グローバリゼーションなんてなければ、地球は幸せだったかも。
この記事を読んで高校生のキミが得られるかもしれない利益:グローバリゼーションへ、最期の悪口を言わせてくれ。他国に経済援助を求めるが故に、政治的対立が増えて、世界を不安定にしてしてるよ。地球温暖化もグローバリゼーションのせいだろ?
イエローボールの衝撃
その昔、メールなんてなかった頃、文通が流行っていた。
それも海外の見知らぬ人との手紙での交流が。
僕は何がきっかけだか忘れたけれど、アメリカのアラバマ州に住んでいる少女と、文通していたんだ。
なぜだか、手紙のやりとりは続き、誕生日にはプレゼントを交換するようになった。
何度目のギフト交換だっただろう、彼女がテニスラケットを送ってきたんだ。
ラケットは珍しくなかったけれど、同梱されていた、テニスボールに僕は目を見張った。
イエローボールだったからだ。
半世紀ほど前は、テニスの黄色いボールは珍しく、僕はすごく嬉しかったんだ。
何気なくその素敵なプレゼントのパッケージを眺めると、made in Chinaという表記が目に入った。
その瞬間、初めて僕は、グローバリゼーションという現象を意識した。もちろん、そんな言葉はなかったけれど。
驚いたんだ、アメリカ製だとばっかり思っていた、テニスラケット・セットが中国製だったことに。
僕は少しがっかりした、アメリカのプレゼントはアメリカ製であってほしかった。でも、今思うとそれはアメリカへの憧れというよりも、コンプレックスだったのかもしれない。
駆け引きを生むグローバリゼーション
アダム・スミスのいう、自由な市場っていうのは、物物交換のことだよね。
それがどんなものであっても、交換する価値があると双方が合意した時に、モノが動くわけだ。
やがてその交換は国境を超え、それがグローバリゼーションと言われる現象になった。
交換では、双方が少しでも得をしようと策をめぐらすようになる。
交換は、やがて、取引になる。
中国は、米国からの注文でラケットを作っている頃は、単なる工場にすぎなかったが、ますます工業化に向かう世界で、大きなアドバンテージを持っていた。
それは人口であり、やすい労働力であり、原材料であり、土地、資本、エネルギーだった。
それを駆使して、世界と取引をしてやがて世界第二位の経済大国にのし上がったのだ。
いや、取引というより、駆け引きだ。
駆け引きの材料は、お互い持っているモノの価値だけではない。
その背後にある、市場、労働力、資源、政治的スタンスさえ、取引の道具になる。
これがグローバリゼーションなのだ。
北朝鮮なんて、日本人を誘拐してまで、それをネタに取引をしようとしたではないか。
こうして経済現象だったはずのグローバリゼーションは、政治色をおびることになる。
政治的対立を生むグローバリゼーション
しかし、何もない国はどうなる。
外国からカネを借りることになる。
世界中を駆け巡るのは、モノだけではない、カネも同様だ。
外国の資本家、銀行からカネを借りることで、世界の経済は発展してきた。
しかし為替や金利が変動し、貧しい国々は借金まみれだ。
特にパンデミック、ウクライナ戦争で、貧しい国々の債務は膨れ上がり、金利上昇がそれに拍車をかけている。
でも、グローバリゼーションはそれも取引の材料にする。
借金をチャラにするから、こっち側につけ、というカードを切ってくるのだ。
国際的な経済ネットワークの危うさ
そもそも、安易に国際的な結びつきなんて、やっちゃいけないんだ。
国はそれぞれの問題を抱えているからだ、能力、資源、弱点、それぞれに違うんだ。
取引がうまくいくはずがないよ。
グローバリゼーションとやらは、そのアンバランスを複雑にするだけだ。
下手に経済的に繋がっているから、リーマンショックは世界中を不況にした。
金融機関がグローバルな連携をし、国際的な相互依存関係にあるが故に、2008年の金融危機は、世界の危機になってしまった。
誰が地球温暖化のツケを払うんだ
モノがたえず地球を飛び回っている。
経済活動が活発になるとどうなるか、グリーンハウス・イフェクト(green house effect温室効果ガス)が充満し、地球温暖化につながるとさ。
それはキミも知っている。
地球温暖化や公害など、経済活動が撒き散らす環境への負荷、マイナスのことを、経済学では「外部不経済」と呼ぶ。
じゃあ、だれが地球温暖化という地球が被っているマイナスの責任を取ってくれるんだ。
「先進国はさんざん公害を撒き散らしながら、今になって、お前たち途上国は、撒き散らすなという。不公平だ」、途上国はこう言って反発したことがある。
もっともな話だ。
外部不経済の処理を公平に負担する、そんなめんどくさいことも、グローバリゼーションは我々に要求している。
この100年、世界は鎖国していたほうが、いい世界になったのではなったんじゃないですか、アダム・スミス先生。
これでグローバリゼーションの悪口は終わりだ。
だれか、今度は弁護してくれよ。
明日も暑いかも。
熱中症に気をつけて。
野呂 一郎
清和大学 教授
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