プロレス&マーケティング第17戦 桂銀淑とUWFと言葉の力。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:プロレス大会名という”型”。UWF大会名に見る言葉の力。楽曲と作詞というシンクロの妙。ねこっぱち名言。
プロレス、シリーズ名という”型”
ねこっぱちさんが、また以下のような刺激的な言葉を下さいました。
プロレスの型には、ことば、があります。
シリーズ名を考えてみましょう。
プロレスには相撲で言う○○場所みたいな、興行形態があります。
これをシリーズ、と呼びます。
通常2ヶ月弱くらいで全国を回ります。初戦が後楽園ホールで、全国を回り、最後には蔵前国技館で猪木のタイトル戦、といった具合です。
その間、同じメンバーの外国人選手たちが参戦します。
僕は、このシリーズに冠される名前が、昔から非常に重要だと考えてきました。
例えば猪木全盛時代の新日本プロレスのシリーズ名は、
という具合で、ほとんどすべてシンプルなネーミングで、猪木の躍動感とリンクするようなネーミングで、それだけでファンを熱くさせていたと思います。
しかし、近年の新日本プロレスのシリーズ名は、
・Presents WRESTLE KINGDOM 15 in 東京ドーム
・Historic X-over
・Road to SAKURA GENESIS 2023
・DOMINION 6.12 in OSAKA-JO HALL
など英文字オンリーの大会名が目立ちます。
僕はこれではファンは感情移入できないと思うんですよ。
これはプロレスに限らないんですが、興行のタイトル、製品のネーミングは英文字を使うときは、よほど英文字で書いても十分に日本人の消費者が認識できる言葉でなければ、やめるのが賢明ではないか、と思うのです。
でもPuffyはどうか。
パフィよりも、いいですね(笑)
まあでも、長すぎる英文字のシリーズ名は、担当者の自己満足じゃないでしょうか。
genesis(発生), dominion(統治権)なんて、そもそも普通の日本人はわからないし。
UWFの秀逸なシリーズ名
僕がサラリーマン時代、すごいプロレスファンの上司がいたんですよ、その人は今ある日本を代表する組織の長をやっているんですが、UWFマニアでもありました。
ある時、こんな相談をされたんですよ。
「野呂ちゃん、今度の3週間続く展示会なんだけれど、プロレス的な大会名を考えてみたんだけど、これどう?」
彼が示したのは、「ストロング・ウィークス」、でした。
それは第一次UWFのシリーズ名で、UWF信者ならばすぐ分かるワードでした。
僕は思わずニヤリとし、彼も僕の表情から、同意の意味をすぐに汲み取り、笑顔を返してくれました。
ストロング・ウィークス(Strong Weeks)。
原語は英語ですが、日本人になじみのあるシンプルで、カタカナにすると非常に強い2語です。
彼が重要極まるビジネスのネーミングに、この「ストロング・ウィークス」を思いついたことは、いかにこのUWFのシリーズ名が、ファンに刺さっていたかを物語っています。
少なくとも、二人のプロレス者の意識には深く刻まれたネーミングだったのです。
桂銀淑(ケイ・ウンスク)とパワーワード
先日、偶然、韓国出身の歌手、桂銀淑(ケイ・ウンスク)さんの「昭和最後の秋のこと」という楽曲を耳にしました。
日本人でこんな情感出せる歌手はいないな、と思いつつ、この歌のあるフレーズに心打たれたんです。
それは歌のタイトルと同じ、「昭和最後の秋のこと」ということばでした。
叙情を誘う悲しみと懐かしさ、去りゆく時代への鎮魂などを感じ、それが歌のメロディーのトーンとすごく合い、情感たっぷりのケイ・ウンスクの歌いっぷりとシンクロしている、そう強く感じました。
さすが、昭和のヒットメーカー、作詞:阿久悠,作曲:浜圭介のコンビ、といえばそれまでですが、僕は聞いたことがなかったんですが、とにかく心打たれたんです。
でも、この「昭和最後の秋のこと」という「ことば」がなければ、この歌は僕の心にそれほどは響かなかったと思います。
素晴らしい楽曲ができても、言葉がそれに負けているケースってたくさんあると思うんですよ。
この歌は、負けてない。
「まず言葉で射抜いてそこにこれしか無いという音楽をドン!と、ぶっ刺したい」、ねこっぱちさんのおっしゃるとおりだな、と深く共感した次第です。
今日のプロレス&マーケティングを他業種に応用する
1.サブ的なポジションの言葉遣いでも、おろそかにするな
例えば、サブタイトルが重要ということ。例えばUWF~ザ・プロレス~という具合。
2.安易に英文字を乱用するな
しかしPuffyは別。短くそして強調したい意図があれば有効。
3.シンプルで強い言葉とカタカナの相性はいいかも
そう、UWFストロング・ウィークスです。
4.雰囲気を込めろ
興行名のコピーライティングを考えると、新日本プロレス創生期の「闘魂シリーズ」、「ブラディファイト・シリーズ」は、必ずしも具体的な見どころを示しているわけではない。
あくまでトーンである。
猪木が主役で、タイガー・ジェット・シンが日本人選手を血祭りにあげる、という予告である。でも、その雰囲気だけ伝わればいいのだ。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
ねこっぱちさん、今日もヒントをありがとうございました!
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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