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アップル・テスラ・米政府も「大卒主義」から脱却、スキル重視へ【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回はアップル・テスラ・米政府も「大卒主義」から脱却、スキル重視への回を文字起こししました。

日本ではまだ「大卒主義」と呼べる慣行が根強いですが、アメリカでは大手企業や政府が大卒主義から脱却し、「スキル重視」への移行を開始。労働市場の最適化とも呼べる動きが興りつつあります。大学に行かないZ世代も増える中、海外の労働市場で起こる大きなシフトをお伝えします(出演:岡徳之/写真:Hunters Race on Unsplash)。

アップル、テスラが「非大卒」へ

以前のエピソードで、「大学に行かないZ世代が増えている」とお伝えしたことがありましたが。

このZ世代のシフトに呼応してなのか、企業など就職先のほうにも、「大卒=大学卒業」を求めない動きが広がりつつあります。

例えば、アップルのティム・クックCEOは、昨年3月の米国労働政策評議会の会合で、「大学で学ぶスキルと労働市場で求められるスキルがミスマッチしている」と指摘。

そのうえで、アップルではすでに大卒要件を大幅に緩和し、2018年時点の同社社員の半分近くは、非大卒者であることを明らかにしています。

テスラのイーロン・マスクCEOも、自身が経営する企業への入社において、大学卒業は必須ではないことを明言していて。

自身のツイッターで、昨年末、「大卒を入社条件にしないというスタンスはこれからも堅持しますか?」というフォロワーからの質問に対し、「Yes」と回答しました。

企業だけでなく、「政府」も

企業だけではありません。

トランプ大統領が今年6月末に発令したのが、米連邦政府職員の採用において、大卒必須条件を緩和し、スキル重視にシフトするという大統領令です。

これを受けて、米連邦人事管理局は、6カ月以内に連邦職員の雇用条件を改正することになっています。

アメリカ政府は、200万人以上の職員を抱える国内最大の雇用主ですから、大統領令の影響は大きなものになると見込まれます。

ホワイトハウスは、この動きを「雇用のモダナイゼーション」という言葉で表現しています。

この動きは今後、さらに拡大していくようで。

その大統領令に続いて、7月にはアップルのティム・クックCEO、IBMのジニー・ロメッティ会長、イバンカ・トランプ氏が支援する、スキル開発促進キャンペーン「Find Something New」がローンチされました。

このキャンペーンは、求職者には継続的なスキル習得を、一方の企業側には、大卒要件緩和を促すものだそうです。

なぜ今、「非大卒」の動き?

こうした動きの背景として、アメリカではこの数年、大学の学生ローン問題労働スキルミスマッチ問題がミレニアル世代の大きな関心ごとになってきたことがあります。

大手メディアもこの問題を頻繁に取り上げていて、それによって、大学に入ることのコストパーフォーマンスを問う声が高まり、これまでの「大卒主義」を見直す動きが、少しずつ拡大してきたんですね。

「大手企業入社や国家公務員になるには、良い大学を出ないといけない」。これはアメリカ、日本だけでなく、いろんな国で広く浸透する言い伝えですが・・・。

大卒重視から、スキル重視へのシフトが、これから世界的にどう広がっていくのか、今後の展開に注目です。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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