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美しい理由を考える

僕はいつも美しいものを意識的に探すようにしています。とりわけ自然の中には、たくさんの美しいものがあります。雲の流れ、打ち寄せる波、色とりどりの花──。NOSIGNERの事務所は、デザインの本よりも科学の図鑑が多いのではないかと思うほど、多くの自然科学の本に囲まれていますが、日々発見した美しいものが僕たちに与えている影響は絶大です。

美とは一体何でしょうか。例えば花は美しいですね。花が美しいのは、もちろん人間のためではないはずです。なぜなら花は、蜂に花粉を運んでもらうためにあの形になっているのですから。

ここで疑問が生まれます。じゃあ蜂は美を理解しているのでしょうか。そう、美の共感を持つのは人間だけではありません。虫も美を理解しているはずなのです。生きとし生ける、あらゆる生物が、美しさについて本能的な共感を持っている。これはとても興味深いことです。実の中にたっぷりと水を蓄えた茄子は、水滴のように瑞々しく美しいですよね。多くの葉で太陽の光を受けるべく枝葉を広げた木々を見れば、その機能的な構造から美しさを感じます。このように美しさには、論理的整合性との深い関係があります。その形を通して安全や種の保存の本能を喚起されたり、危険を察知したり。美は生物にとっての安全装置として機能しているのです。

美しさは、感覚と論理のバランスの中にあります。どちらも不足したり、どちらかに偏ったりすると、形は美しくなりません。表現がブレないためにも、「感覚的美しさの論理的理由」を、引き出しとして多く持っておくことが大切です。

美の範囲は状況によって揺れ動きます。美が目的ではないこともあるでしょう。それでも、ものに本質的な美が備わっていることによって、多くの人の無意識の中でポジティブに理解されるものにできるのです。だから美しいものを探し続け、それが美しい理由を考え続けてください。美を知ろうとすることが、デザインのゴールを想像することに繋がります。

Photo : 22141231(2011)
完全な日食をモチーフとした鏡。
電子制御されたLEDを、特殊な方法で乱反射させ、自然現象のような揺らめきを生んでいる。Taro Horiuchiとのコラボレーション。
Client : Taro Horiuchi

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