カタールを「にわか先進国」にしたW杯の魔力。(大学生向け)
この記事を読んで大学生のキミが得られるかもしれない利益:サッカーW杯のスポーツウォッシングを超えたパワーの秘密。中東湾岸諸国のスポーツ利用の激しさとその効用。
W杯はカタールの一人勝ち
日本代表は負けちゃったけれど、結局サッカーワールドカップで一番得をしたのは開催国のカタールだよね。
この間、スポーツウォッシングの話をした。
スポーツの力はすさまじくって、国のスキャンダルをもみ消し、不正もうやむやにし、おまけに国家のイメージまで上げてしまう可能性があるという話をしたね。
ニューヨーク・タイムズWeekly2022年11月27日号(P1,4)のWorld Cup in Qatar Caps Arabs’ push into sports(カタールW杯はアラブ諸国のスポーツ熱の証明)を読むと、W杯の威力はそれ以上だということがわかる。
それはこの記事の最後に書いてある、28歳のサウジ人の若者が言った言葉に象徴されている。
湾岸諸国全体に誇りをもたせたんだ。
これはいくらお金を積んでも、得られない価値じゃないのか。
W杯投資で国を変容させたカタール
この写真を見てよ。
キミもどっかで見たことあると思うけれど、カタール市内にそびえたつ高層ビルの威容に、W杯のスーパースターたちのイメージが浮かび上がる巨大広告。
これはさ、すべてカタールがW杯ホスト国の権利を得てから、2000億ドルをつぎ込んで築き上げたインフラの一部だよ。
高速道路も新しい地下鉄システムも、作っちゃったんだって。
W杯開催前は、世界中のみーんな「カタールってどこ?」状態だったんだ。
でも今はだれでも、カタールが中東のいわゆる湾岸諸国の一つだってわかったよね。知らんけど(笑)
今回僕らが押さえておかなくてはならないことって、このイベントがオリンピックじゃないってことだ。
サッカーファンの方がオリンピックファンより、熱烈で強烈で人口も多いんだよ。
だからカタールはそれに賭けたんだ。
ジョージワシントン大学カタール校の客員准教授でスポーツ政治学が専門のダニエル・レイヒさん(Danyel Reiche)はこんなことを言っている。
カタールの首脳たちは隣国のサウジアラビア、アラブ首長国連邦と同等の独立国だと、世界に認めてほしかったんだって。
どうだろう、カタールの政治的目的さえ、W杯は実現させてしまったといえるだろう。
W杯の効果は、いわゆるスポーツウォッシングの効果を超えるような気もするんだが。
でもね、スポーツウォッシングという色眼鏡を外して考えてみると、現代におけるスポーツの力ってすごいと思わないか。
サウジアラビアも、スポーツを政治利用することを企んでいるんだって。
もう石油に依存するだけの国じゃない、っていうのをアピールしたいだって、ニューヨーク・タイムズはいっているよ。
まあアラブの石油富豪国は、カタールも含めてここ何十年何百億ドルも国際的なスポーツに投資し、スポつチームを買いあさり、国際スポーツイベントを主催してきた。
これはかれらの国際的な影響力を増大させるためだけじゃなく、石油以外に国際ビジネスを拡大させたい狙いがあるんだ。
W杯の副作用も強烈
しかし、同時にこの国の外国人労働者に対する差別や不当な扱いが明らかになり、南アジアやアフリカの移民にわずかな賃金しか与えず、常に罵声を浴びせながら長時間労働をさせ、その搾取的なやり方が国際的な非難を呼んでいるのはご存じの通りだ。
W杯は主催国の品位が問われるイベントだ、内外から厳しい目が向けられるのは当然でもある。
LGBTQの人たちを差別していることも、国際的な非難が高まっているカタール。
これをきっかけに、カタールが真の先進国に変われるだろうか。
今日も最後まで読んでくれて、ありがとう。
じゃあ、また明日会おう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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