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小平で一番高い場所にある食堂で食べた焼きそばは、誰かに背中で語りたくなる焼きそば。〈小平市役所食堂_小平市小川町〉

小平市役所の食堂の焼きそばを食べて、高校生の頃に通ったスタンドそばの焼きそばを思い出した話。

東から西へ移動の途中、我慢が出来なくて小平市役所でトイレを借りた日。ホッと一息ついた後に、そうだ上の階に食堂があるんだと様子を見に行って見る。

丁度お昼時。市の職員さんと関係者と一般の方々が入りまじり賑わう食堂。

心を惹かれたのは列をなす焼きそば待ち。これがここで食べるべきものと並ぶ皆が背中で語っているような日々使う市職員さんたちが頼んでいる焼きそば。

なんかそれからずっと頭に残る小平市役所の焼きそば。

ある夏休みの平日。用もないのに焼きそば食べたいと市役所にお昼を食べに行く。エレベーターで6階にあがると扉が開いた目の前に田無タワー。
いい見晴らしだね。

通路のショーケースに並ぶサンプルはけっこうな種類のごはんがある。
現物が陳列される日替わり定食も魅力。でも食べたいのは焼きそばと券売機で焼きそば。

フロントに立つ姐さんに食券を渡そうとすると、奥の調理場から「焼きそばお終いね」なんて淡白な声が耳に入る。

あれ、え、うそ、と食券を握りしめてはらはらしていると、「もう一食、大丈夫そう」とはっきりと聞こえた。

「大丈夫ですか」と恐る恐る姐さんに尋ねると「大丈夫ですよ」。良かった、食べられる。

少し遠巻きに厨房のおじさんが軽やかに中華鍋を振りながら具を炒め、中華麺をいれ、ソースを振りかけて、ガコンガコンと炒める姿を応援する。

その間もナイスなコンビネーションで姐さんズがいろいろなオーダーをさばいてる。日替わりのA、ざるそば、カレー、タンメンとか。

でも、見つめるのはおじさんの背中。そろそろかな、なんて少し身構えると、姐さんがお盆にみそ汁を置いて、おじさんから受け取る焼きそばをとんと置いた。ずっと見守った俺の焼きそば。

「焼きそばのかたー!」と声を掛けられて、「はーい!」と返事をして受け取るお盆。みそ汁をこぼさないようにそろそろと歩いて窓際の席に。

銀のアルマイトの皿に焼きそばと紅生姜。

西武拝島線の小川駅に通った高校生の頃、その西口のスタンドそばの「戸隠そば」で散々食べた銀のアルマイトの皿の焼きそばを不意に思い出した。

ああ懐かしいの気持ちを抱擁する、緩やかに湯気が揺れる焼きそば。

窓の外に緑の木々と町並みと青い空と白い雲。
この見晴らしは良いね。
なんてみそ汁を啜るとほっとするほど普通。

その少し濡れた箸で芳ばしいソースの匂いが鼻をくすぐる焼きそばを頬張る。

しっかりと炒められたソースが濃厚にからむ太めの中華麺にシャキシャキのキャベツともやし。おいしい。たしかにこれは背中で語りたくなる。

そこそこ交じる豚肉が嬉しくて、わずかに交じる細切りのきくらげのこりこりをたまに感じるしあわせ。

それぞれがただ食べるに集中する静かな食堂で紅生姜の爽やかな辛みと少し汗ばみ食べる焼きそばはどこか懐かしいを感じて満足する。

口の周りのべたつくソースを拭きながら、ここ小平で一番高い場所にある食堂なんだねなんてあらためて思う。

少しランチタイムをずらしたのんびりとした食堂。高齢のお母さんと息子さんや、静かに本を読む女子に、お昼がずれた職員さんが、思い思いに過ごす場所。

そんな食堂。

誰かにお勧めしたくなりました。ぜひ訪れて見て下さい。

(は)

【小平市役所食堂】
  東京都小平市小川町2丁目1333  


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