【11日目】僕の日記〜洗顔大事編〜
最近、顔を洗うようになった。
世の中には便利なことに、拭くだけでOK的な商品が多数存在する。
顔を洗うにもあるそれは大変便利な品物で、疲れて帰ってきてすぐに眠りたいときにうってつけだ。
わざわざ寒い廊下を歩いて冷たい洗面台に向かって蛇口をひねる、なんて億劫な動作をせずにベッドの上で済ませることができるのだ。
元よりズボラな僕はそれに甘んじた。
しかし状況は一変する。
便利に衰えは存在しないが、
人には老いというものが存在するのだ。
拭くということは擦るということ。肌とシートの間には摩擦が生まれる。
その僅かな摩擦に、僕の肌は負け始めていた。
何やら痒みが生まれる。
何やら腫れぼったい箇所がある。
果ては、拭いた箇所が沁みるような違和感を覚える。
これはいかん。
肌の調子が悪いと身支度するにも気分が乗らない。
だんだん手を抜きはじめ、鏡に映る自分は紙ペラのような表情で自信も無く下を向いて歩くようになる。
これはいかん。
僕は面倒をおして洗面台の蛇口をひねる。
洗った後はもちろん保湿だ。
するとどうだろう。
顔の赤みはひき、痒みも治った。
なんとなく顔の筋肉もほぐれたように思う。
昔から肌は強い方で、多少雑に扱ってもピンピンしている方だった。
あれは若さがなせる技なのだ。
僕はもう若くない。
もう大人にならなくてはいけないのだ。
僕は勇気を出してアルバイトの面接会場へと向かった。
特に利用するあてがありません。ごめんなさい。