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クァシンとアイの冒険

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設定をフリー素材にしました。 キャラも世界観も自由に使ってください。 どんな形式でも大歓迎です。 小説でも詩でも音楽でも絵でも良いです。 #ワールドザワールド
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#短編小説

27 なんでもあり!? ワールドザワールド、おすすめの観光スポット5選

 ワールドザワールドにはなんでもあると言われています。  例えば、40センチの靴 から 何も書くことのできないノート、ドアのない家 から 段のない階段、ハイデガーの同人誌 も 飲むと死んじゃうお茶 も 男性用の生理用品 も 左利き用のメガネ もあります。  そんな魅力あふれるこの世界には、みんなが「町」と呼ぶ町があります。  今回はこの町から、旅行に行くなら絶対に見るべきおすすめスポットを五つ紹介します。  そのまえにまず、町への行き方を知らないといけません。  あなたが

26 川の底の神様

 しとしと雨が降った。  うさぎたちはアイの部屋にはいったり、木陰にひそんだり、土にもぐったり、箱に隠れたり。ひげを揺らして、鼻を寄せあって雨をながめるのだった。みんな静かに、黒く濡れた瞳や、赤い瞳で。  アイは床いっぱいにひしめくうさぎたちをかきわけて、扉から顔を出した。秋にしてはむし暑くて、どろりとした汗と雨が首から背中へ流れる。  陰鬱とした重苦しい雲。  うさぎたちも体を重そうに、ひっくりかえったりするのだった。  アイは雨が強くないと判断したので、外へ出て、クァシ

23 蚊に刺されて

1  目を覚ますなり身体をギチギチと痛めつけ鉛のように重くする高熱の症状に、気を失うように眠ったり、また反転して起きたりと繰り返す白髪の少年は今再び瞼をもちあげ、曇った瞳で天井を眺めていた。その風景も周囲の人らの彼を慮る声も、病人には届いていない様子である。熱は抵抗を作る。ここでもまた高熱のクァシンと周囲の世界とで、音も光も意思も抵抗によってすんなり行き交うことはなかった。 「これは、ふくれ病って言ってね、このままじゃあクァシンちゃん、三日後に破裂しちゃうよ。それで中から大

21 アイの長い一日

その日のアイにはすることがなかったから、いつも通り規則正しく朝早くに起きたけれども何をするでもなく寝転んだまま目を開けて、天井を見ているとウサギがお腹にポンっと勢いよく乗ってきたことがきっかけで、そう、何かの弾みで心の中の世界にふっと風が吹くことはよくあるけれど、アイは今まで妄想なんてそうそうする性格ではなかったのに、この日ばかりは妄想というものが頭の中いっぱいに、それもぼんやりとではなく、明確に輪郭を持って立ち現れてきたのだが、その妄想というのは、あの路地に関することで、こ

19 バナナの道

 クァシンはいろんな種類の花を紙に描き写して歩いていました。  町には一川と呼ばれる川が通っていますが、その一川に沿って南下しているのです。黄色い小さな花や、赤い茎の太い花など、探してみるといくつもありました。  昼を過ぎた頃でしょうか、風車のついた赤い家を見つけました。  川辺にポツンとある家です。  クァシンには気になって訪ねてみることにしました。  中にいたのは眼鏡をかけ、白衣をまとったた恐竜でした。三本、ツノが生えています。彼は「トリケラ」だと名乗りました。クァシ