本17 えーえんとくちから 笹井宏之

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 聞きなれない病名だ。身体表現性障害。詳しくは知らないが、どうやら精神的なことが起因しているらしい。むづかしくは知らない。
 この歌集の作者である笹井宏之がそれで、その病気のためなのかそうでないのか判らないが、彼の短歌はとても独特だ。真似しようと思ってもなかなか出来ない。
 彼の短歌を読んでいると、言葉がいきなり飛んでくるイメージ。
 上句から続く下句への転調がとんでもない飛躍を見せる。ゆえにそれらは何て自由な世界だろうと思わせるにじゅうぶんだ。
 そこに書かれた一行よりも、もっと遠くに読者を連れて行く力はもはや云うまでもないだろう。その力の源はすでにこの世になく、残念ながら彼の新作を読むことはもう叶わない。
 一読して理解が出来ないのは短歌の魅力のひとつだ。その意味では笹井宏之の作品を事あるごとにくりかえし読むのが正しいのだろう。忘れた頃にもう一度、またもう一度というように。

 笹井宏之の短歌は、世界を平等になめているような、諦めているような、希望の光を見出そうとしているかのような、ちゃかしているような絶望のような、つかみどころのない魅力で満載だ。 
 
 



 



 



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