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連載小説:生まれる前の記憶2

僕は、新しく生まれ変わった。街並みや風景が特別なわけじゃない。住宅街の郵便ポストや本屋の退屈な顔した主人の顔といった見慣れた風景が目に入り込んでくる。5月の風は柔らかで、隣のサッカー場の芝生の匂いを運んでいる。僕は僕であることを自覚している。だから今回もやっぱり「僕」なんだ。 何故? 僕は繰り返し、繰り返し 生まれてきてしまうのだろう (続く)

    • 連載小説:生まれる前の記憶

      初めまして、ここで出会うすべての人々にこんにちは。僕は生まれてほやほやだけれど、昔のこともなんとなく覚えている。蛙だった時は、空を見つめることはなかった。曇りだらけで、雨粒がぶつかってきて目が開けられなかったんだ。だからうつむくことが、いつの間にか癖になっていたんだ。ある日は商店の一角に置かれていたドイツの木彫り人形だった。糸の通りに動く機能と木の材質が好きだと言われて買われていったけど、もし糸が絡まったり、木が虫に喰われたらどうしようって、ちっとも嬉しくなかった。またある時

    連載小説:生まれる前の記憶2