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ESG投資は正しい経営判断なのか

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:ESG投資とは何かとその隠された問題点。

ESG投資の時代


The Wall Street Journal2021年8月2日号は、ドイツ銀行傘下のアセットマネジメント会社DWSの投資戦略へのシフトについて論じています。

テーマはESG投資です。EはEnvironment環境、SはSociety社会、GはGovernance 企業統治を表し、従来財務指標に数えられなかったこれらの指標を、企業の財務評価として組み入れようという新しい動きが、ESG投資です。

Eは気候変動や環境保全にプラスになる企業行動、Sは社会の多様性や平等、公平の実現、Gは経営者の暴走を阻止するための外部委員会、女性役員の増加、外部取締役の起用などを意味し、これが望ましい企業像であることは、読者の皆さまご案内のとおりです。

今の投資家は、環境にダメージを与えず、多様化を促し、職場環境を改善しながら、利益を得られる方向が好ましい投資だと考えています。

ESG投資は、顧客から集めたカネを投資に運用して利益を上げようとするアセットマネジメントマネジメント会社にとっても、ウイン・ウインの考え方と言えます。

今回DWSはこう宣言しました。「我々の関心はESG投資にある。ESGを我々が行うすべてのことの中心におく。投資の半分以上はESG投資の考え方で行う」。

なぜ、DWSは辛辣な批判者を再び幹部に任命したのか

しかし、新しくESG投資マネジャーに任命された、女性デズリー・フィクスラー(Desire Fixler)氏はこれに懐疑的です。

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そもそも彼女は同社のチーフ・サステイナビリティ・オフィサー(chief sustainability officer)を勤めていた人です。いったんその職を解かれて、ESG投資責任者に任命されました。

彼女は辛辣です。「サステイナビリティ責任者として、企業に悪いことがあったらそれを指摘するのは当然なのに、正直に言って干されたわ。「気候変動やインクルージョン(公平な参画)に積極的。」とかも盛ってるし。そう言うウソをつくと、お金や人の活動が正しいところに行かないでしょ」という具合です。

彼女はDWSには明確な野心と戦略がないとし、ESG投資に本気でないと激しく非難します。石炭やその他の資源の本物の専門家のチームが不在、であることをその一つの理由とします。

彼女は近年マネーロンダリングやその他の不正で破産したワイアーカード社への(WirecardAG)投資に、DWSが関わっていたことを問題視しており、ガバナンスができていない企業への投資についても警鐘を鳴らしています。

調査会社モーニングスターによれば、ESG投資は今年の第ニ四半期だけで、世界で20兆ドルを超えたといい、DWSも同時期に全投資額の4割がESG投資だといいます。

The Wall Street Journalは、今回も読者に、もって回った書き方で、一方の真実を強調しているのでは、と疑います。

まずDWSはドイツ銀行が所有している企業だということ。いかんせん保守的なのです。いったんクビにしたフィクスラーさんをESG責任者に仕立てたのは、世間向けのポーズなんじゃ。

そしてESGはブームだけれど、それよりももっと実質的な伝統的財務指標も今まで以上に大事にすべき、ではないかと。

DWSのスポークスマンはこう語っています。
「投資判断はその時の適切な評価と情報に基づいて行う」

ESG投資を信じない2つの理由

個人的に懸念しているのは、いまESGスコアなるものがあるんですよ。業界平均とかも出ている。でもそれを誰が決めるのかってことなんです。

なんかのパフォーマンスが良ければ、倫理ポイントが上がる、という仕組みだと思うんですよね。そうすると、企業は企業理念や哲学などどこへやら、ポイント稼ぎの企業行動に駆られ、結果的にESGスコアなど形骸化する。

もう一つは、フィクスラーさんの言葉にもあるように、企業のESGを評価する専門家がいるのか、ということです。ESGスコアなどの形式的なものを超えて、本質を判断できる専門家がどのくらいいるか、ということです。

僕は企業=人間性という説を出していますが、ESGはどうもアバウトすぎると思っています。この間の気候変動についての異説もご覧ください。

くれぐれも、アセットマネジメント会社は、投資判断を誤ってはいけません。そのためにESGを判断できる専門家がいなくてならない。

でもそんな人はいなくていいんです。実は、本当の経営者ならば、物事の本質がわかるはずです。なまじの全体を見れない専門家より、本物の経営者の判断が正しいと信じますね。

読者の皆様におわび

さて、読者の皆様、今回で100回連続投稿になったのを区切りにするわけではありませんが、9月から大学が始まるので、お約束していた毎日更新ができなくなりました。

毎日、高校生向けの連載と合わせて2記事書いて100日連続はしたのですが、力足らずで、授業が入ると両立は無理と悟りました。絶対に毎日書くなどと宣言したのに、情けない限りです。

なんとか、続けて書きたいと思いますがせいぜい一日1記事書けるか書けないかになると思われます。申し訳ありません。

今後ともよろしくお願いいたします。

                            野呂 一郎

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