心は孤独な狩人 カーソン・マッカラーズ(著)、村上春樹(訳)

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ここに描かれている不思議な世界は、たんに時代や国の違いだけではないだろう。
カーソン・マッカラーズの創作精神の中にある何ものかが、このデビュー作に集約されていると思った。
彼らはゲイなのかそうじゃないのか。少女が抱く恋心みたいなものは純粋に恋心なのかそれとも違う何かなのか。そのほか、いろんなことが謎だらけの物語である。そしてその謎は永遠に解放されず、誰の手にも届かない場所へ向かってゆく。
読み終わってからしばらく経つが、時々ふとした時にこの物語の断片が頭に浮かんでくる。
白黒だ。
白黒の町、舗装されていない道路の砂ぼこりが舞っていて、子供が銃で遊んでいる。おおむね誰の表情にも精気はあまりなく、とても幸せそうには見えない。
その中でもミック・ケリーの健気な夢だけが色を持ち、こちらの心に訴えかけてくるものがある。
最後の方で語りかけてくる言葉があったような気がするが、それが何だったのか、今では何も思い出せない。

B55/2022/7


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