リストラの嵐吹き荒れるアメリカ、次は金融とヘルスケアか
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:IT業界の大量解雇が続くアメリカ、次は金融とヘルスケア業界と言われるのはなぜか。アメリカ企業のリストラ基準とは何か。投資家の思惑が異常なリストラの背後にある、という事実を探る。
次の大量解雇のターゲットは
BusinessWeek2023年3月15日号P64は、Where the ax will fall next (次に斧が振り下ろされるのはどこだ)と題して、IT業界に吹き荒れる解雇の嵐が今度は、他業界に向かうとの観測を載せています。
ツイッター、メタ、グーグルの次は、金融とヘルスケアだというのですが、根拠はS&P500という指標です。
S&P 500はダウ・ジョーンズ平均(Dow Jones Industrial Average)とともに、アメリカの代表的な株価指数であり、スタンダード・アンド・プアーズ(Standard & Poor's)社発表の500社株価平均を示したものです。
この500社の業績がパンデミック前、例えば2019年の業績よりも、低迷している業界が、次のリストラの嵐が吹く場所だ、というのです。
記事によれば、利益の上げ幅よりも、採用のコストが上回っている、つまり利益予想に見合わない従業員の補填をした業界から、大量解雇が始まるだろうというのです。
煎じ詰めると、一人当たりの売上が減っている業界が次のターゲットになるわけですが、それが金融とヘルスケアだというのです。
BusinessWeekの予想では金融業界はバンカメことBank of Americaやシティグループ(Citygroup)、ヘルスケアではミネアポリスを拠点とする医療装置メーカーメッドトロニック(Medtronic)の名前が上がっています。
アメリカ企業の光と影
米企業は、常に従業員のパフォーマンスをチェックし、少しでも下がればクビにすることが基本ルールなのです。
しかし、よく言われるように、本当にアメリカ企業っていうのは、人を大事にしないのだなあ、と痛感しますね。
そして、人や企業の成長という考え方が実に近視眼的なことも、今更ながら考えさせられます。
だって今って、パンデミックが開けたばかりでしょ、すぐ元に戻るわけないじゃないですか、それをコロナ前の2019年の売上に届いてないって言って、ビシバシ従業員をクビにするって、どんだけケチな考え方なんだって、思うんですよ。
まあグーグルなんて150万人も労働者を抱えていて、今回1万8千人の削減をしても、全体の1.2%にしかならないから、雇用の安全弁だからいいんだよ、っていう考えもあるかも知れませんが。
メタなどは業界平均を上回る、従業員一人あたりのパフォーマンスを出しているのに、ザッカーバーグCEOはさらなる首切りに意欲満々だというのです。
企業によっても、解雇の考え方に幅があるのも事実です。
物言う株主の暗躍
この背後にあるのが、投資家っていう存在です。
記事はこんなことも言っています。
「企業のエクゼクティブたちが、リストラしないで現状維持のまま行こうと考えていても、”物言う株主たちactivist investors”が黙っていない。ちょっとでも彼らの基準で人員がダブついていれば、『それは経営陣の厳しさが足りない』と決めつけられてしまう」。
資本主義ですねえ。
アメリカは人権はやかましく言うのに、働く人の人権などはお構いなしなんです。
日本的経営も悪くない
これに比べると日本は”人本主義”と言えるでしょう。
もう一つこの記事で感心した記述がありました、それは
「企業はリストラする前に、売上と利益を増やす別のルートを探すべきじゃないか」という正論です。
日本企業ってそうじゃないですか、会社のピンチになれば、全社を上げて社員一丸となって、濡れ雑巾を絞るようなコストカットしたり、あの手この手を試みて、窮状を脱しようとしますよね。
この記事は、ちょっと日米比較経営論の感じもしました。
今更ながら、ですが。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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