屈があるんだろうけど、全くフォローしていないぼくには脳内ハテナマークのまま受け入れるほかなかった。

ラストの戦闘だからある程度ドンパチは激しい。途中一般人による燃料投下からの炎上とか、所構わず叫ぶ女にカーネイジがキレたりとか、それに起因するカーネイジとクレタス間の関係悪化とかあったりして、ヴェノム側が勝つ。

女は釣り鐘に捕らえられ、クレタスは頭から食われ、警官はなんかまたシンビオートに感染したっぽいし、終わったんだか終わってないんだかな感じで一件落着。

その後は平和に鶏との再開、歴史の偉人とのトポロジーとか匂わせて、南国?の海岸で髪を靡かせるというヴェノムの夢を叶えて終了。このままいろんな治安ヤバ地域を二人で放浪していくのかな。

と、思いきや、突然ヴェノムがエディに自分たちの歴史を開示しようとする。つっても歴史ALLはエディの脳みそがぶっ壊れるので、ほんの少し。ほんの少し見せると……。

これ以降の内容については有料記事です。


主に気になったポイント

・声優

今回の映画はかなり場当たり的に見たんだけど、見に行く日にやってたのが吹替版しかなかった。

エディが諏訪部で、ヴェノムが中村獅童(一瞬大塚明夫かとも思った)。

まずエディは諏訪部ではないと思う。もう少し三枚目要素の多い……石丸博也とかだと完全にジャッキーになっちゃうだろうけど、そんな雰囲気の声優で良かったのでは?

あとヴェノムの声のエフェクトは元の人の声質じゃないとちょっとくどい感じがした。中村獅童だとぼくはリュークしか知らないので、そこを狙っていたとしたらもうちょい軽い演技でも良かった気がする。

その他は別に。もともと思い入れあるキャラとかなわけでもないので。


・エディとヴェノムの別離

雑な印象が拭えない。別れさせ方も、くっつけ方も。周りの環境が強制的にそうしてる感が強いというか。エディもあんなんだっけ? 少々短絡が過ぎないか?

しかもヴェノムのいる日常生活みたいなのが殆ど描写されないから、倦怠期がそのもの独立してお出しされてて、前回からの流れが少しぶった切られたような。

確かに映画というのは常に尺との戦いだとは思うけど、個人的にはもっとエディとヴェノムの日常が見たかったよ。というかそれだけでも良かったくらい。


・リーサルプロテクター

まぁバディものの金字塔というか。それはわかるけど。リーサル・ウェポン自体ヴェノムを観に来る層が見たことあるのか? ぼくだって昔さらっと見たくらいだし、ちゃんと通じてる?

白人と真っ黒な粘菌のコンビで、リーサル・ウェポンのパロディってのもちょっと黒すぎるジョークな気もするし。気にし過ぎかな。

ただ天丼は胃もたれした。別にそっからネタが派生していくわけでもないし。

もしかしてここまで連呼してたのって日本語吹き替え版だけだったりする?


・クレタスの過去

投げっぱなし。ヴェノム自体悪役が主人公みたいな触れ込みで始まった映画だったし、悪役の掘り下げを深くしようみたいな意図はあったのかも。

ヒール役の描写から始まるってのもね。「倒される側にもドラマがあるんだ!」っていう主張はわかるけど、そもそもが唐突すぎて、その上説明が不足しているように見えて感情移入もあまりできなかった。仮にできたとして、物語の最後でどうせ倒されることがわかっているキャラクターに感情移入するというのも、みんながみんな好き好むストーリーラインでもないだろうし。

かといって後半に倒されるべき存在を描写するとラスアス2みたいになるかもしれんし、確かに難しい題材ではある。悪役の物語というのは。

そして実際のクレタスの過去についてだけど、まぁよくある、というと現実の問題を陳腐化させてしまうかもしれないから安易なことは言えないが、家庭が悪かったという話。

親に愛されなかった子供が、その欠落を埋めるために様々な奇行に走るというロジックは理解できる。ぼくも人間の根底にあるものは親の愛だ、という宗教を信じているので。

要は、虐げる側に見える人間も、ぼくらの知らないところで虐げられていた人間だった場合、どう裁くのが正解かという問題提起だった。実際元凶を遡っていくとビッグバンまで到達してしまうだろうし。

ところがヴェノムは「知るかバカ! そんなことより脳みそだ」と言いながら(言ってない)クレタスの頭をパクリ。

つまりどういう社会環境であっても大人の行動はすべて自己責任であり、それを考えること自体が無駄ということか。

かなり暴論な気もするけど、しかし現状の社会はそうやって動いているようにも見える。

そういう皮肉ならいいんだけど。


・カーネイジって誰

誰?



責任を持つ気のないまとめ

前回が割と王道のストーリーだったから、今回はなんとかそれを脱却しようという気概は見えた。

ただぼくが見たかったのはヴェノムとエディのイチャコラであり、別に敵側の掘り下げとか興味なかったので、そういった観客には不評でしょう、という結論。

多分3はないだろう。あったとしても映画館では見ないかも。

そんな感じ。

ここはどこだ