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【短歌五十首】離岸流

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友人の友人を連れてくるような友人は住んでいない下町

何千回ものタックルをかわすあさ最寄り駅にはいないレフェリー

「ゲーセンは疲れちゃうから今日だけね。かめのぬいぐるみはかわいいね。」

五大湖を綺麗に描けたときにだけ画家もいいねといじわるなひと

なぜ亀を拉致するのだろう宇宙人百円出して手下になった

東京の人も行くんだブックオフ東京をどこと思ってたんだ

ミラノ風ドリア風にはできないねぽそぽそしちゃう日本のおコメ

池の水全部抜きますざりがには悪者でシャワー壊れたままで

エクスクラメーション・マーク半角か全角か何字びっくりするか

警棒が点滅すれば守られるぼくの暮らしやおじさんの日々

「ブルータス、お前もか」って苦笑して買う二冊目のカフェ特集号

吸血鬼はやらないから献血車襲わずパックひじきをよそう

「知恵のある蚊が多くない?」「耳たぶの裏側刺されていますよ」「死刑」

うそつきめ機関紙みちに落ちていてふやけかかった選挙公約

人形の亀もくる病になるとかならないとか で ベランダに干す

ペーパーと言い出せなくて五時間のパックで走る産業道路

ふるえてら梅雨は勝手にくり返すここにいますと言いたくもなく

手さぐりが続かないから置いていく言い訳じみた「いいね!」一件

トンネルは鈍色に深く傾いてかがやきながら北上します

「かめ吉」と声かけるたび人形はずっと前から居たような顔

オノマトペ飛び跳ねるたび ぱぺ・ぱ・ぱぽ 峰にこだまし弾む屋上

〝Needless to say,they’re…….〟そう、今じゃ「ニート」ってあまり聞かなくなった

みがまえろ美少女戦士とらわれた朝のオレンジジュースは苦い

トランクス西瓜柄とかふざけてる裏地洗えばつぶつぶ起毛

途中下車繰り返すたび足あとが増え伝説のポケモンになる

ひとだまはさびしがりやさんなんですね無言で待ってマッチ摺る墓地

ヒルドイド軟膏は効く戦場が皮下に広がるのが分かる夜

あ あ あ ……マイクテストで一年に排出された「あ」の総需要

バスツアー紫ばばあ同乗し夜な夜な便器壊して回る

男爵はしゅくっとほぐれ潰されてあなたのなかに溶けていきます

カテーテルつながれた駅 来世紀地下鉄は生き延びるだろうか

これじゃない「にこ」って打って出る絵文字返事を読んでしばらく真顔

NPO法人の犬伏せたまま手垢まみれの紙幣を嗅いだ

きみはすぐこころの雨戸下ろすのね季節外れの台風予報

翔びかけたかなぶんの翅なまはんかさわれないなら去ればいいのに

さもしさはつきまとうからぶつからぬように公園突っ切り帰る

怪人になってしまった 怪人のままで支払う電気料金

コピー機がすねているから修正の指示で陰気になみだがにじむ

都営バスひとり降りればアナウンス広告の断末魔がひびく

かめ吉を渡そうコインロッカーの前でゆらゆらしているひとに

(撃つくしいくにだ)「ねぼすけ、うっかりや、よわむし、わすれんぼう、手をあげろ」

コメットが駆け抜けるには狭すぎる白点病まみれの金魚鉢

かめ吉はうずもれていた人形町駅改札前その他のゴミ入れ

ひらがなでおとこを生きなひもときな古今のしらべお気にめすまま

沖で待つおきなえびすの貝殻を探して離れ小島のふたり

百年後偉人になんかならないでいいからここで演じてみせて

力なくきみやわたしを待っている閉館前のいきいきプラザ

かめ吉の代わりにSiriにこぼす愚痴 解決策は欲しくないけど

「杉並のジャック・スパロウ」、ハロー もう見つけましたか 財宝の地図

電器屋を登録すればにぎやかな友人としてあふれる通知


※別名義で第四回笹井宏之賞に応募した作品を再掲載しています。