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米声明「日本危険行くな」にみる日米同盟破綻の兆し


米紙が明かした東京五輪強行の理由

オリンピックは開催されるでしょう。それはThe Wall Street Journal5月27日号の社説でも明らかです。

この論説はざっくり以下のことを伝えています。

・オリンピックをやるやらないは日本の決断

・でもアメリカは日本がオリンピック開催できるように手助けすべきだ

・アメリカの旅行局(State Department Travel Advisory)が、日本への渡航を避けろなどと呼びかけたのは間違ったメッセージ。日本はすでに選手、関係者の受け入れに動いているのに、日米の足並みがそろってない。

・アメリカが日本のオリンピック開催の手助けは、まず旅行局の日本に行くな指示を撤回すること、日本へのワクチン供給と流通のスピードアップすることだ

・ 日本は感染者は欧米に比べて少ないものの、ワクチン接種に関しては相当遅れている。5月24日現在完全にワクチンを摂取してる人は2.3%しかいない。
・多くの日本人がオリンピック開催はより多くのコロナ変異株を輸入することに繋がると恐れている。

・ 朝日新聞の今月の調査では、約83%の日本人がオリンピックの中止か延期するかを望んでいる

・日本のプライムミニスター・スガは、支持率が30%ちょっとという体たらくだが、オリンピックを開くと誓っている

・東京は救う価値がある。それはアメリカの為でもあるからだ。理由は中国だ。
・中国は北京で来年冬季オリンピックを開催する。 もし東京五輪が開催できず、来年の中国冬季五輪が開催され、派手にやれば、専制国家がオリンピックを自分たちの政治的モデルを世界に宣伝する格好のプロパガンダ戦略になってしまう。

・東京オリンピック開催は、1年以上続いた各国のロックダウンが終わり、コロナ禍が収束しつつあるというメッセージを伝えるために意味あるメッセージだ

ワクチン接種進まず。でもそんなの関係ねぇ

記事のトーンは、「アメリカは日本を助けてオリンピックを開催させろ」ですが、開催に否定的な国内世論、ワクチン接種が進まない日本の現状、瀕死のスガ内閣の現状も正しく伝えた上で、小島よしおばりに「でもそんなの関係ねぇ!」と言っているのです。

理由はただ一つ、上記のように「東京五輪がつぶれたら、来年の北京冬季五輪にスポットが当たり、中国流共産主義のプロパガンダが爆発し、アメリカの覇権が揺らぐから」、です。

日本の国家戦略は、こう言うと身もフタもないですが、、アメリカの言いなりになることです。

今のアメリカの戦略の基本は中国との覇権争いです。ですからアメリカがまず今やるべきことは、来年中国の冬季五輪を目立たなくさせる、できればつぶすこと、です。

だからアメリカはなんとしても東京五輪を開催させなければなりません。東京五輪開催はアメリカの国家戦略のプライオリティなのです。

アメリカのほころびはどうしたことか
なのに、ここに来て「日本への渡航はやめよ」と国家を上げての声明を出したアメリカ。The Wall Street Journalにも、その愚をたしなめられました。バイデン/スガの「東京五輪絶対やる」の共同声明を出したはいいが、なんともちぐはぐです。私はこれはバイデン政権が日本を同盟国として軽く考えていることの一つのあらわれだと見ています。

キーパーソンがいない日米外交

もう一ついいたいのは、日本の脆弱な外交、なかんずくアメリカとのそれです。日米同盟が国家戦略の基軸ならば、五輪開催をもっと早めに合意した上で、The Wall Street Journalが言うように、「日本は危険だから行くな」の代わりに「日本は安全」の声明を出させ、ワクチンを大量供給させるべきでした。

問題は、恒常的に日米同盟のメインテナンスと強化をする、というシステムがないように思えることです。日本側には常にキーマンがいて、ありとあらゆることを情報交換し、互いの利益になるようにすり合わせ、五輪開催というような両国の戦略に致命的に重要な事項は、特に密なコミュニケーションを取らなければいけないはずです。

キーパーソンがいません。

もしアメリカが前外相の河野氏がキーパーソンにふさわしいと評価していれば、ずっと河野さんが外相をやっていたでしょう、日本政府に圧力をかけて。アメリカって国は何でもできますよ、日本に圧力をかけるのは毎度のことですし。

でも彼は英語はできるけれど、アメリカにキーパーソンとして評価されなかったのだと思うのです。もちろん過去の外相でアメリカに認められた人はいません。

外交にリーダーシップ不在の国は危ない

陰の外相みたいな存在はいるのかも知れない。しかし、今回の日米両国の、とても同盟国、戦略パートナーと思えないような失態を見ると、やはりそうしたキーパーソンなんかいないんだ、と結論づけるほかないでしょう。

ここにリーダーシップがないと、日本は危ないと思いますよ。今回の日米のギクシャクは、その兆候ではないかと危惧します。

この連載はビジネスパーソンのリーダーシップについて書いているんですが、もう一つの連載、これは高校生に向けてのものなのですが、リーダーシップをどうやって具体的に身につけるかは、そっちの方にむしろ詳しく書いています。

もし興味があれば、そちらもご覧ください。ただ、高校生に向けて書いているので、皆様にはベーシック過ぎて物足りないかも知れませんが。(「グローバル・リーダーを目指す高校生のための最強経営学」)。

外交でも何でもそうなんですが、日本のリーダーの最大の欠点は「熱がない」ただ、その一点だと思います。

東大出てても熱がなければ、世界に影響を与えることなどできない、そう思いませんか。だから今その連載ではなんとかして熱い高校生を育てようと、毎日彼ら彼女らを煽ってるんです(笑)。

今日もお読み頂き、ありがとうございました。
ではまた明日お会いしましょう。

野呂一郎

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