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【16日目】僕の日記〜はじめての献血編〜

ここ最近良くないことが続いてる。
毎年5月は僕にとって厄月なのかもしれない。
去年全てを投げ出して辞めてしまいたいと思ったのも、ちょうど5月だった気がする。

去年と違うのは、今回僕の心を燻っているのが他人から傷付けられた引っかき傷だということ。

これは案外やっかいだ。
自分に非があるミスだったり理不尽な目にあったとかなら不満を文字にするなりなんなりして気持ちを落ち着けられるけど、今回に至っては間接的に傷付けられたもの。僕を直接攻撃しようとしたものではない。……ないよな?

彼と僕とでは人としての相性が悪い、価値観が合わない的な問題だがら誰も悪いと言えないのだ。

僕は困った。
感情が引っ込み思案な僕でも吐き出すものがないと何度も繰り返し考えて落ち込んで考えて落ち込んで先へ進めない。
正直、過ぎたことだし思い出したくもない。
でもそれをポイするあてもない。

ここは物理に頼ってみよう。

僕ははじめての献血をすることにした。
小学生の時に学校でやられた血液検査のときから採血とか点滴とか、血管に針をぷっすり系に大変感心がある僕は献血にとても興味があった。
血を引っこ抜いてもらえば、気持ち的に切り替わるんじゃないか。なんて根拠のない論法を唱えつつ献血センターの門戸を叩いた。


平日のお昼。
センターの中は案外サラリーマン風の男性の姿もちらほら。待ち時間にノートパソコンを広げてる人までいた。
あとは職業不明の女性や自営業してそうなおじいさん。
パッと見ふつうの人たちだけどよくよく考えると不思議な空間だった。カオスの下の下くらい変。

説明を聞いていると、僕はO型だから需要があるらしい。
必要とあらばどんどん吸ってってほしい。その後僕が無事に家にたどり着くかどうかは置いといて。

でも現実は厳しかった。
最大血液を持ってってくれる「全血献血」をしてもらう気まんまんだったのだが、体重が足りなくて「成分献血」という“一度吸った血から白血球だけ分離させて赤血球は身体に戻す”という献血になった。半分は戻ってきてしまうのだ。
まぁそれはそれで仕組みがわからないから面白そうだと思った。

元々体力に自信がある方ではないから、検査や問診のたびにアウトになって帰されるんじゃないかビクビクしていたけど全部クリア。
献血に成功した。

赤血球と白血球を分離させる機会がゴウンゴウン回る音は面白かったし、なにより赤血球を戻されるなんてことは初体験だったから、戻されると身体が冷えてくなんて感覚も面白かった。
しかし検査献血のときも本番のときも、針を刺される瞬間を凝視していたら「見て大丈夫なんですか?」と聞かれた。
むしろ「大丈夫じゃない人は来るんですか?」って感じだったけど、凝視する人は少ないらしい。
新たな発見である。

そして噂にあるように、センターの中では飲み物は飲み放題、お菓子も食べることが出来た。
ノミホだぜひゃっほー!っていうより実際は、飲まないとやべーからしっかり水分取れよって感じだったので粛々とぬるめのコーンポタージュをすするのだった。


しっかり休息を取ってセンターを出た。
こんなにのんびりゆっくりして、全て無料なのか…なんて考えながら帰路につく。
そして僕の脳裏にとあるビジョンが浮かぶ。


「あ……あのとき彼は、喜ぶどころか拒絶反応を示したなぁ」


忘れるなんて無理でした。
おわり。

特に利用するあてがありません。ごめんなさい。