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もっとディープに!日本最強の城!

NHK文化センター青山教室で開催された講座を受けてきました。講師は奈良大学の千田嘉博先生と落語家の春風亭昇太さん。奈良大学の通信教育部に在学していた時、スクーリングで千田先生の講義を受けさせていただき、卒業論文を執筆した時にはご指導いただきました。

まずは平成28年熊本地震で被災して、復旧作業が進められている熊本城の話題から。6月28日から新型コロナウィルス感染拡大の影響で熊本城天守閣の内部公開をする特別公開第3弾が始まりましたが、見どころの一つとして紹介されたのが「二様の石垣」。隅部の勾配や積み方が著しく異なっている姿が同時に観れることからこのように呼ばれています。見学通路から見る石垣は勾配や積み方が異なる様をはっきりと見ることができるのでおすすめとのことでした。

二様の石垣

続いてのテーマは中世の「土の城」。静岡県の山中城、神奈川県の河村新城、茨城県の小幡城、石川県の切山城、長崎県の直谷城を取り上げて、土塁と堀で築かれた石垣のないお城の魅力について話がありました。ドローンで撮影した映像もあり、臨場感たっぷり。中世の城郭の堅固さを認識することができました。

石垣のない「土の城」から石垣のある城への過渡期のお城として紹介されたのが、愛知県にある小牧山城。織田信長ゆかりのお城です。城郭を取り囲む段石垣や帯曲輪の遺構、建物跡で発掘された玉石敷きなど、中世の城にはなかった新しい空間と機能を城に備えようとしていたことが窺えるということでした。

続いて京都府にある細川藤孝の居城だった勝竜寺城について話がありました。勝竜寺城には安土城に先駆けて天主があり、古今伝授の儀式や連歌会などが行われていたと思われるとのこと。天主は御殿のようなものであり、屋根は格調高い御殿として、檜皮葺の屋根だったのではと思われるとのことでした。

続いて、大坂城について。豊臣時代の石垣である詰丸石垣が発見され、現在、公開に向けて博物館が建設中とのこと。豊臣時代の石垣に被せるように石垣を新たに築いたところに徳川氏の豊臣氏への強烈な対抗心を窺えるということでした。

更に話は国宝に指定されている「現存十二天守」について。松江城、犬山城、松本城、姫路城について。犬山城は樹木を伐採することで、従来の大手道から天守が見えるようになったとのこと。姫路城については常に修復が行われていて、維持が大変であること、そしてそこで培われた技術が後世に伝承されていく重要性について話がありました。

最後に千田先生の故郷、名古屋城について。名古屋城の空堀から石垣の基礎が発見されて、当初、大天守の側に「西小天守」が建てようとしていたことが発掘成果から証明されたとのこと。江戸時代を通じて京都大工頭を世襲した中井家の当初設計図にもこの小天守が描かれていたとのことです。徳川時代の大阪城や江戸城は名古屋城をベースに築かれたといえるとのことでした。最後に名古屋城の金鯱について。初めて城にしゃちほこを乗せたのは安土城だと言われていること、「信長公記」には壁には龍や虎に混じって鯱が描かれていたと記されているだけでなく、城跡からは鯱瓦の破片も見つかっているとのことです。中国の宮殿の屋根の上には竜が乗っていて、それを真似て特別な力を持つシンボルとして鯱を乗せたと考えられるとのことでした。戦乱の世を平定することに向けた信長の思いも窺えるとのことでした。

講座の後は千田先生にご挨拶。奈良大学卒業論文作成を通じて、千田先生のアドバイスを思い起こすかのような講義でした。また先生のわかりやすい明快で丁寧な説明は大学でのスクーリングも思い出すことができました。奈良大学の通信教育部で学んだ動機は日本各地に残る文化資源を活かした地域活性化に貢献したい、そのために個々の文化遺産の素晴らしさを見極め、理解できるようになりたいという思いから。自らの「原点」も思い起こすことができる平日の夜のひと時でした。

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