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『東京都同情塔』を読んだ、ただの感想文
スマホを開けば質問して答えが返ってくる、対話もできるという、まるで人間かのようなやりとりができる生成AI。まるでそこには無味乾燥な暖かいわけでもなく、冷たいわけでもなく、温度も感じないやりとり。人間と生成AIが会話できてしまうという時代に抗う作品、九段理江『東京都同情塔』だ。
生成AI時代、2030年の東京を舞台に、あらたに建設された刑務所「東京都同情塔」、それを設計した女性建築家の話だ。
人を欺き、人を不幸にさせてしまう鋭利な刃物な、言葉。それがテーマだ。作中の舞台となっている日本は「AI-built」という文章生成AIが登場する。
でも私には未来が見えているんだよ……日本人が日本語を捨てて、日本人じゃなくなる未来がね。
これがすべてだと思う。なぜ女性建築家にはこう思ったんだろうか。そこに作者がこの人物(キャラクター)に託した思いが感じ取れる。
実際にChatGPTを使用して執筆したと言及されていたが、実際に使用したとされているのは、作品中に登場する「AI-built」の文章のことだと思われる。(全体のほとんどは作家が書いている文章だということは読めばわかった)
同じ言語を使っているはずの人間は、ときにわかりあえなくなることもあれば、通じあえなくなることがある。その言葉の葛藤を、作中の女性建築家はどのように向き合うのか。言いたいことはあるのに、言葉にできない。そんなもどかしさがこの作品にぎっしり詰まっていた。
芥川賞受賞作品、久々に読んだが、これまで通り、アバンギャルドで、それだけでなく純文学にある、読者が読んでなにかを考えることができる作品であった。
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