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原点には強い答えがある

初めてイスをつくったのは、一体誰なのでしょうね。おそらく最初のイスは、人によってつくられたのではなく、大きな岩や木片に座った人が持ち帰ったところから始まったのではないのでしょうか。その日から現在まで、良いイスをつくるために無数のデザインがつくられてきました。背もたれがあるもの、アームレストがあるもの、スタッキングできるもの、ラウンジチェア、ソファ…そうやってイスは、まるで生物の進化図のように多くの種類に枝分かれをしてきました。

イスだけでなく、服も、家も、あらゆるものは歴史の中で継承され、同じようにデザインの進化図を描いています。あなたが今日新しい発想をしたとすれば、それは、この進化図に新しい分岐をつくったということ。自戒を込めていえば、この自覚こそ歴史に残る良いデザインをつくる意識です。どんな馬鹿げたアイデアでも進化図に付け足すことはできますが、それが誰かに強く記憶され、新種として残らなければ、ただ消え去るのみです。もし、あなたが歴史に残るほどに強度のあるアイデアを生み出したいのなら、進化図の枝葉ではなく根っこになるべく近い分岐をつくることを心がけてください。

では、どうすれば原点に近い答えを見つけることができるのでしょうか。それ
は、「それはどうして生まれたのか」「一体何のためにあるのか」と、常に「そもそも」の問いに返りながら考えるということ。いつの時代でも、進化図の原点に深く潜ると、新たな歴史を刻むような本質的なアイデアが生まれる余地は、まだまだ眠っているものです。今の常識から改めて原点を見つめ直すだけで、当時は技術的に実現できなかった素晴らしいアイデアの種を再発見することもあります。

全てのアイデアは出し尽くされている、なんて格好の悪い言い訳はいわず、今日も明日も新鮮な気持ちで原点を見つめ直しましょう。定義の根本を覆すような革新的なアイデアは、誰にも気づかれることなく、今日もそこにひっそりと眠っていて、あなたに発見されるのを待っています。

Photo : BEAM(KINOWA)(2013)
国産杉の間伐材を使用した照明器具。
規格材の角材をそのまま活かし、背割りを広げて木材そのままの形をデザインとした。製作時にほとんど廃棄物が出ず、製材屋でも加工ができる単純な形とし、さらに間伐材を使用する条件のもとに図面をオープンソースにすることで、様々な林業事業者と協業できる仕組みをつくった。
Client : 株式会社文祥堂

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