初めて訪れた旅行先の町に、寂れた玩具屋があった。 店頭に並んでいたのは、いつの時代に発売したか全くわからない色褪せたパッケージの数々。都会から失われた景色へのノスタルジーを求めてついふらふらと店に入ってしまったが、それが完全な過ちだった。 「いらっしゃい。何もない店ですが、ゆっくり見てってくださいよ」 人のよさそうな店主のおっさんに声をかけられ、俺は「はい、ありがとうございます」と返して店内の商品に視線を向けたのだが、そこから僅か数秒後のことであった。 「どこからいら
商店街へ買い物へ出たら、白タンクトップと短パンの老人がほっつき歩いていた。少し気が早いが、これぞ夏の風物詩である。 この時期になると、街に一人か二人は必ずこの服装をしたジジイがいる。人によってはだるだるに伸びきった、乳首が見えてもおかしくないような際どい一枚を着ていることもある。短パンも明らかに短すぎで、トランクスと区別がつかない。 高齢者は体温調節機能が低下するため、体内の熱を放出できず暑さを感じやすいという。一見、かなりギリギリの服装のように思えるが、彼らにとってはこ
Twitterの名称がXへ変わってからもう1年が経とうとしているが、Web上のニュース記事は未だに「X(旧Twitter)」という表記で溢れかえっている。 名称変更の直後であればまだ理解できるが、いつまでそれを続けるつもりなんだ?たとえ感覚がそれを拒否していたとしても、TwitterがXに変わったというのは最早紛れもない事実で、一般的に認知されきっている筈だろうが。 何ならついにドメイン名までtwitter.comからx.comに変わっており、Twitterの面影はもうど
もう何年もSEとして働いている。客と打ち合わせをしたり、意味のない社内の定例に参加したり、資料を作ったり、既存案件の保守をしたり、コードを書いたり、人のコードをレビューしたり、毎日とにかくやることが多くて、時々脳が破裂しそうになる。マルチタスクを人並みにこなせないから8年間大学を出られなかったんだぞ、俺は。 プログラミングは嫌いではないし、終わりかけの人間を拾ってくれた恩もあるので、何だかんだ働き続けているが、やはり年々体力や精神力が落ちて疲れやすくなってきているのも事実で
普段は自宅で仕事をしているが、昨日は月に一度の出社日だったので、会社に行った。 折角外へ出たのだから、会社の近辺で夕飯を済ませてから帰ろうかとぼんやり考えながら働いていたが、そうしているうち時刻は瞬く間に23時を迎えてしまったので、諦めてひとまず帰りの電車に飛び乗った。 とにかく腹が減っていた。帰ったら何を食べるか考え続けているうちに、途中の駅でサラリーマンの3人組が乗車してきた。 見たところ、1人は20代後半か30代前半の中堅平社員で、残りの2人は4,50代の、それなり