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「底にタッチするまでが私の時間」 (読了)

 新宿ベルク。店名は後から知るのだが、通い始める数年前まで長い間ずっと気になっているお店だった。書評家の木村衣有子さんの「もの食う本」にその興味を惹くお店の店長さんの本が紹介されていた。「あっ、あのお店か!」となり、そのお店の名がベルクだった。店長さんのその著書を読んでからベルクを訪れた。再訪を重ねて少し店内をキョロキョロできるようになったころに副店長さんの著書を読んだ。何を食べても美味しい理由が分かった。 

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 ベルクには「ベルク通信」という壁新聞兼フリーペーパーがある。紙面に使われている色は文字の黒のみ。ビラのようでもありプリントのようでもある。発行されてから15年分(1994年から2006年まで)の「ベルク通信」の記事の中から木村さんが選りすぐったものがこの「底にタッチするまでが私の時間」に収められている。                    

 選りすぐられた記事は全て僕がベルクに通い始める前の「ベルク通信」からのもの。自分が訪れる以前の昔のベルクを垣間見ることができて面白い。各記事には執筆者のお名前と年号と月が記されている。年号と月からベルクをまだ訪れてない・ベルクがまだ日常生活に入ってきていないその時々の自分が何をしていたかを思い出すのことでも楽しめた。あっという間に読了した。                             

 昨年フォトグラファーのハービー・山口さんの写真展を拝見した。写真展を観て間もなく、お書きになる文章も秀逸なハービーさんの当時の近著を拝読した。「一芸術に秀でている方は二つも三つも秀でる」と思った。「ベルク通信」に原稿を書いていらっしゃるベルクの方々も同じ。任された持ち場で力を発揮して秀逸なお店を運営しているだけではなく文章や絵も秀逸。

 昔からベルクに通っていらっしゃる方、最近ベルクを知ってベルカー(ベルク好き、ベルクの常連という意味。勝手にそう呼んでいます))になった方も楽しめる一冊。この本を片手にベルクで過ごす時間は間違いなく至福。しかし、このご時世長っ尻禁止なので要留意。昔のカレー復刻熱望。


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過日都内の書店で行われたイベントで木村さんにサインを入れていただきました。

追記:僕はサラリーマンですが、普段月に一作旅の話を書いています。約3年前にベルクの話を旅の話のひとつとして書きました。当時はまだJR新宿駅の東口・西口がまだ通り抜けできない頃でした。どうぞご笑覧ください。





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