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最近読んだ本で思うこと「君が手にするはずだった黄金について」

初めて読む作家さん(小川哲)
なお、主人公は一人称で記述されていて、考えていることがそのまま文章になっている。6つの短編のうち2つについて思ったことです。

・プロローグ
 「あなたの人生を円グラフで表現してください。」という問いかけに新鮮さを感じたけれど、結局そこから先の展開はなかった。
 満員電車に乗るのが嫌いな消去法で小説家になろうとしているのが主人公。
 女友達の父親が話したこと「何があっても、電話口で怒鳴る人間と、猫舌の人間は信用してはいけない

 これで思い出したこと。

 昔、自分が現役で働いていたころ、まったく違う部署の人に、外部発表の原稿執筆を依頼したことがあった。
 のっけから、「こっちは忙しいんだ、そんなことしている時間はない」。語気が怒りモード。こちらは、平身低頭。「お忙しいところ、なんとか執筆をお願いできないでしょうか。」
その外部発表がいかに重要か、会社にとっても大変意味があること等を、熱心に話していた。10分くらい話をしていたとおもう。
そのとき思ったことは、(この人ほんとに忙しいのかな?)(公になる技術原稿を書くだけの自信がないのじゃないかな?)
最後まで怒ったままで、原稿依頼は受けてもらえなかった。
その1か月後、人づてで、その人が亡くなったと知った。
原因はわからなかったけれど、私の依頼ごときで、あんなに怒っていたら、そりゃ体がもたないでしょうね。

・君が手にするはずだった黄金について

主人公(作家になっている)の友達(片桐)は学生時代から人に認められようとしていた。実際には認められるような才能を発揮していたわけではない。数年後、会った片桐はお金持ちのような身なりをしていた。
会う前に別の友達から片桐がSNSで「ギリギリ先生」というブログをつかって投資をよびかけていることを知っていた。事業はうまくまわっていなく、出資者を裏切っている状態だった。
片桐は作家である主人公に助けを求めにきていたようだった。
見せかけだけの人生は、結局失敗する。「自分がしてほしいことを他人にしましょう」にしたがって、ひどくおせっかいで不器用な男だったと主人公は同情しているよう。

この話は極端ですが、SNSが興隆しているいま、投稿している人たちのなかに、そうした傾向をもった人が、もしかしたらいるかもしれない。自分の投稿だって、ウソはないけれど、自分でも気が付かない程度に盛ったりしてしまっているかも。(笑)

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