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忘れられない うれしい言葉


「自分の名前が大嫌いだったけど、あなたに呼ばれるようになって、自分の名前が大好きになった。」

ずっと昔付き合っていた彼女から言われた言葉です。


とても美人で、大人びていて、女子大生活を謳歌していて、おしゃれで、実家も裕福で、好きなことをためらわずに好きと言う、中国地方の方言を話す、とっても素敵な女性でした。

劣等感の塊だった僕は、そんな彼女をいつも眩しく感じていました。「なんで、自分なんかと一緒にいるんだろう。」と思うことがありました。

そんな彼女は、時折淋しそうにしていて、自分に自信が無いと話すことがありました。

とても繊細で、周りとの距離感や学生としての忙しいスケジュール、両親との軋轢、将来への不安を抱えていることを時々僕にこぼしました。

とくに三姉妹の末っ子だった彼女は、年の離れたふたりの姉と自分を比較し、両親からの愛情を疑っていました。

たくさんの友達に囲まれ、その境遇も恵まれていると思っていた僕は、彼女の心の中の本当の言葉を聞き流してしまう事があったと思います。


2年程付き合いが続きました。たくさんデートもしたし、喧嘩もしたし、旅行に行ったり、ずっと一緒にいられる方法を考えることもありました。普通の若いカップルだったと思います。そう、普通の恋でした。

お互いが惹かれあっていたのは間違いないと思いますが、本気の想いや本音をぶつけ合ったりする事は少なく、お互いの負担をふたりで分け合えるほどの成熟さはない若いふたりでした。

季節を越える度、ふたりはそこはかとない別れの予感を感じてました。



ある休日の朝、ふたりで過ごしていた部屋で彼女は別れ話を切り出しました。

それほどの驚きは僕にはありませんでした。「仕方ないよね。わかった。」とだけ言った僕に対して彼女は、「最後に伝えたかった。」と、冒頭の言葉を僕に伝えてくれました。


「自分の名前が大嫌いだったけど、あなたに呼ばれるようになって、自分の名前が大好きになった。・・・ありがとう。」


この言葉を聞いた途端、涙が溢れてきました。

「僕には不釣り合いなこんな素敵な女性が、認めてくれていたんだ。」
「一番大切なはずの自分の名前を、大嫌いだと言っていた彼女から、大好きな名前にさせる事が出来たんだ。」
「彼女にとっても僕は特別だったんだ。」
「もっと自分に自信を持ってって言っている。」
「こんなに愛情深い言葉はないよ。」
「もっと優しく出来れば良かった。」
「こちらこそありがとう。」

いろいろな感情がこみ上げました。


彼女に言われた言葉は、今でも忘れることはありません。
大きな自信になった、かなりロマンチックな言葉でしたから。


なにより、愛っていうものを知る事が出来た瞬間だって今でも思い出すから。


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