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キッズドクターとして遠隔医療学会で発表を行いました

こんにちは。キッズドクターを運営する株式会社ノーススターで代表を務める田北です。2023年11月11日に新潟で開催された第27回遠隔医療学会で、キッズドクターとして「⼩児科オンライン診療の有⽤性」というテーマで演題発表を行い、3団体しか受賞できない優秀論文賞を受賞しました。

こちらのnoteでは、学会発表にいたった背景や発表の内容をご紹介します。

抄録より抜粋

なぜキッズドクターとして学会発表をしたのか

キッズドクターは地域のクリニックと連携し、2022年7月から日本全国を対象にオンライン診療を提供しています。平日早朝・夜間と休日の診察を中心としており、かかりつけ医が診察できない時間の二次医療機関の負担の軽減や、地域医療への貢献を目指しています。

日々キッズドクターの利用者と向き合う中で、オンライン診療が医療の世界に与える影響や有用性を改めて認識したと同時に、いろいろな課題も見えてきました。この知見を今後の医療の発展のために共有・発信したいと考え、今回、学会発表を行うことに決めました

日本では、コロナ禍においてオンライン診療の普及が一定進みましたが、まだまだ歴史は浅く、有用性を検討した大規模データはありません。オンライン診療は、医師や患者の感染対策、医療機関のアクセスのしやすさなどの利便性・通院負担の解消、医師の働き方改革等の観点で多くのメリットがある一方、まだまだ発展途上のプラットフォームです。

私たちはそんなオンライン診療の課題を一つ一つ解消しながら普及を推し進めていくことが、少子化や社会保障財源など、より大きな問題解決の可能性を広げることに繋がると考えています。そのためには業界団体や企業が一致団結して、情報をオープンに共有しながら医療の発展に貢献することが必要だと考えています。

発表内容の一部をご紹介します

今回私たちは、キッズドクターを受診した患者さんへの調査をもとに、小児科領域におけるオンライン診療の有用性についての検証を行い、学会で発表しました。発表内容の一部をこちらにまとめます。

対象
2022年7月〜2023年5月までにオンライン診療した患者(2万人弱)
調査内容
キッズドクターを利用した患者(子ども)の保護者からのオンライン診療への全体評価・医師への評価・オペレーターへの評価
受付〜診察開始までの時間
診断名 など

① オンライン診療は患者満足度が高い

キッズドクターのオンライン診察の総合評価は、5点満点中平均4.84点。医師やオペレーターの評価も良好で、全体を通して患者満足度が高いという結果になりました。

②オンライン診療で診察までの待ち時間が軽減できる

キッズドクターでは、40%以上の患者が、オンライン診療の受付完了から15分以内に診察を開始しています。
厚生労働省の資料によると、予約外診療での診察までの待ち時間が15分以内におさまるのは、全体の21.8%。キッズドクターでは約2倍の割合(43.3%)です。

この診察までの待ち時間の短さも、患者の利便性を上げ、総合評価での満足度が高かった要因のひとつと考えます。

③オンライン診療の中心は「30代とその子ども」

子どもに特化したサービス名を掲げていることもあり、患者の年齢は9歳以下が90%を占めています。

厚生労働省の資料でも、オンライン診療利用者の35%前後が10歳以下で最も利用率が高く、次いで30代となっていることから、現在のオンライン診療の利用者は「30代とその子ども」が中心になっていると考えられます。

現在の30代はインターネットの進化と共に成長してきたデジタルネイティブ世代であり、オンライン診療への抵抗感が低いためだと考えられます。

④オンライン診療は医師の感染対策にも有効

キッズドクターのオンライン診療で多かった診断名は、上気道炎や発熱、胃腸炎などの感染性疾患でした。医師と患者の接触がないオンライン診療は、医師の感染対策にも有効であると考えられます。

⑤オンライン診療は地域医療にも貢献

コロナ禍では、病院としても重症化リスクの高い患者を優先せざるを得ず、症状があっても医療にアクセスできずに困っていた患者も多くいました。オンライン診療はそうした医療アクセスの課題を解決する役割も担っています

またキッズドクターでは、オンライン診療受診後にかかりつけ医に診療情報提供書を提供することで、地域医療との連携も密に行っています

💫総論

遠隔医療は単に対面診療の代用として用いるのではなく、それぞれのメリットとデメリットを組み合わせ、相互に補完するものとして発展していくことが望ましいと考えます。

小児科の分野では、日本小児科学が示している重症度が高い緊急性のある病態や身体診察・検査が必要な疾患に関しては対面診療が望ましく、軽症の感染性疾患や病態の安定している慢性疾患などはオンライン診療で診察を行うなど、お互いに補っていくことが大切です。

またオンライン診療は検査や治療が制限されていることから、安全性の担保が課題となっています。今後は、高いレベルのトリアージなどでの重症度の判定、診察の精度を上げる医療デバイスの開発などが、オンライン診療の大きな発展に繋がると考えます

今回の検証を通して見えた、今後の展望

オンライン診療には、検査や治療(施術)が十分にできないなど一定の制約があるため、万能ではないことは言わずもがなです。

一方で今回の検証を通して、高い顧客満足度、医師・患者双方の感染対策、医療機関への通院負担の解消や利便性の向上、医師の働き方改革などの観点から、多くのメリットがあることも改めて確認できました。

一般的に「非対面診療vs対面診療」という構図で語られることも多いですが、この認識は誤っており、あくまでそれぞれの医療形態のメリット・デメリット、患者の容態や症状に応じて、適切に使い分けをすることが大切だと考えています。

キッズドクターは、遠隔医療と対面診療との補完関係をどう築くか、そして現代のペイシャントジャーニーにどのように組み込めばよいかも含めて、10年後、20年後のスタンダードとなる最適解を医療業界の先生方とともに考えていければと思っています

私たちはこれからも、医療の発展と社会の健康に貢献するための努力を続けていきます。ご意見やご質問があれば、どうぞお気軽にお知らせください。

監修医(村田健介医師)コメント

コロナウイルス感染症の蔓延がオンライン診療の発展の大きなターニングポイントとなりましたが、今後オンライン診療が継続して発展できるかは、利便性と安全性の向上が鍵となると思います。
今回の学会はその第一歩となります。今後も医療者と開発者が協働することで、医療の未来を共に築いていきましょう。