大統領選の行方を左右する移民問題がなぜ「一平問題」とリンクするのか?
この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:トランプ勝利があるとすると、移民問題だろう。米国民はここに来て急速にこの問題についての関心を強めている。トランプとバイデンの対国民コミュニケーション能力の差がはっきりしてきた。一平賭博問題も、実は、この移民問題に関連しているという事実も指摘したい。
バイデンの戦略ミス
きのう、経済政策はよい戦略たるべし、という話をしました。
個人的野心を動機とした経済政策は、よい戦略ではありません。
これに今日はもう一つ付け加えます。
「優先順位を考えない政策は、よい戦略ではない」。
これは、バイデンさんの移民政策への批判です。
戦略とは「優先順位を決めること」なのです。
どんないい戦略でも、優先順位が低いものを、メインの戦略に持ってきても意味がありません。
一般教書演説(State of the Union address)という政治イベントがあります。
これは年に一度、大統領がⅠ年間のアメリカの国家政策を国民に向けて演説する機会です。
バイデン大統領の失態は、ここで優先順位を間違えたことです。
国家が優先すべきは、インフレ退治じゃなくて、国家の安全なのです。
具体的に言えば「移民問題」です。
バイデン氏は一般教書演説で、これに触れることすらなかったのです。
重大性を増す移民問題
The Wall Street Journalの最新調査によると、11月の大統領選の世論調査で、移民問題が有権者の最も関心の高いイシュー(issue関心事)であることが判明しました。
20%の有権者が最も重視する問題と答え、76%がバイデン氏の移民問題のハンドリングが不十分だと答えています。
移民問題への取り組みに関して、トランプ氏がバイデン氏を14ポイントもリードしています。
どうもバイデンさんはこの問題に限らずですが、後手後手に回り、世論が反発すると発言撤回を繰り返しています。
ガザの紛争についてもイスラエル寄りで爆撃を支持していたのが、若者が戦争反対運動を起こすと、慌てて休戦を要請しました。
一般教書演説に移民問題がないことは、大統領が一国のセキュリティを無視しているメッセージと捉えられかねず、大統領を含めスピーチライター、側近も何やってんだ、と思いますね。
トランプの言説の巧みさ
トランプはもの言いがはっきりしてるでしょ。
あれがアメリカ人の好みなんですよ。
はっきり物を言う、ことはいつもアメリカ人の美徳です。
言葉を濁したり、玉虫色の表現をするよりも、はっきり物を言う、間違っていようがいまいが関係ないんです。
Speak out(はっきり言う)だけで、ポイントは上がるんです。
移民問題で先週の火曜日、トランプさんがミシガン州のグランド・ラピッズというところで言った言葉がこれです。
トランプの強みって、アメリカ人好みの、こういう言い草なんですよね。
実際は10年以上にわたる学術調査で、移民の多い土地のほうが、アメリカ人だけの居住区よりも、犯罪が少なく安全なのは証明されているんですけれど、トランプって言葉を「盛る」じゃないですか。
Stop the steal !(オレが負けたのは嘘っぱちだ、投票をやり直せ!)が象徴的ですが、この移民問題にかこつけてバイデンを貶めるやり方は、トランプの真骨頂ともいえるものです。
しかし、事実だろうが事実でなかろうが、アメリカは、はっきりいうものを支持する、つまり「言ったもん勝ち」の価値観がありますから、トランプは移民問題で完全にイニシアチブ(積極的な姿勢)をとったといえます。
一平問題も無関係ではない
アメリカのFBI(連邦捜査局)、司法当局が一平氏の賭博問題で動き始めたという報道は、アメリカという国のセキュリティが脅かされているからです。
スポーツ賭博の背後に反社会集団、テロリストがいて、その資金源が違法ブックメーカー(胴元)かもしれないという見立てがあります。
移民問題の核心は、まさにそこ。
移民を装ったテロリスト、犯罪集団が紛れている可能性があるわけで、これは国家としては基本的かつ根本的なセキュリティ課題といえるのです。
折しも昨年12月には、国境を越えようとした22万人が逮捕され、先月にはそれよりは減りましたが14万人が逮捕されました。
この国境パトロールにかかるコストだって、広い意味での国家セキュリティの問題といえるでしょう。
トランプが、現時点で移民問題でイニシアチブを握った事実は、11月の本戦に大きな影響を与えるに違いありません。
野呂 一郎
清和大学教授
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