居酒屋で花をもらう

隙がありまくる自分語り この人生はノンフィクション

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最近の記事

雨の中で踊る

映画「ルックバック」を見た。公開初日、オタクと終電を逃した人間のオアシス、バルト9。水曜日にチケットを取ったときには余裕のあった座席が、当日は満席。自分と同じような人間が入場のために長蛇の列をつくっていた。 ここからはそこにいた同じような人間が抱く、同じような感想にも似た、どこにでもある一人語りになる。 結論泣いた。藤野が春夏秋冬机に向かい描き続けるアバンタイトルで既に涙が込み上げていた。 学年のなかで一番絵が上手いと持て囃され、四六時中漫画を描いている。系統の違う技術を持

    • ラストオーダー

      今度会ったら伝えよう、の今度が来ない。いや来るのだが、伝えられないことが多い。 会ったら、合ったら、あったらと、機会を伺っているうちに損失をする。 映画を見たとかなにを読んでどこに行ったとか、話題っていつ振るんだっけ、てかマジでどうでもいいけど興味ある?無駄にりきんでしまっている時間の多いこと。相手と一緒にいる時間の5/6くらいは悶々と考えて最後の最後にぽつぽつと話し出す。だいたい会計する雰囲気になってる店や帰り道。え、今?と半笑いに相槌を打ってくれるみんなありがとう。 これ

      • 接し

        最近MBTI診断をやると毎回結果が違うんだと話すと「そんな何回もやってるの」と笑われた。相手に16類型なに?と聞くと「何度やっても変わらないんだよね」。 いや何回もやってるじゃん。ツッコミするの忘れたなとふと思い出すけど、多分もう2度と会えない。楽しい時間を証明する写真もLINEの履歴もないので夢だったのかもしれない。短い間ではあったけど鮮烈な幻を見られてよかった。こんなこと口に出せば爆笑されるだろう。そんな機会ももうないけど。などと打ち込んでいたら連絡が来て会うことになっ

        • 態度

          コンビニでタバコを買ったら年齢確認をされた。免許証を提示する。 店員はしっかりと生年月日を確認して、会計を済ませた。 名札には海外の名字が記されていた。 しっかりしてるなあと思った。 現地時間で3月10日に行われたアカデミー賞授賞式で、ロバート・ダウニー・Jrとエマ・ストーンのアジア人に対する態度がSNSで物議を醸していた。 失礼な接し方をしているように見えたから。 自分はそれを知ったとき、憤り、悲しみ、諦めともいえない感情を確かに持った。 同時に一瞬を切り取って2人を批判

          差し出す装い

          ワンピースを着ました。そう答えると、おしゃれですね!と返ってきた。 美容室で出された3冊の雑誌も読み終わり、ぼんやりしていたら始まった担当美容師との会話。 3月は卒業シーズンだから袴の着付けやヘアセットで朝が混み合うらしい。 袴でしたか?スーツでしたか?という話題。どちらでもない。 袴を予約するのは面倒で、スーツは自分を老けて見せるから敬遠していた。 通っていた大学では気合いの入ったオケージョンスタイルで卒業式に臨む人が過半数だったのもあり、当時好きだったブランドのドレスを

          自分のからだを焼くにおい

          Googleの口コミが2.5の美容皮膚科でほくろ除去してきた。CO2炭酸ガスレーザー。 受付をして、問診票を書いて、看護師に奥の部屋へと通される。 渡された鏡で自分を見ながら、消したいほくろを指差す。そこに蛍光ペンでマークを付けられる。 「ここです」「はい」「あと、ここも…」「はい」「…いま何個指定しましたっけ」 今回ほくろを10個除去できる。そういうコース。 私の顔にはほくろが星座のように散らばっている。例えがロマンチックだとまるで長所のようだけど、無秩序に配置された黒

          自分のからだを焼くにおい

          24

          主人公は苦境に立たなきゃいけない。 だから喉にガラスが刺さり、脳内にはモヤがかかり、目の奥は燃えている。まあ例えだが。 2022年12月24日に私は24歳になる。偶数が揃っているのが美しくて嬉しい。 だがその点だけが光るのみで、当の自分は影の中にいた。 数日前にコロナに罹った。 いくら暖を入れても止まない悪寒、上がり続ける体温、唾を飲むたびに眩暈がするような喉の痛み、止まない咳、鼻水。 発熱外来を受診するまではインフルか風邪だろうとタカを括っていた、というか言い聞か

