企業家精神が足りない高校生?日本の教育が悪いからだ。
この記事を読んで、あなたが得られるかも知れない利益:高校生に企業家先進が足りないとの最新データ。なぜ、若者は起業に興味がないのか、それは教育に問題があるからだ。年末に教育論をぶってみたよ。教育が悪いから、いまの世界で日本はリーダーシップがとれないんだよ、という暴論。
企業家精神が弱い日本
年末の書類整理をやっていたら、日経新聞の「日本の高校生は企業家精神が足りない」というデータについて報じた記事が目に止まりました。
今日はちょっとそれに触れたいと思います。
いまから30年も前の、僕がアメリカの大学で日本語を教えながら、MBA(経営学修士号)の取得を目指し、勉強していた頃の話です。
ある40代くらいの夫婦が、僕の社会人向け日本語コースをとっていました。
彼らはいつも僕に、「これから日本人向けに、米国文化と英語を教えるビジネスをしたいんだ。相談に乗ってくれ」などというのです。
ふたりのライフスタイルは、色々なビジネスを立ち上げ、うまくいかないとやめて新しい仕事を始める、そんな感じでした。
いつもビジネスの話を楽しそうにしていました。
その夫婦だけではなく、学生も起業の相談によく来ました。
「さすがは、開拓者パイオニアが作った国、アメリカだなあ、企業家精神があふれているな」、と思うと同時に、はたと気がついたことがありました。
口では言い表せないんですけれども、アメリカには、「どんどん新しいビジネスをやろうよ」という空気があるんです。
アメリカではいろんな土地に行きましたけれど、その目に見えない何かがあることは共通していましたね。
日本の教育の欠点
企業家精神、それ何って、高校生の皆さんはおっしゃるような気がしますね。
別に若い時に起業に興味を持つか持たないか、などは個人の価値観の問題で、国家がどうこうと指図するのはお門違いかと思います。
しかし、日本の学校は受験だけに生徒の意識を向けすぎです。
仕事とは何か、起業を含めた「働くとは何か」ということをまったく教えてないのは、問題だと思うんです。
しかし、職業教育の前にやるべきことがあります。
それは、教育を変えることです。
そうしないと、企業家精神など生まれないからです。
批判精神の欠如
何度かお話しましたけれど、僕はアメリカに来て、大学の初めての授業でひどいカルチャーショックを受けました。
それは、先生がこういう宿題を出したのです。
「教科書の1ページから100ページまで明日までに読んで、まとめてくるように。もう一つ、その部分に関して「批判」も書いてくること」
僕は「えっ?批判って?」と固まってしまったのです。
要約はわかる、でも、批判ってなんだ?
僕は、日本の学校ではずっと学校に、教師に逆らってきました。
反体制を気取っていたくせに、「批判をしてみろ」っていう言葉を聞いてたじろいでしまったのです。
正しい批判なんて、やり方もわからなかったのです。
そもそも、日本の学校では「批判しろ」なんていう教えはどこにもありません。
生徒は、先生が黒板に書いたものを書き写すだけ。
教科書を一字一句覚えて、ついでに答えも暗記する、そして正解はいつもひとつだけです。
受験がその態度に拍車をかけます。
考えるのではなくて、答えを覚えるのが受験勉強のすべてです。
答えを引き出すプロセスこそ大事
アメリカの教育がすぐれているとはいいませんが、少なくとも考えさせる、議論させる、そして批判させるという教育は見習うべきだと考えます。
特に批判することを教えていません。
大学生を見ていても、批判するスキルがまったくないことに、愕然とします。かつて僕がそうだったように。
それは、日本の教育が自分で考え、他者と意見をぶつけ合うという機会を与えないからです。
批判とは、考えさせる、議論させるという教育のベースがあって可能なスキルなのです。
批判する力は、やみくもに既存の考えを否定することではありません。
論理と、多様で自由なものの考え方が必要です。
そして、論を戦わせるという体験も欠かせません。
それらがあって、答えが導かれるのですが、日本の教育は最初から答えがあって、それを覚える式なんです。
世界の多様性の前に、日本政府と企業がうろたえている現状は、日本の教育のせいなのです。
教育が変わらない限り、日本が多様性の時代の世界のリーダーシップをとることはないでしょう。
自由がなければ批判はできない
そのために最も必要なのは、自由ではないでしょうか。
自由とは、人と違う見解を表明することが自然にできる雰囲気のことです。
自由は憲法で保証されていますが、はっきりいって日本の学校には存在しないと思います。
例えば、高校生の皆さんは、先生に異論、反論を投げかけ、そして先生はそれを受け入れてくれますか?
それがなければ、批判なんてできないんです。
僕が、アメリカの大学の初授業で、凍りついて固まってしまったように。
批判する力とは、それを身につけるためには、自由があり、考えさせ、議論させることに重きをおいた教育が必要不可欠なのだ、アメリカでその思いが強くなりました。
企業家精神とは批判精神のこと
企業家精神とは、まさに批判精神のことなのです。
なぜならば、企業家精神とは、古いものを検証して、新しいものを生み出す精神だからです。
アメリカに企業家精神が息づいている理由は、もちろん制度的なものもあるし、実力主義の厳しい社会という現実もあります。
そして、その根っこに自由があり、批判を歓迎する文化があります。
起業に興味を持つ高校生が少ないのは、正しく批判するすべを持つ機会を与えられなかったからではないでしょうか。
会社を起こすことだけが、企業家精神ではありません。
現状に疑問を持ち、論理的に考え、反対意見に耳を傾け、自分で結論を出すというあらゆる行為のエンジンが企業家精神なのです。
これがなくなったら最後、経済がGDPがどうこうの前に国家はおしまいではないでしょうか。
野呂 一郎
清和大学 教授