4/8予測:緊急事態宣言は1ヶ月後に延長され,3ヶ月後になし崩しになる理由と,そうならない二つの可能性.

残念ながら緊急事態宣言は,十分なシミュレーション無しに実施されたようです.安倍首相は,北大・西浦教授の社会的接触を8割減らせば,新規感染者を激減させることができる,ということを念頭に置いているようです.しかし,たとえそれで新規感染者増が峠を越しても,社会的接触を元に戻せば感染拡大の成長率はもとに戻ります.これは感染症モデルの基本から明らかです.例外は感染者の増加によって社会的免疫が獲得できた場合,つまり人口の相当割合が感染した場合と,感染者を徹底的に減らして新規感染者を全員捕捉し隔離できるようになった場合だけです.しかし1ヶ月後では,どちらも非現実的です.

すると1ヶ月後に安倍首相が,「もう感染は峠を越したので,緊急事態宣言を解除したいがどうか?」と感染症の専門家に聞くと,専門家は解除すればまた指数関数的成長が生じることが分かっていますから,「今解除すると,オーバーシュートを引き起こします.」と答えるでしょう.専門家がこう言っているのに,解除をすることは政治的に不可能なので,緊急事態宣言は延長されます.すると自粛を要請された業界は自粛要請が延長されるので,補償を求めます.日本では直接の補償を行っているわけではありませんけれど,収入減を補うあるいは事業継続を支援するための資金を出しています.多分もう一回くらい支援を打ち出すことは日本政府ができるでしょう.

しかし1ヶ月延長しても事態は本質的に変化しません.感染爆発を抑制するためには社会的距離を取ることが必要で,それには多くの仕事に休んでもらわなくてはならず,その休みをやめると感染が指数関数的に成長するのです.そして休んでもらうためには,金銭的支援が必要ですが,国庫といえども無尽蔵ではありません.

したがって,緊急事態宣言を解除することはできない一方,どこかで金銭的支援をフェードアウトさせざるを得ません.すると生きていくためには,自粛を求められたビジネスも再会せざるを得ないでしょう.もともと自粛でありペナルティーも無いので,なし崩し的に自粛対象のビジネスが再会されて行くでしょう.専門家の現在の予想が正しいのであれば,この場合感染爆発が生じ,医療崩壊も生じます.

この予測がはずれる可能性は,大きくは二つあります.一つは,8割まで社会的接触を減らさなくても感染を抑圧できる場合です.実際西浦教授の推定では,基礎再生産数に2.5という欧米での推定値を使っており,これは日本について推定された1.5よりも圧倒的に大きいものです.したがって,西浦教授の提案よりも緩やかな社会的接触の削減でも,感染を減少させることができるかもしれません.今後一ヶ月の感染拡大の推移を解析することで,より正確な推定ができるでしょう.BCGワクチンのおかげで日本人の感染率,死亡率が小さいという研究もあります.研究者の多数が合意する段階ではないようですが,この研究が正しいなら欧米よりも日本では感染拡大を抑えやすいということになります.

もう一つの予測がはずれる可能性は,自粛を維持するには現在のシステムで出せる以上の国庫の資金が必要なので,それを国債増発と日銀直接引き受けでまかなうことです.これは日本だけの問題ではありません.ビジネスを止めてその人たちを食べさせるには,国が莫大な資金を出すことが必要であり,通常の方法では捻出できないのです.アメリカで戦時国債の発行が議論されているのも同じ理由でしょう.国債利率がすでに上昇をはじめているイタリアでは,EUから資金を引っ張り出そうとしています.

したがってまとめると,メインの予測は自粛が3ヶ月ほどでなし崩しになって,感染爆発が生じることです.サブの予測1は,持続可能な社会的接触の削減で(8割までいかずに),感染爆発を防げることです.サブの予測2は,自粛を維持するために,国債大増発とその日銀引き受けを行うことです.

サブの予測1が成り立つかどうかは,今後1ヶ月の推移を分析することで明らかになってくるでしょう.

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