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以前読んだ本の感想「はやぶさ、そうまでして君は」

(注釈)ここでいう「はやぶさ」は初代のことをさします。

あの「はやぶさ」の快挙のあと、報道される内容よりすこし詳しく知りたくて、この本を手にとりました。
 タイトルの「そうまでして君は」の部分は、最初ないほうがいいのでは、と思いましたが、読み進むうちに、その気持ちが伝わってきました。
 
 7年間、60億キロの航海をなしとげた偉業を、ほんの数十行の文章でまとめられるとは思えません。下記は、太陽系の起源を解明するというミッションを成し遂げるために必要な世界初への挑戦です。
・イオンエンジンによる惑星間航法
・遠くはなれた宇宙空間での自立誘導航法
・微小重力小惑星でのサンプル採取
・イオンエンジンを使用した地球スウィングバイ
・カプセルによる大気圏突入
 
「誰もやっていないことに挑むとき、できない理由をあげていけばキリがない」
 
 ミッション立ち上げは1995年のことだそうです。世界初の開発がいくつもあるためリスクの多さに指摘があったようですが、サンプル持ち帰りがかなわなかったときに、まったく成果がないのではなく、それまで実現した段階でもそれぞれの成果があるとして、認められました。減点法ではなく、加点法です。
 
 2003年5月打ち上げ。2004年5月に目標のイトカワをとらえます。そして、2005年9月に、イトカワから20キロのゲートポジションに到達しました。この時点までにもいろいろとトラブルにみまわれていましたが、この先、イトカワへのタッチダウンは、もっとむずかしいだろうと、素人にも想像できます。地球からはやぶさへの指令は、送られてから、17分かかります。その結果がかえってくるのに、また17分かかります。イトカワへの接近をするという微妙な操作が必要なときに、指示が34分もあとにきても間に合いません。このためはやぶさは自分で判断してうごく必要があるわけです。
 計画では、イトカワへの着地は1秒間で、その瞬間に弾丸を撃ち込んでサンプルを採取するはずでしたが、姿勢がみだれたため、イトカワに着地し、横たわりました。これも世界初です。
 この後、再チャレンジし、ご存じのとおり、タッチダウンが成功します。その後、弾丸は発射されなかったことがわかります。
 さらに、はやぶさ自身が回転してしまい、その後、通信が途絶してしまいます。祈るような気持ちで、スタッフが懸命な復旧をこころみます。46日後に、奇跡的に復旧します。
 そして2007年4月に、イトカワの軌道をはなれますが、さらにすべてのエンジンが寿命をむかえてしまいます。このときも、地上ではテストさえしていなかった方法で、この難局をきりぬけます。
 
 そして、2010年6月に、大気圏に突入し、はやぶさ自身は燃え尽きますが、サンプルのはいったカプセルは、オーストラリアのウーメラ砂漠にもどり、回収されました。
 はやぶさを擬人化してしまう気持ちがわかりますよね。
 日本の誇りのため、2番じゃだめなんです。これからも世界初、1番をめざしてがんばってほしいと思います。
<著者>宇宙航空研究機構(JAXA)教授
川口 淳一郎 氏

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