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日本海側の、今と未来の豪雪現象

日本海側で、歴史的な豪雪が続いている。まるで7月の九州豪雨を見ているようだ。大陸から強い寒気が南下し、日本海で水蒸気をたくさん含んだことで、日本に大雪をもたらしている。特に今回の豪雪は、ある一部の地域に短時間で大量の雪を降らせており、多くの被害が発生している。天の場合は積算雨量が洪水の発生を判断する指標の一つになっているが、雪の場合は積雪深という指標が使われる。新潟大学の災害・復興科学研究所が、積雪深の日本の分布図を公表しているので参考にしてほしい。

この豪雪のメカニズムは、JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)という現象が深く関連している。日本海上空で、シベリア寒気団から南下してきた乾燥風が収束することを指しており、収束した乾燥風が水蒸気を日本海から得ながら上昇し、日本に大雪をもたらすというメカニズムだ。様々な解説が気象機関やニュースサイトで発表されているが、毎日放送のYouTubeチャンネルで詳しく解説されているので、参考にしてほしい。

数日間降り続いた大雪も、もうすぐ峠を超えそうだが、雪おろしなどの作業に伴う事故も可能性があるので、今回大雪に見舞われた地域の皆様はくれぐれも注意していただきたい。そして、まだ冬は暫く続くので、今後もこのような現象が発生するかどうか、引き続き注意が必要だ。


このnoteの全体テーマとして気候変動を掲げているが、このような現象が気候変動によりどのような影響を受けるのか考察をしたい。今年は太平洋地域にラニーニャ現象が発生しており、この時に日本は寒くなりやすい傾向にある。

ラニーニャ現象が日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム

気象庁HPより(ラニーニャ現象が日本の天候へ影響を及ぼすメカニズム)

気象庁の予報によると、ラニーニャ現象は春まで持続する見込みとなっており、今年の冬は昨年と違って冬らしい寒さが続くことと考えられる。

気候変動の影響については、気象庁をはじめ多くの研究機関が研究を続けているが、雪や雨についてはまだ困難の伴う課題となっている。気候の将来の予測は、気候モデルによる数値シミュレーションを行うのだが、雲や降水についてはまだわかっていないことも多く、モデルの結果には不確実性が伴う。まだ自分も勉強中の分野であるので、詳しいメカニズムには触れずに、気象庁の発表した資料からかいつまんで紹介することにしたい。

気候変動は地球温暖化により発生する現象であるので、気温が上がると単純に考えれば、雪が雨に変わるので、積雪は減少することが予想される。実際に、日本におけるここ50年ほどの積雪のトレンドは減少している。

日本の年最深積雪の年変化

日本の年最深積雪の基準値に対する比の経年変化(1962~2019 年)
気象庁「日本の気候変動2020」第6章 図6.1.2より

しかし一方で、今回の豪雪のように、短時間に大量に降る「ドカ雪」現象は、日本海側の山岳地方で増えるという予測結果も出ている。

川瀬_10年に一度程度の降雪量の将来変化

10 年に一度程度の強い日降雪量の将来変化
川瀬, 2019: 地球温暖化で変わる日本の雪 図12より

この原因は、地球温暖化により日本海の海面水温が上昇するためであるとされている。先にも述べたように、日本海側の雪は、大陸からの乾燥風が日本海側で得た水蒸気に起因するが、水温が上がると海からの水蒸気供給も増加するため、今回のように大陸から寒気が南下してきた場合、より多くの水蒸気により、日本海の山岳地域により多くの雪がもたらされるということが予想される。JPCZメカニズムがより強力になる可能性もあるかもしれない。

大雪のメカニズムや温暖化との関係、気候シミュレーションの詳しい解説などは、先程も引用した川瀬さんの著書があるので、ぜひそちらを参照してほしい。


とはいえ、気候変動はまだまだ研究途上の分野であり、わからないことも多いので、今後さらなる研究が必要であることは間違いない。困難なポイントとして、気候変動予測の難しさ、降水計算の難しさ、計算の膨大さがある。これまで多くの進歩が気候研究で成されてきたが、国の研究資金だけでは研究資源や人材が足りないと感じている。もはや企業にとっても気候変動は大きな経営課題であり、研究に積極的に関わって欲しいと考えている。

気候変動を抑えつつ、今回のような被害も予防するために何ができるのか、よく考えなくてはいけない。


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