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ホテルの大浴場を「まちの銭湯」へ

「マリンポートホテル海士」

Entô」ができる前に建っていたホテルの名である。
このホテルは1994年につくられ、20数年を生きた。
リニューアル工事は2020年3月から始まったものの、コロナによる影響を真正面から受け、それでも何とか工事が進められて2021年7月に現在の姿になった。

マリンポートホテル海士はこんな感じでした。今と雰囲気全く違うよね。
Entôはこんな感じ。かっこいいんよ。

このリニューアルで大きく変わったのは何といってもあの木造の別館NEST。CLTというオーストリアで開発された新しい木材で構造を支えている。
大きな木の板を工場であらかじめ作り、それを現場でパズルのように組み立てるという画期的な方法で、最近日本のあちこちで使われるようになってきてきた。鉄筋コンクリートでしかできなかった構造デザインを木造でもできるようになって...あとは調べてください。笑

リニューアル工事で触れられていないところが本館にはいくつかあり、その一つがEntôの1階部分にある大浴場。僕は来るまで大浴場があることを知らなかった。

無機質なエントランスロビーを通って真っ白なエレベーターに乗り下に降りる。扉が開くと不思議な模様の床、障子、男湯女湯ののれん、酒の自販機...
「タイムスリップしたんかな」って思ってしまうぐらいのギャップのある空間
賛否両論あると思うけど、これはこれで面白いし僕は好き。他にもこういう違和感が好きな人は結構いると思う。

みんな知らないEntôの大浴場


さて、このnoteの本題はここから
実はこの大浴場、「マリンポート海士」の時代には銭湯として島民に使われていた。

言い方を変えれば、「お風呂をまちに開いていた」のである。

それだけ聞けば別に何ら不思議な話じゃない。
旅館の内湯を開いているところは日本各地にいくつか知っている。温泉街にある旅館の内湯であったり、簡単には行けないようなポツンと山奥にあるような旅館で日帰り温泉をやっている。

僕が感じた違和感は
マリンポート海士(現Entô)はまちのすぐそばにあるホテルで、それを銭湯として島民に日常的に使われていたということ。

そもそも、家の近くにあるホテルに日常的に行けるとか素敵すぎるなぁと感じる。というのにも理由があって、僕は実家が奈良で観光地の端くれに位置し、通学路では毎日鹿を見ていた。

ここは My 思い出の通学路

そんな環境に住んでいたから何となくの体感でわかるが、普通のホテルは地域とまるで縁がない。新しいホテルが次々建っていくが、住民目線で見るとホテルができても街の景色以外何も変わらない。僕は、極端に言えば新しいハコが次々建っていくだけやなぁと住みながら感じていた。

マリンポート海士はそういう意味で言えば、そこにホテルがある直接的な意味があった。銭湯として使われていたから。まちにとって直接的な意味があるというのは非常に重要なことだと思う。

しかし、マリンポートホテル海士がEntôとして生まれ変わったタイミングで、大浴場は完全に宿泊者限定のものとなってしまった。様々な理由があったのだが、一番の理由は何といっても新型コロナウイルスの感染防止。
ただ、そろそろコロナと共存していく必要があると思うし、島の住人からも銭湯に入りたいという声は度々聞いていた。


話は変わるが、Entôが大事にしている言葉が3つある。その1つに「Seamless」ということばがある。
境界を曖昧にし、旅人、島民、あらゆる人に開かれた場所を目指している。

ただ、2か月と少しの間、ここに身を置き感じたのは、島民の姿はほとんどEntôでは見られないということ。来るきっかけがない。

日常的にホテルに行ける環境を今のEntôでつくるために、足を伸ばしてお風呂に入ってもらうために、ホテルとまちの境界を曖昧にするために、大浴場を銭湯にするための企画を立ちあげた。
(実現するまでに何をしたか、またnoteで書きます)

Seamlessなハードはあるから、あとは使いこなしてもらうだけ。

銭湯を通じてSeamlessを実現するために、島民のEntôに対するイメージは「大浴場に入れる宿」ではなくて「宿が付いている大浴場」という認識でいいんじゃないかなと思う。
たまたま銭湯の横にでかい木の箱ができたぐらいの感覚でもいいと思うし、そのぐらいの感覚で来てもらうのが理想。もし実現すればそれこそ今まで見たことないような面白い風景ができるんじゃないかな。

例えば、大浴場で島民とゲストがたまたま話して意気投合し、Entôの前で焚き火をしながら夜風を浴びる。そんな偶然を引き起こせたらそれ以上の喜びはない。

自分の中の理想をつらつらと書いたが、自分の立場を考えて今やるべきことは、このトライアルを通じてEntôに銭湯ができることでどれだけ魅力的な絵が生まれるのか。その風景を実際に色んなスタッフに見てもらって、感覚的でもいいから「なんか良いなぁ」って感じてもらうことが自分の中での成功。

というわけで、

「Entô 銭湯 やります」



ps.
打ち合わせの時にある男性スタッフから「チラシにSEnto(銭湯)って書いたらよくない?」と言われましためちゃめちゃええやんって思ったのは自分だけで、マネージャー達にSlackで却下スタンプ押されてました。
いつかエントランスにあるEntôのロゴの横にSを置きたい。
もちろん素材はCLTで。

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