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本の発売から2か月経って…

2021年11月12日に『失語症からの言葉ノート』を発売しました。トップ画像は同書のイラストにFacebookページ(失語症カフェ「コトコ」)用に、イラストレーターの田中未樹さんに着色してもらったものです。今日は発売から2か月の営業報告です。

マガジンハウス時代も本をつくるたびに「プロモーション」をしました。プロモーションは編集者個人個人まるで方法が違います。私自身も本によって毎回毎回違います(ここだけの話、自分でつくった本を全くプロモーションしない編集者も一定数います。「プロモーションは販売部の仕事でしょ」「宣伝部が予算とってくれないから」と言いながら、本をつくった張本人が売ろうとしないのは、どうかと思うのですが)。「こんな本をつくりましたよ」と告知して書店さんや読者に本の存在を知ってもらうのがプロモーションです。

『失語症からの言葉ノート』は、もちろん全国の書店さんで扱っていただける、ほとんどの書店さんで取り寄せ可能な「ISBNをとった正式な本」。でも、普通の本のように書店さんにファックス営業をして注文をとり、その部数を配本するという流れには乗りにくい本です。なぜなら、読者が「失語症のかた」に限られているから。書店さんに告知するにも、医学書や介護書のような専門書でもない、失語症を説明した読み物でもない。書籍といいながら書き込み式のドリルですから、もしかすると文房具屋さんのノート売り場や、杖などリハビリのグッズを扱う店に置いてもらうといいのかもしれません。どうやって販路を見出すか悩みました。

この本は父が失語症になったことがきっかけでつくったのですが、父が入院していた病院の1階にあるコンビニに飛び込みで「置いてもらえませんか」と聞きに行きましたがNGでした。病院にはコンビニや図書室が入っていることも多く、ネットで調べられるところには手紙を書いて献本しました。ここぞと思うリハビリ施設にも献本しました。ところが、日本全国、病院や施設は無数(おおげさ?)にあるのですね。献本と送料が思いの外かかり、途中であきらめました。「プロモーション」も限界、途方に暮れます。

そうしたら、ですね。

「『失語症からの言葉ノート』をつくりました。販路がなくて困っています」と投稿したFacebookの友達がいろいろ動いてくれたのです。投稿を拡散してくれた友達。知り合いに情報を転送してくれた友達。介護に関わる友達とZoomで会わせてくれた友達。失語症ではないのに買ってくれた友達(「読むとこないじゃん」と笑っていました)。看護師の奥さんに渡してくれた友達。本を監修くださった日本失語症協議会の園田さんも問い合わせを丁寧に繋いでくれました。NPO法人Reジョブ大阪さんはメルマガなどで宣伝してくれました。この場を借りて、みなさんにお礼を言います。ありがとうございました!

はじめて岩が動いた!?

中でもLさんという友達が、あちこちに宣伝してくれました。宣伝部長として給料を払わなくてはいけないぐらいです。自分の知り合いの少しでも可能性のある人に次々にコンタクトをとってくれて、しかも手作りの資料まで郵送してくれて。LさんとLさんの家族に私はいったい何を恩返しできるだろうかと思います。だって、そのLさんのおかげで、なんと、なんと、ついに東京新聞に取材してもらったのです!

東京新聞で紹介されたら、すごいことが起こりました。それまで、ホームページから本を購入いただいたのが発売後1か月で「5冊」でしたが、東京新聞に出てから3日で「10冊」1週間で「21冊」も売れたのです。東京新聞の影響力はびっくりでした(記者のNさん、ありがとうございます)。

岩の色が変わった!?

前後して、『月間ケアマネジメント』の書評にも取り上げられました。これは、プロモーションしたわけでもなんでもなく、純粋に取り上げてくださったのです。その内容が本当にうれしくて。いい話なのでぜひ読んでみてください。

『月間ケアマネジメント12月号』より

失語症のかたに向けてつくった本ですが、認知症のかたにも使っていただけるんだ!そして家族を笑顔にできるんだ!と涙が出ました。

岩が石になり転がり出した!?

さらに同じ頃、ホームページから購入くださったかたが、高齢の両親と使っているとメールをくださいました。失語症でもなく、認知症でもなく、会話が少なくなった夫婦同士、本を見ながら、昔話に花を咲かせ、食べ物談義で盛り上がり、しかも行動が広がったとありました。

なんと、うれしいことでしょう!

いまのところ売上としては100部単位かもしれません(まだ書店さん経由の数字はわかりません)。残念なことに、ホームページからの売上も「21冊」でピタリと止まったまま、静かな年末年始です。

それでも、この本をつくって良かったと、つくづく思っています。私の手を離れ、こんなふうに使ってもらえるんだ!と、『失語症からの言葉ノート』の可能性がどんどん広がっていく気がします。

このあとも定期的に営業報告をしていこうと思います。

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