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『訪れたら証? 』

 この話は2016年1月にトラベラーズノートのウェブサイト「みんなのストーリー」に掲載された旅のストーリーです。現在も掲載されています。そのままここに掲載いたします。現在も「みんなのストーリー」に毎月一作旅の話を書いています。これは掲載第99作目です。

 2015年12月のある週末、TFA(トラベラーズファクトリー)で開催されている寄木細工のイベントへ行った。出掛けて行くのはもちろんイベントそのものが目的だが、ここ何年かはチームトラベラーズの方々の顔を見に行くのが主な目的となっている。

 イベントは盛会でチームの皆さんと談笑する暇は皆無だった。ヨーロッパでのノートバイキング(素敵なネーミングだ)のイベントツアーから帰国間もない皆さんは少々お疲れの表情を見せながらも、その寄木細工のイベントに来た方々に丁寧に対応していた。その後間もなく台北へ出張されたようで、月に二回、多くて三回は主にアジアとアメリカへ出張していたかつての自分の生活を思い出した。

 久し振りに訪れたTFAで発売されて間もなかったあのACE HOTELとコラボレーションしたボールペンを買った。周知の通りノートバイキングはロンドンのACE HOTELでも行われていた。真鍮のクリップは買わなかったが、この話を書く切っ掛けを与えてくれた。

 真鍮でアルファベットが象られたクリップを見てロンドンで宿泊したホテルのエレベーターを思い出した。アメリカでは1階は日本と同じ1階で、イギリスではその1階に当たるのは “G” と表示されているグラウンドフロアのことだと習ったのは中学校の英語の時間だったか高校の英語の時間だったかは定かではない。私と同じように“イギリスの1階は日本の2階”と記憶したトラベラーの方々も多いのではと思う。

 2012年にロンドンを訪れた際の宿泊はミレニアムだった。チェックインを終え、スーツケースを引きずってエレベーターの前に立ったときに階数の表示に気が付いて、“ああ、イギリスにいるのだな”と思った。

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スーツケースを手にエレベーターの前に立ち、階数表示を見上げるとこの角度になるでしょうか。

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“G”の表示にイギリスを感じ、ロビー階へ降りる際に ”G” のボタンを押す度にイギリスを再訪していることを実感しました。”G” のボタンが他の階数と色が異なるのは客室がないからなのでしょうか。

 ACE HOTELは、ポートランドのACE HOTELがフリーペーパーのTRAVELER’S TIMESに取り上げられた頃と前後して雑誌のホテル特集で見て以来、世界中にある気になっているホテルの一つになった。

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これらの雑誌でACE HOTELを知りました。特にHotelの特集は“次にあそこへ行ったら・・・”とか“初めて訪れる際には・・・”など空想が膨らむので必ず手に取ってしまいます。トラベラー各位もそうですよね?(笑)

 次回ロンドンを再訪する際には、果たして気になるACE HOTELを選ぶだろうか。決め手となるものの筆頭はホテルのロケーションだ。早速地図でACE HOTELのロケーションをチェックしてみた。

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地図はもちろんこれを使いました。スマホなんて存在しない頃からロンドンの地図といえばこれです。1987年の二度目に訪れたときに初めて購入しました。現在も普通に街中で売られているので超ロングセラーの地図の一つでしょう(これは2012年に買ったもの)。

 ACE HOTELは「3,000円のベーグル」に書いたお店のあるブリック・レーンといわれるエリアに位置しているようだ。もともと治安があまり良くなかったというエリアなので、ブラブラと夜に歩くのはちょっとどうだろうかという雰囲気が残っていた。まだまだ観光地化されていないロンドンがそこにはありそうな雰囲気なので、ロンドンで何をするかにもよるが、ロケーション的には一人旅にはぴったりのホテルだという印象だ。

 親と、もしくは夫婦での旅行だったら、私はミレニアムに再泊かイギリス発祥のまだ未泊のホテルを選ぶ。ミレニアムの近くにはイギリスらしいパブもあるし、「本を読んで・3」で書いた経済的に余裕があれば是非宿泊してみたい憧れのクラリッジスもある。ホテルの目の前はアメリカのルーズベルト大統領(フランクリンのほう)の銅像があるグロブナー・スクエアという公園だ。公園のすぐ隣はアメリカ大使館なので治安が良い。そういえば、1992年に三度目にロンドンを訪れた際に一人で歩いていると、アメリカ大使館はどこかと道を聞かれたことを思い出した。とにかく、せっかくイギリスに行くのだから・・・とイギリスのホテルをいくつか候補に挙げて計画を立てると思う。その前に何処かアメリカを旅して宿泊先がACE HOTELで満足すればACE HOTELも候補に加えるかもしれないがどうかな・・・というのが現在の正直なところだ。

 たとえ次のロンドンの再訪でACE HOTEL以外に滞在したとしても、ACE HOTELを観に行くことは間違いない。その際はバーで一杯飲み、コラボレーションしたボールペンをバーテンダーに見せながらそこに辿り着くまでの話をして和もうと思っている。きっとお酒が進み長っ尻になってしまうはずだ。

 途中トイレに立った際に、イギリスにあるアメリカのホテルのエレベーターの表示をどんなに酔っていても必ずチェックしようと思っている。

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このボールペンが“訪れた証”になるのはいつの日か・・・。

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