フィンランドに学ぶフェイクニュースの見分け方。
この記事を読んであなたが得られるかもしれない利益:フィンランドのメディア・リテラシー教育紹介。メディア・リテラシー教育ゼロの日本のなぜ。従来の地政学的な有利が消滅したという事実に気づかない、危機感ゼロの日本の現状。
フィンランドに学べ
フィンランドはヨーロッパの国で最もニセ情報に対するレジリエンス(耐性)が高いことが、ブルガリアのソフィアでオープン・ソサエティ・インスティチュート(Open Society Institute)が発表した調査結果で判明しました。
フィンランドはヨーロッパ41カ国中、首位で5年連続です。
もちろんそれは教育のなせるワザです。
フィンランドでは、2013年からメディア・リテラシー教育、つまりメディアで報道される情報の真贋を見分ける力をつけるカリキュラムが、公立学校で実施されています。
メディア・リテラシーは必修ですが、教え方については各教員の裁量に任されています。
ニューヨーク・タイムズWeekly2023年1月22日号は、Students receive lessons on spotting misinformation(学生たちはニセ情報を見分けるためのレッスンを受けている)との見出しで、フィンランドがいかにメディア・リテラシー教育に熱心かを報じています。
フィンランド流メディア・リテラシー教育のポイント
その教え方について、少し紹介したいと思います。
1.情報発信者の動機を探れ
例えば新聞記事を教材に、この記事を書いた人の動機をさぐる。
筆者は何をこの記事で伝えたいのか、それはなぜか、そしてその記事を書くことによって得られる利益は何か。これを考えることにより、ニュースに偏向があるかないかわかる。
2.ロシア側のニュースを題材にしろ
すべてロシア側の情報を題材にすると、ロシアのプロパガンダの正体が見えてくる。
3.ニセ情報には間違いがあることを教えろ
フィンランド語人口は540万もあり、ニセ情報はしばしば、フィンランド語ネィティブでないものが犯す間違いで発覚する。
文法や構文の誤りを見れば、それはフィンランド人でない、悪意の第三者の手になるニセ情報だとわかる。
メディア・リテラシー教育ではこのことを教えるとともに、正しいフィンランド語を使えるように指導もする。
4.生徒にフェイク動画を作成させろ
すでにあるファイルの画像や動画や音声を、改ざんするように先生が指示する。
そうすると、いかに簡単にそれらに細工ができるかを、子どもたちは身体で理解できる。いわば犯人側の立場になると、ニセ情報の本質が見えてくるのだ。
メディア・リテラシー教育のキモとは
フィンランドのメディア・リテラシー教育を統括するフィンランド国立オーディオ・ビジュアル・インスティテュート(National Audiovisual Institute)のディレクターである、レオ・ペッカラ氏(Leo Pekkkala)は、こう言います。
まさに、我が意を得たり、そう思った次第です。
日本にメディア・リテラシー教育がない理由
それはいつも言うように、考えさせることが教育全体に欠落しているからです。
メディア・リテラシーとは考えて、批判することから生まれるスキルにほかなりません。
しかし、日本の教育は正解を覚えさせるだけ、考えさせません。
そんなことないよ、生徒に考えさせてるよ、とおっしゃる方もいますが、ディスカッションもさせずに、どうして考える力がつくのでしょう。
他者の考えと、自分の考えを比較し、検討し、討議しながら考えを深めていかない限り、生徒に考える力を与えることはできない、そう考えます。
ロシアの脅威が教育に影響
フィンランドは、ロシアと1340キロメートルの国境を共有しています。
やはり地政学的な不利が、メディア・リテラシー教育の切実なニーズを呼び起こしていることは明白です。
よく日本の地政学的な有利を言う人がいます。
海に囲まれて他国からの侵略がなかった、国境を接していないから独自の文化が発展した、と。
しかし、そういった有利はICBMミサイル(intercontinental ballistic missile大陸間弾道ミサイル)の高性能化で無意味になったし、日米協定で有事のときには日本が戦場になることは避けられない事実を考えると、消滅しています。
しかし、僕らの意識は数千年、そのままです。
毎日北朝鮮からミサイルが降ってきているのに、台湾有事の可能性が大きいのに、のほほんとしているのはそのせいです。
フィンランドの国防意識とは、まさに天と地の開きがありますよね。
だからこそ、いま、メディア・リテラシー教育が必要なのではないでしょうか。
チャットGPTが弱くするメディア・リテラシー
フィンランドで今言われていることは、若者たちのリーディングスキルが落ちてきて、それがニセ情報を見分ける力に悪影響を与えるのではないかということです。
これは読書量が少なくなっているからです。今の時代、子どもたちはゲームや動画により多くの時間を使うことが理由です。
読書量が少なくなれば、知識量は減り、知識量が減れば、情報そのものが理解できなくなり、メディア・リテラシー教育にとってそれは由々しき事態と言えるでしょう。
チャットGPTが世界を侵攻しつつある現在、人はますます読む、ということをしなくなるのではないでしょうか。
知識は本や新聞や雑誌で得るものではなくて、AIから得るものだというライフスタイルが予測されるからです。
昨今は、AIがフェイクニュースを巧みに作ることが現実になっています。
メディア・リテラシー教育をこれからしっかりやらないと、日本も先進国からずり落ちる日も遠くない、そう危惧するものです。
今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
じゃあ、また明日お目にかかりましょう。
野呂 一郎
清和大学教授/新潟プロレスアドバイザー
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