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最高の大学としての千葉商科大学

出会いという奇跡

情熱は”好き“と置き換えられるだろう。

僕の授業に情熱が持てないのなら、僕のことが好きじゃないんだ、授業の内容が好きじゃないんだ。大学の授業を考えてみると、授業は聞いてみないと好きか嫌いかわからないから(いや、実はそうじゃなく、最初っから聞く気がないのがほとんどなんだが)、その教師を好きか嫌いかということが大きいと思う。

言い換えると”相性“だ。教師と生徒の相性が合うとき、生徒に情熱が生まれるのだ。生徒が情熱を持てば、教師にも火がつく。

かくして、教室は火の海になる。この環境が毎日4年間続けば、生徒もそして先生も別次元に飛躍するだろう。大学は最高の学び場になる。

それは奇跡の瞬間と言ってもいい。

しかしこれから話すその奇跡は、別に僕が魅力的だったからでも、面白かったからでもない。単なる出会い、相性なんだ。奇跡、のね。

千葉商科大学で起こった奇跡

そんな経験をしたことがある。

それは1998年の春だ。縁あって千葉商科大学の非常勤講師として働くことになった。教えるのは経営学史、経営学の歴史だ。シラバス(講義概要)には、「リアルタイムの出来事を題材に、徹底的にエンタテイメントを追求する」などと書いた覚えがある。

しかし、教えるのはあくまで経営学の歴史だ。過去の話は苦手だ。歴史っていうことになると時系列に出来事を並べることになるわけで、どうしても無味乾燥になる。そもそもリアルタイムなんて関係ないし、それをやれば歴史と矛盾する。

大学で教えるキャリアは、立正短大(現在立正大学に併合、改組)で少し教えただけだったが、学生たちに教科書通り教えると、聞いてくれないので、“エンタテイメント路線”を敷くことにしていた。

それは、今若者たちに受けているトピックを無理やり経営学に結びつける手法だ。パソコンの動画などない時代だったので、テレビの画像を切り貼りして編集、VHSに録画してビデオ教材を作った。受けを狙ったつもりはなかった。学生の沈黙や無視、やる気のなさを見るのが辛かっただけだ。

それでも短大では経営学という授業だから、それでもよかった。(よくないが)しかし、千葉商科大学で教えるのは経営学の歴史だ。しかし、一応エンタテイメントとぶち上げているので、それなりの用意はしていった。ダンボールで作った経営学の理論の歴史年表を持って教室に入った。

入るなり、なにか受けている。大受けしている。10分くらい遅刻していったことが、彼ら彼女らにウケたみたいだ。きっちり先生たちは定刻に始めるのがここの流儀らしい。

200人くらい入る教室でみんな一心に僕のことを注目している。僕がいきなり黒板に、ダンボールを並べ始めた。それがまたおかしかったらしい、大爆笑がこだました。

自主ゼミ運動という情熱

これが相性なんだ。理屈じゃなく、千葉商科大学のあそこにいた学生たちは僕のことが好きになってくれたんだ。出会いだ、縁だ。

ラポールという心理学の用語がある、心が通じ合い信頼しあっている様を表す言葉だが、彼らのあった瞬間にそのラポールが生まれたのだ。それが情熱に変わるのに時間はかからなかった。

野呂のゼミを作りたい、そんな運動が起きた。運動のリーダーS君が署名活動を始め、何百人の学生の署名を集め、当時経済界の有名人だったK学長に直訴した。しかし、非常勤講師のゼミなど前例がなく却下された。

それでもめげずに運動を続け、学校側も特例として学生が主体的に行う”自主ゼミ“として許可がおりた。その野呂ゼミは僕が大学を追われる7年間に渡って続き、今も解散していない。ゼミ生の中には千葉大学から参加してくれたK君もいる。シンガポールから夏に帰国すると聞いている、帰国歓迎会やらなきゃ。

僕は今、野呂ゼミのみんなに謝りたい。教師がヘタレでろくなこと教えられなかったからだ。

でも、僕は情熱という力を目の当たりにしたのだ。

情熱があればマイナスをプラスにできる

もっというと、教師がバカでもいい、カリキュラムがダメでもいい。そんなこと問題じゃないんだ。

生徒に情熱があれば、そんなことはいとも簡単に乗り越えられる。情熱こそ最強の積極性だ、そう教えられたのだ。彼ら彼女らのその情熱という超積極性で僕がいろんなことを教わり、ひたすら楽しい7年間を過ごせたことに感謝したい。

今思えば、彼らは自主ゼミを創るために、類まれな情熱を持って行動して勝利した。その体験は、比類ない自信とエネルギーとなって彼ら彼女らの腹の底にマグマとして蓄えられたのではないかと思う。

その動力炉があれば、どんな夢でも成功に導くことを僕は確信している。

情熱イコール最高最大の能力と僕が言うゆえんだ。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。

また明日会おう。

                              野呂一郎


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