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印象的な2組の親子

平凡な日々を送っているので目新しいことは起こらない。
そこで、過去に起きた忘れられない出来事を記すことにした。

もう20年以上前。一人で海外から帰ってくるときのはなし。
直行便がなくて、韓国仁川空港経由。
しかも仁川で1泊することに。
韓国の入管検査に並んでいるときに
どこの国の方かな、東欧系の母と娘。
少しでも早く手続きをしたい様で次々と隣の列に並び直している。
すこしイライラしている様子だ。きっと急いでるんだな。
早く検査終わるといいね。

私も検査が終わって、予約していたホテル行きのマイクロバスに乗る。
車内で隣に座った、赤ちゃんを抱いている若いお母さんと少し話す。
オーストラリアからで、ご主人が軍隊に所属していて中東に滞在中。
赤ちゃん連れて会いに行くそうだ。
預けていた荷物が行方不明になったようだが、
手荷物に赤ちゃんの用品が全部あるからラッキーだったって。
機内でも客室乗務員のサポートも良くて赤ちゃんもずっと
ご機嫌だったそうだ。なんか明るい雰囲気のお母さん。

無事にホテルに到着。
チェックインして、部屋で少しくつろいだ。
一人にしては十分な広さで快適だと思った。
当時の日本では「冬のソナタ」でヨン様人気の時代。
何を言っているか全く理解できないけれどテレビを見たりした。

その後、サービスに含まれている夕食のためレストランへ。
エレベータの中はキムチの香りがしたので本場の味を
楽しめるかと期待したものの、
夕食というのに朝食のようなメニューだった。
トースト、オムレツ、ハム、スープ、生野菜のサラダ。
でもサービスなので特に気にしない。

ところが、ぎょっとしたのは、テーブルの上の塩だ。
卵に塩をかけようと思って、塩の入った蓋に穴のある瓶を
傾けるも塩が出てこない。
瓶を振ると、中から小さな虫が出てきて私の皿から飛んで行った。
まあ、こんなこともあるかもしれない。
再度、瓶を振ると、また中から小さな虫が出てきて
私の皿から飛んで行った。

そんなバカな?懲りずにもう一度瓶を振る。
またまた中から小さな虫が出てきて私の皿から羽ばたく。

ダメ押しでもう一度。
小さな穴から虫が出てきて私の皿から離陸。
すでに4匹連続。

こうなると、瓶を開けてみて中身がどうなっているのか
確認したい好奇心に駆られたが、とりあえず食事を済ませることにした。

そうしていたら、空港で見かけた東欧系の母と娘が
レストランに入ってきた。
一泊するなら入管検査でそんなに慌てなくてもよかったろうに。
あるいは検査で時間がかかった結果、
一泊することになってしまったのだろうか。

東欧の母と娘も私と同じメニューだ。
オムレツではなくて、目玉焼きがよかったらしく、
スタッフに作り直しを要求していた。
スタッフも一生懸命対応しているように見えた。
作り直したものが運ばれて、それを見た母親が文句を言っていた。
スクランブルじゃなくて、目玉焼きだと。
ああ、そうか。スタッフの方はサニーサイドアップの意味を
知らなかったのか。なので調理場の方に伝えられなかったんだ。
私も韓国語わからないので通訳できなくてごめんなさい。
もどかしいが、見て見ぬふりをするだけだった。
20年以上前は、グーグル翻訳どころかスマホもない。
ちなみにネットはまだダイアルアップの時代。

結局、あの塩の瓶を開けることはせず、
レストランのスタッフにも塩の瓶に異常があることを
伝えることもできずに夕食を済ませ、部屋に戻ることにした。

食堂を出たところで、オーストラリアの赤ちゃん連れの
若いお母さんに会う。
「あら、また会ったわねー。ここのホテルの部屋快適だわ!」
とニコニコ。お風呂上りだろう。まだ乾いていないショートカットと
心地よさそうな軽装。それにお母さんに抱っこされた、
機嫌のよい赤ちゃん。

ということがあったことを、時々思い出す。
それぞれの親子は今どこで、どうしているのかわからない。

この出来事があったばかりの頃は、ニコニコ明るい
オーストラリアのお母さんの雰囲気にあこがれて、
そういう人生のほうが絶対に正解のように感じていた。
でも今では、東欧の母娘の気持ちも理解できるし、
そういう行動もとりがちな自分であることを認める。

ちょっとしたきっかけで出会った人のエッセンスって
自分の中にちゃんと保存されていて、
今度は自分の人生で体験する時になって
じゃあ、あの人だったら、どう行動するかなとか
どう感じるかな、とか考える。
その時には理解できなかった、あの人の行動や発言や
考えも、後になったらわかることも。
歳を取るって、そういうことなのかな。
持っているエッセンスを増やし続けるのが理想だ。
実在する人物だけでなくても、映画とか本とかでも
空想でもいいと思うけど。

たどり着いて読んでくださってありがとうございました。
あなたにとって良い一日になりますように。

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