          それだけじゃないよ

          8:30から新宿で「すずめの戸締まり」を見た。 最近よく眠れずすぐに目が覚めてしまうのと、話題作は週末はおろか平日夜も混んでいるのでいっそ早朝に見てやろうという算段。 朝の新宿駅は会社員が生気を失った顔をはりつけて歩いている。東口を出て歌舞伎町の方へ行けば、一面に閉まった飲食店。自分が世界の中心かのように大声で笑う女の子。昨夜は楽しかったんであろう男女。早い時間なのに声をかけてくる気合い入ってるホスト。正気か?ホワイトカラーらしい人は少なく、というより人が少なく、ゴジラ通りっ

          それだけじゃないよ

          海が光る

          母方の祖父が亡くなった。 葬式来てね、都内だから。母からの連絡が入って思う。 人生で初めての冠婚葬祭だ。 父方、母方ともに長寿の家系かつ、若い人間が全然いない。 結婚式も葬儀も経験したことがなかった。 どうしよう、就活すらスーツを着ずにここまできたので喪服がない。 パンプスもない。新社会人になって初めて迎える冬、12月末。ふざけたコートしか持ってない。まだボーナス貰ってない。 まず最初に身なりと身銭を気にするなんてどうしようもない。 そんなどうしようもない唯一の孫をもっ

          呼吸

          自慰をしようとしていたら今朝振った恋人から電話が来た。 おかずも決まって、おもちゃも準備万端だったのに。 しかしまだ彼への情が残っている。通話に出る。 開口一番、もう泣いている。謝ってくる。 沢山浮気をして沢山嘘をついた恋人だった。 そのくせ「好きだよ」と歯が浮く言葉を沢山かけてくれた恋人だった。 自分は押しに弱いし、頭も悪い。だから沢山傷つけられても、今日こそさよならするぞと決心しても、いざ彼を目の前にすると名残惜しくなってしまう。抱きついて匂いを嗅げば胸がいっぱ

          みじめだね

          恋人が裏垢をやっていた。 # 裏垢 # セフレ # 都内 いかにもなハッシュタグの羅列。 浮気を何度もされているので、あまり驚かない。 驚かないだけで腹は立つ。見つけた時は立てないくらいの衝撃。次いで心身ともに満足させられない自分のみじめさ。 結果はじめて恋人の前で泣き喚き、ことは収拾した。浮気は病気なので治ることは期待しないが、そこではない。 自分が裏垢女子だったときのことを思い出していた。 以前書いた記事よりもさらに前、根拠は無いのに阿呆みたいに大きい承認欲求を持

          切って縫って入れて出して

          「5万円になります。」 クレジットカードを持っていなかったから、下ろした一万円札を5枚出して支払いをする。手術室で横になって30分。痛みを堪えた体は汗ばんでいて、強く握りしめていた拳は爪の跡が残っている。休憩室に案内され鏡に映った自分を見れば、すこし腫れた瞼の上には線ができていた。 20歳になって3ヶ月、私は二重埋没手術をした。 生まれてからずっと一重。と言っても、目を見開くと少し線が出来て、完全なる一重でもない。身体は精神に宿るのか、精神は身体に宿るのか、自分に似て中

          切って縫って入れて出して

          裸になれば

          処女じゃなくなった2020年の6月。 経験人数が3桁の人間でも初めてはよく覚えているでしょう。まだ1年と少ししか経っていない私は尚更、鮮明に覚えている。 tinderを2017年からやっていた。大学入学を機に上京したのと同時に。目元と重たい前髪だけが映った自撮り。何も知らない人間とのティッシュより薄い会話で承認欲求を満たしてもらっていた。 ヤリモク、ヤリモク、会話が楽しいヤリモク、ヤリモク、暴言、ヤリモク。みんなセックスしたいよなー。 前髪を切ったら、髪を染めたら、出