昔の英文記事をコンサルタントとしてのあなたの財産にする方法。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:紙の時代に発行されたThe Wall Street Journalの記事を見返すと、意外な発見があり、現在の問題解決へのヒントさえ見つかる場合がある。しかし海外情報とはいえ、古い情報など役に立つのだろうか。3つの条件さえ合致すればそれは可能だ。トップ画はhttps://qr1.jp/htQa1E
世界でおこった現象は日本にも影響
なぜ僕がThe Wall Street Journal、BusinessWeek、ニューヨーク・タイムズなどの記事を折りに触れ取り上げ、解説などするのか。
それは、海外で起こった事象には、日本にも必ず関係しており、我々が抱えている問題に解決の糸口やヒントを与えるに違いない、という信念があるからです。
でも、それは現在進行系のニュースだけでしょ、と読者の皆様はおっしゃると思うのです。
しかし、そうでもないのです。
別に過去の情報なんて、無理して取り上げて分析する必要もないじゃないか、とおっしゃるのですね。
でも、僕の机に読みそこねて山積みになった新聞たちが、こうささやくのです。
「お前、読んでないよ。いいことたくさん書いてあるよ。早く読んで日本の読者に知らせなよ」、と。
だから、過去の記事でも、「皆様のお役に立つぞ」とジャッジしたものは、あくまで僕の解釈で、ですが、ご紹介する構えなのです。
古い情報が役に立つ時
昔の記事も、現在の問題に示唆を与えてくれるんです。ただし、3つの条件があります。
1.その記事の背景を経験から知っていること
→例えば今日取り上げる記事の主役は米大手スーパー”ターゲット”です。ターゲットは僕がロスアンゼルスに住んでいた頃、毎日通っていて、どういうスーパーか、よく知っています。
2.その記事に書かれていることが、時間を超えて「本質的」であること
→この記事は大手小売の改革戦略について書いており、スーパーの変革は普遍的なテーマである。
3.その記事に登場する事実のコンテクスト(文脈)が、はっきりしていること
→なぜ、ターゲットが変革を余儀なくされ、それが現在どうなって、未来図も描かれている。
ターゲットの変革から何を学ぶか
この記事はThe Wall Street Journal2020年1月16日号の、Target's holiday sales disappoint(ターゲットのホリデーシーズンの売上ふるわず)という記事で、コロナ真っ盛りのスーパーが苦戦中という状況があります。
このことを踏まえ、前述の3つのポイントを整理してみましょう。
1.記事の背景つまりターゲットとは何か
米西海岸を中心に展開する大手スーパーで、ウォルマートと並び二強と称されます。しかし、品揃えはウォルマートに劣り、庶民性は勝っているイメージです。
そこまでは30年前の僕が経験したターゲットと変わっていません。変わったのは、その後オンライン販売をもちろん始めたのですが、これが停滞気味なのです。
2.本質的な問題とは何か
売上減、です。改革が必要、ということになります。
3.問題の経緯(コンテキスト)とは何か
売上減少→2017年に新CEO(最高経営責任者)ブライアン・コーネル氏が就任、改革に着手、ストアのリモデル(remodel 全面的刷新)とオンラインシステムの改善・強化に乗り出す→しかし、2020年11,12月のホリディシーズンの売上は前年度比1.4%にとどまり、期待値の3-4%増を遥かに下回る
僕らがこの記事から得られるもの
1.改革には時間がかかる、という事実
新CEOが就任して3年、株主たちは「何やってんだ、そろそろ結果を出せよ」と気をもんでいるに違いないのです。
しかし、改革(英語ではturn-aroundと表現)はそんなにすぐに結果はでない、ともいえます。
2.改革のフォーカスが間違っている、という疑問
記事は具体的に明らかにしてませんが、改革案の二大骨子は、ストアのリモデルとオンラインプラットフォームへの投資拡大、です。
店舗のリモデルって何よ、ってことですよね。
単にレイアウトを変えることなのか。
客の導線(儲けのいい商品に客を誘導する仕組み)を改善するのか。
オンラインプラットフォームの改善? いままで3クリックでしか注文できなかったのが、2クリックで済むようにするのでしょうか。
経営学の立場からは、従業員のモチベーションだとか、サービスのあり方だとかのほうが本質的ではないか、と突っ込みたくなります。
3.第三者の分析
記事がほんのり揶揄しているのは、次の1点です。
「ターゲットさんよぉ、ホリディシーズンの目玉って、子供が好きな玩具と、大人のスキな電化製品だろ?それが揃ってないんだけれど?」
一つの仮説として、ターゲットってマーケティングの基本のカスタマーのニーズを把握してないんじゃ、というのがありますね。
こういう分析もあります。
結論:古い記事でもあなたの財産になる
古い記事でも、こうして吟味することで、「改革とは何か」ということに、少しばかり本質的な理解ができたような気がするのですが、いかがでしょうか。
ターゲットのこの事例は、改革の失敗例と言えるかもしれません。
しかし、あなたがコンサルタントとして、企業を指導するときには役に立つはずです。
少なくとも、クライアントに改革論をぶつ時に、このターゲットの話は一つの「ネタ」になるでしょう。
海外の重要企業のケースは、過去のものであっても、こうして吟味して、理解して、自分なりの結論を持っておくことです。
それが専門家としての、あなたの評価を上げることになるでしょう。
もちろん、あなたの技量次第で、この情報は様々な分析や気付きにつながるはずです。
情報は多ければいい、ってわけではありませんよね。
野呂 一郎
清和大学教授
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