中東でバービー人形の映画上映は、西側への接近なのか
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:サウジアラビアで、バービー人形主演の映画が封切りされた背景。映画上映にみる中東の変化を考える。
イランとのすれ違い
今日は中東諸国がテーマなので、ちょっと僕と中東の関係性について触れたいと思います。
もうこれは30年も前の話なのですが、イランにコンサルティングに出向くことになっていたんです。
ホドロ(KHODRO)自動車という、日本で言うトヨタみたいな自動車メーカーに、コンサルティングを行うという仕事でした。
しかし、これが1週間前にドタキャンされてしまい、それ以来およびもかかりません。
最近、イラン系の企業から人事関係の研修の話があったのですが、これも本決まりだったのですが、流れてしまいました。
要らん、ということなのでしょうか(笑)
社会人に英語を教えていたことがあり、その方々はサウジアラビアで働く日本人で、サウジの厳格な男女別の意識、禁酒の文化などについてよく話を聞いていました。
僕としてはいつか行かねば、という気持ちでいます。
中東は親日国であり、しかし日本との接点がなさすぎるので、そのギャップを埋めたいと考えているからです。
プログラムはもちろん考えていますよ。
英語は通じるとは聞いているので、英語でトップの大学で日本の経営学のコーチをすることから始めようかと思っています。
ただ、やはり真剣に友好を考えているならば、現地語を勉強しなくてはダメですね。
まずは中国語をしっかりさせてからかなあ。
でも、書いたり、口にしたりしたことって、絶対に実現するんですよ。
いま中東に行くって書いたので、おそらく実現するでしょう。(ほんとかよ)
サウジでなぜ、バービー映画なのか
今日のテーマはサウジアラビアで、あの超有名人形スター・バービィの映画が上映され大反響を呼んでいる背景について、です。
ニューヨーク・タイムズWeekly8月27日号Barbie delights, and angers, in Middle East(バービィの喜びと怒りが中東で炸裂)がこのことを論じていますが、まとめるとこうです。
サウジの女性解放の動き
バービィ映画上映の裏側には、37歳のサルマン皇太子(Mohammed bin Salman)のサウジアラビアの政策転換があります。
8年前は家父長制を論じる映画や映像は禁止、女性は車の運転を禁止、街には厳格な男女の分離、女性の服装をチェックする、警察が常時見張の手を緩めない、そんな状況でした。
しかし、サルマン皇太子がこれらをみな廃止したのです。
もちろん家父長制は健在です。女性たちは今なお、結婚に際しては男性の保護者の許可が必要です。
日本人の僕らは、まだあの事件が鮮明ですよね。
2018年にトルコでサウジアラビア人記者が殺害された事件は、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が「拘束または殺害を承認した」と米政府が声明を出した件です。
その後、昨年バイデン大統領は、コロナ禍でのガソリン欲しさにサウジを訪問し、背に腹は代えられないアメリカに批判が向けられたことも、記憶に新しいです。
中東は西側に接近か
カタールでのW杯は、中東諸国が急速に経済力をつけてきたことの証明でした。
いまや中東は世界経済を動かす、グローバル・サウスの中心勢力なのです。
サウジを中心に正規依存からの脱却に、余念がありません。
それは言葉を変えれば、欧米化ということにほかなりません。
経済とは結局のところ、資本主義陣営のルール、価値観に従うことです。
そうすると必然的に、ジェンダー平等、多様性の尊重といった人間性重視のポリシーを持たざるを得ません。
バービィ映画は、アメリカが仕組んだ「米・サウジ経済蜜月の演出」なのです。
宗教でさえ、カネの力にすり寄ったのでしょうか。
こう言うと、じゃあ、アフガニスタンはどうなんだ、タリバンは女性の権利をことごとく封じているじゃないか、と反論されますよね。
でも女性の権利を認めないタリバンには、明るい未来などあるわけはなく、その意味でサウジアラビアは、賢明に違いありません。
中東の動向に引き続き注目しましょう。
野呂 一郎
清和大学教授
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