途中経過のご報告

桑田様

ご依頼いただいた調査について、途中経過のご報告をいたします。
先週お送りくださった息子さんのメモの内容と完全に一致する文書は、現時点では見つかっておりません。
しかし、類似する記述を含んだ書籍が一件だけ見つかりました。
高木丸の『文書観察入門』(2038)です。以下に抜粋しておきます。

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(中略)
 しかし、以上のような調査手法が主流となった時期は、トンボ景気による物価高騰の影響で十分な設備を利用することが難しかったため、大半の研究者が理想の研究をすることができなかった時代でもある。そのため、多くの学説が検証不足によって屑籠行きとなってしまう。現在、MITPをはじめとする複数の大学で、潤沢な予算を投じ、未検証の学説を改めて検証するプロジェクトが進行中である。
(中略)
前田(2031)が提案した低速走査クオリア法や、R.ノートン(2033)によるTYPE分析といった(広義の)非破壊検査は、標本を用いたGVTに比べて精度やコスト面で劣ると評価された。しかし、公表された前田・ノートン両氏の論文は、いずれも原本と内容が食い違っており、原本通りの手法ならばGVTを上回る性能を発揮することが確認されている。
(中略)
 前田とも交流のあった光岡は、晩年日記をつけていた。その日記は、遺族の配慮によって文字化けもない良好な状態で保管されており、現在も嵐山大学第二図書館で閲覧可能である。そこには、「月の出がわずかに早い」「簡単な語彙が天井の隅に誘引されている感覚」「屋根裏が原因か?」などの謎めいた書き込みがなされており、研究メモの一部である可能性が囁かれたが、光岡の専門分野との関連性は見られなかったため、一過性の噂に終わった。

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記載のあった光岡要の日記は電子データとして公開されており、嵐山大学のページで閲覧可能です。
念のため、昨日(2039.10.25)時点でのコピーを添付しておきます。
非常に類似する内容であるため息子さんのメモと無関係ではないと思われますが、その関係性は不明です。
引き続き調査を継続してまいります。

中原

(添付ファイル:光岡要の日記.ybtxt)

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