日経vsThe Wall Street Journal   その2 日本の新聞の致命的欠陥

日本の新聞の低迷の原因
東スポだけではなく、毎朝読(まいちょーよみ)の三大紙も読者数の減少が止まりません。

東スポの分析とは別になりますが、私は新聞業界の宿痾とも言うべき悪癖がここに来て、爆発したと考えています。

それは何か、署名記事がないことです。

The Wall Street Journalは一面もその他も基本署名記事です。
記者が自分の名前を出して、記事を堂々と出しています。

日本の新聞といえば、記者クラブでの政府や企業が一方的に言うことをなぞるだけ。どの新聞も似たりよったりの記事しか出しません。
そのレベルの記事だったらネットで読めるじゃないか、ということですよね。

署名記事というシステムがないから、記者もモチベーションが上がらない。
署名記事とは毎回スクープを書くようなものです。
それ自体大きなインセンティブになるし、記者の技量が上がる。

でも、日本の新聞記者は今日も上司やデスクの顔色をうかがいながら、禁句だらけの制約の中で、当たり障りのない記事を書くのです。

足を使わないから訴える記事が書けない

東スポの記者だけじゃなく、他紙の記者たちも、この危機感を感じないのかなあ。新聞が潰れても食っていくためには、かつて読売新聞の社主のナベツネさんがやったように、反対派のアジトに忍び込むようなことをしないといけないんじゃないか。

ネット時代で何でもインターネットで調べようとする習慣がつけば、いい記事は書けないと思います。ネットじゃなくて、リーダーは足、で書くべきです。

リーダーに求められるのも”取材力”
これからリーダーに必要な能力は、これは新聞記者に限りませんが、自ら取材して、書く(表現する、アウトプットする)能力ですよ。ネット記事と同レベルのアウトプット能力がないから、新聞が売れないんですよ。

もっと足を使って関係者に聞き取りをし、資料を読み込み、仲間とディスカッションし、スクープをどんどん出せよ、と言いたいですね。これを”取材力”と言えば、企業リーダーに求められのも取材力、です。

リーダーに求められる能力はDXとやらじゃないですよ。取材力です。もっと情報を入れ(特に世界の)、教養を高め、社員とディスカッションし、そして書いて表現する能力を磨くことです。

口頭で表現することより、書いてメッセージを発する能力が、世界ではリーダーにより強く求められています。なぜかと言うと、思想や哲学は公に向けて書くことにより、全方位から攻められてもスキのない、立派なものになるからです。責任ある発言をしたいならば、まず書く能力を上げることです。

The Wall Street Journalの、無視できない市場へのアナウンス効果
もう一度、両紙の紙面を比較して下さい。
The Wall Street Journalは投資家の立場に常に立っており、株価の動向は一面に反映させることが多いですね。

そして、ここにゴーンさんに限らず、The Wall Street Journalをすべてのリーダーがチェックしなくてはならない理由があります。
それは、株価のアナウンス効果、です。

結局株価は、人の気が決定するものです。
人の強い思いが、思い入れのある株を購入するという消費行動につながることは、広く知られた事実です。

そして、テスラ社のイーロン・マスク氏やバイデン大統領など、世界的に影響力のある人の一言に敏感に反応します。

The Wall Street Journalの分析を詳しく読んだわけじゃないが、もう今日の号の一面見出しで「ビットコイン下落」なんてやっちゃっているから、この動きが加速するでしょう。

日経も小さな見出しでしたが、ビットコイン下落については二面で詳報しており、なかなかいい記事だったと思います。
特に市場のカネのダブつきが投資熱を呼んだというあたりは。

でもそれがアメリカの大規模なコロナ救済金が市場に流れているのが原因というのは、The Wall Street Journalを毎日読んでいると、とてもよくわかります。

リーダーは戦争報道からも学ぶべきだ
ハマスvsイスラエル戦争なんか経済紙の一面にこなくていい?

いや、これは世界のリーダーはこの戦争を憂え、というメッセージです。第一話でも言いましたが、いまや世界のビジネスリーダーは政治観を持たねばならないのです。

例えば企業としてヘイトクラムをどう考えるのか、これを表明しなくてはならないのです。ビジネスに関係してくるから。

トップは自分の本音を隠して従業員のマジョリティ(多数派)を支持する、などということもありうる。

経済に関連しない戦争などなく、リーダーはこれに関心を持ち、自分の意見を表明するか否かを時と場合に応じて判断しなくてはなりません。

記事はアメリカがエジプト、カタール、EUと組んで今日金曜にも両国に停戦のプレッシャーを掛ける、という内容ですが、当たり前ですが、国際紛争の調停は一国ではどうにもならないという現実がわかります。

日本も経済国家として、国際政治にいやでも関わらないとならず、どの国と連盟を組むかそろそろはっきりさせるべきです。

これまでのように、イスラエルにも、中東にもいい顔をする外交でいいのでしょうか。戦略的沈黙を気取って、いやそんなことじゃなく、外交においてもビジネス的な損得分析ができないだけではないのか。

平和国家として、経済大国としてますます政治は大事になってきます。リーダーも、グローバルにビジネスを余儀なくされるので、「お前はどっち側につくんだ」と問われたときの答えくらい、用意しておきたいものです。ビジネストークに政治を出していいのかの判断も含めて。

サイバーセキュリティをどうにかしろ
ああ、長くなるからこのくらいで終わりますけれど、最後ハッカーによるランサムマネーをしっかり一面にしている、The Wall Street Journalはいいですね。これをPipelineという会社は、支払っちゃったんですね。

これは、サイバーセキュリティが脆弱すぎる日本政府と企業にも、読ませたい記事ですね。日本も政府主導で企業のハッカー対策に本腰を入れないと。いや政府が一番危ないんですが。

さて、日経とThe Wall Street Journalの最新号一面比較、いかがだったでしょうか。まあ、方や日本語で読者は日本人、方や英語で読者は世界中、というターゲットの違いがそもそもあるじゃねえか、それはおっしゃるとおりですが。

ゴーン氏が彼の地でもしThe Wall Street Journalを読んでいたら、電気自動車にジャック・マーが熱視線の記事よりも、政治を含めた全紙をくまなく見ていると思います。それでグローバルな大局観を今日も養っているのではないでしょうか。僕は彼のやったことは許せないですがね。

それではまた明日。
今日も読んでくださってありがとうございました。
                              野呂一郎

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