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Zoomの最新コラボ戦略を解剖する

この記事を読んであなたが得られるかも知れない利益:Zoomを取り囲む現実。ビデオ会議の今後の盛衰占い。ソリューションズ・アーキテクトという新ポジションの理解。コラボ戦略とは何かの理解。Roomという新しい企業の「寄生」戦略。

ズームの致命的欠点

僕はZoomが好きじゃないんですよ。この前新潟プロレス10周年記念大会のマガジンを編集していて、協賛企業にインタビューしてますっていう記事を書きましたけれど、企業の社長さんは「Zoomで取材もいいよ」って言うんですね。

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企業の現状を知らないけれど、世の中進んでいるんだなあ、と。

でも考えてみれば、僕の勤める大学でもZoomばっかりですね。そういやあ、授業のオンラインだってZoomじゃないかもしれませんが、パワーポイントを利用して自分の映像を写してましたっけ。

でもいやだZoomは。

なぜならば、プライバシーが丸見えだからです。

汚い部屋、僕の顔の後ろにあるものがみんな映ってしまうからです。背景をカットする設定でもないんですかねえ。

しかし、この困った現実が、Zoom他video calling (ビデオ通話)ビジネスの成長を助けています。

今日は、Zoomを中心にビデオ通話ビジネスの現在地を、The Wall Street Journal2021年9月16日号を参考にお伝えしましょう。

ZoomがRoomとコラボ

ルーム(Room)という会社があります。以前はPhone booth Inc.(電話ボックス株式会社)と名乗っていましたが、このビデオ通話時代に適応すべく名前とビジネスの中身を変えました。

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ビデオ通話、ビデオ会議用のブースを作り上げることがメインのビジネスです。

ズーム(正式な社名はZoom Video Communications Inc.)が、ルームとコラボしたのは、ワクチンの効果で人々がオフィスに帰り始めたからです。

もちろん、ズームのビジネスはコロナでリモートワークをやっている方が儲かるということはあります。

しかし、ビデオ通話、ビデオ会議はコロナが勢いをつけて、社員たちが会社に戻ってきても、会社内からの利用等で需要は落ちないどころか、拡大する可能性があるのです。

実際にズームの7月31日で終わる第三四半期の収益は10億ドルで、前の期に比べて54%増えています。

しかし、第ニ四半期は1年前の3倍でこれはコロナ禍でのリモートワークが爆発したおかげです。

ぼつぼつ人が戻ってきても、コロナ禍が猛威を奮っていたころは例外的ですが、ビジネスが再開してもビデオ会議の需要は増えています。ズームは来期は31%の伸びを見込んでいます。

あなたのオフィスもすぐ変革する必要がある

ズームが狙っているのは、オフィス内でのビデオ会議環境が整ってない企業の現状です。

ビデオ会議を発信しようとしても、いろいろな不備があります。そこをルームと組んでなんとかしようというわけです。

例えば防音壁、高さを調節できるデスク、取り付け済みの照明、高解像度のウェブカメラ、ズーム専用の会議室、こうした設備がよいズーム会議をするためには必要不可欠だと考えて、企業にズーム/ルームのチームとして売り込んでいるのです。

ソリューションズ・アーキテクトってなんだ

ここで僕が注目したのは、ズームの新しいポジションなんですよね。

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それはソリューションズ・アーキテクト(solutions architect)というジョブ・タイトルなんですよ。

聞いたことがないので、文脈から想像するしかないんですが、ソリューションはわかる。

日本語にもなって久しいですよね、要するにsolution問題解決ということですよね。

ソフトの時代、問題解決はあらゆる企業が売るべきサービスと言えます。

アーキテクトはarchitect設計者ですから、問題解決サービスを考えて生み出す専門家という新しいポジションだと思います。

ズームのソリューションズ・アーキテクトは、当然技術とりわけITに強いことが要件になるはずです。

さてズームに限りませんが、企業は新しい成長分野を常に探さなくてはなりませんし、変化に対応しなくは生きていけません。

ズームとしたら、ビデオ会議の拡張だけに頼るわけはいかないのです。

ソリューション・ビジネスのあるべき哲学とは

ズームのソリューションズ・アーキテクトのタイ・ブル氏(Ty Buell)はこう言います。

「我々のお客さんにとってベストになることなら、何でもやる。完全リモートがお望みならばそれを実現するし、オフィスに戻って働きたいなら、そのサポートを完全にやる」。


実際に彼はいま、オフィスでのビデオ会議を円滑にするために、ビデオ会議ルームの予約システムを構築したり、フェイスブック傘下のVRビジネス企業オカラス(Oculus)と組んでVRでのビデオ会議システムを画策しているのです。

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また、ビデオ会議の参加人数別、所要時間別に料金体系をもうけ、サブスクでの課金も考えています。

ソリューションズ・アーキテクト、ちょっとかっこいい名前で、あなたの企業も気の利いた発明の才のある社員にこのポジションをあてがったら、いいかもです。

でもこのポジション、絶対にあらゆる企業に必要だと思います。

ルームの戦略

ビデオ会議の環境を整えるビジネスは、ライバルも増えています。

PopinPod(写真), Pillar, Urban Officeなどの新興勢力です。

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ルームは、“ズーム専用”仕様に特化するという、方向性を打ち出して差別化をはかっています。

通常の企業にはそもそもビデオ会議用の部屋などはなく、照明も暗すぎたり、明るすぎたり、広すぎて声が響きすぎたりの欠点が目立ちすぎ、これらのオフィス刷新需要で追い風なのは間違いありませんが。

ルームの販売する標準的なビデオ会議対応ルームはコンピューター類完備、照明、その他のハードウェア付きで、組み立てサービス、配達料は抜きで16,995ドル(約200万円)からです。

社長のメイスナー・ジャンセン氏(Meisner Jense)氏はこう言います。「細部のディテールまで我々はどうやるべきかわかってる。素人がやっつけ仕事でビデオ会議のほったて小屋を創るのとは違う」。

ビデオ会議の環境を整えること、これこそが日本企業にも共通な、戦略的方向性かも知れませんね。

今日も最後までお読み頂き、ありがとうございました。

それではまた明日。

                             野呂 一郎

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