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「スペシャルティ・カフェ」をめぐるヨーロッパの旅。暮らすように旅する中で見つけた、とっておきの10軒(写真つき)

ベルリン、ポルト、ブルージュ、ストックホルム――アムステルダムに住んでから、近隣のヨーロッパ都市を旅する機会が増えた。どこも古い歴史が生み出したすばらしい伝統や遺跡が楽しめるが、僕がいちばん居心地がいいと感じるのはいつも、各地の「スペシャルティ・カフェ」だ。

ファンの熱量が大きいコーヒーの世界

 そもそも僕がコーヒー好きになったきっかけは、アムステルダムに住み始めたことが大きい。ここはコーヒー好きの人が開いているこだわりのカフェが多く、コーヒー好きのコミュニティやイベントもたくさんある。そんなカフェに囲まれて生活するうちに、自分もコーヒー好きになり、自宅で飲むコーヒー用にも近所の気に入ったカフェのコーヒー豆を買うようになった。

 コーヒーマガジン『Standart』を制作している友人、行武温さんの影響も大きい。この雑誌を開くと、本当にコーヒーが好きな人が書いているのが分かるし、読み手の熱量の大きさも伝わってくる。毎日飲むものでもあるから、ビジネスとしての潜在性も大きい。コーヒーの世界の深さと広さをあらためて実感し、「コーヒーっていいな」と思えるのだ。

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価値観を共有する「スペシャルティ・カフェ」

 コーヒー好きが集まるカフェの中でも、僕がいちばん好きなのは「スペシャルティ・カフェ」。バリスタが一杯一杯のコーヒーを丁寧に入れてくれる、こだわりのコーヒーが飲めるカフェだ。

 そこではコーヒー豆の生産から輸送、抽出までの管理・処理が徹底されているほか、コーヒー産業全体のサステイナビリティやトレーサビリティを重視している。若い消費者の価値観とも合致した、今っぽい場所なのだ。

 こうしたカフェの広がりは、コーヒーが大量生産・大量消費され、インスタントコーヒーが家庭にも広まった「ファーストウェーブ」、スターバックスなどのシアトル系カフェが席巻した「セカンドウェーブ」に続く、「サードウェーブ」と呼ばれている。

 そうした背景から、僕がヨーロッパを旅する中でも、スペシャルティ・カフェに出会うことが多くなってきた。

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旅先での「自分の居場所」

 今年初めに行ったブルージュは、食事も美味しいし、運河や石畳がすてきな街だったが、どうも古いモノに支えられている街という印象が強かった。どこに行っても「キャッシュ・オンリー」でカードが使えないし、街を構成しているのは観光客と、彼らにサービスを提供している人ばかり。「ここにはちょっと住めそうにないな……」と思ってしまった。

 そんな中で見つけた一軒のスペシャルティ・カフェ。中に入ると、若い人が運営していて、顧客の年齢層や雰囲気も自分となんだか似ている。「やっと居場所を見つけた」という感じで、僕の心は落ち着いた。これまでもヨーロッパのいろんなスペシャルティ・カフェをめぐってきたが、僕はブルージュの体験を通じて、自分がどうしてスペシャルティ・カフェを目指すのかが分かった気がした。

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 スペシャルティカフェには、自然と会話が生まれ、弾みそうな人たちが集まっていて、新しいものが生まれる期待感も感じられる。僕はきっと、こういうリアルな今、人の新しい営みが感じられるところが好きなのだ。

 気に入ったスペシャルティ・カフェが見つかると、その土地に住んでもいいな、と思ってしまう。ヨーロッパいち素敵だと思えるカフェに出会えたポルトなど、本当にいつか住んでみたい。スペシャルティ・カフェは僕にとって、その土地が自分に合うかどうかを確かめるバロメーターのような存在だ。

ヨーロッパで出会った、とっておきの10軒

 このところの僕の旅は、観光地をめぐるのではなく、暮らすように楽しむスタイルになっている。前置きが長くなってしまったが(すみません……)、そんな旅で出会った、お気に入りのスペシャルティ・カフェをご紹介したい。

LOT SIXTY ONE(アムステルダム)

アムステルダムのカフェといえばここ。以前「アムステルダム“スロー”ガイド」でもご紹介したカフェで、とにかくそのこだわりのコーヒーが美味しい。ブラジルとエチオピアから取り寄せたコーヒー豆を特別なロースターで焙煎。熱烈なファンも多い。

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Bonanza Roastery Café(ベルリン)

南米やエチオピアから輸入したハイクオリティな豆だけを特別に焙煎したスペシャリティ・コーヒー・ブランド「Bonanza Coffee Roasters」のカフェ。ここがオープンした時は、ファンが狂喜したという。広々としたスペースに、センスの光るインテリアと観葉植物が心地いい。

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Democratic Coffee(コペンハーゲン)

コペンハーゲンの中心部にある、とても「民主的な(Democratic)」場所、図書館の近くにある北欧感あふれるカフェ。毎日、学生やビジネスパーソンで賑わっている。こだわりのコーヒーはもちろん、1日2回、店で焼いているアーモンドクロワッサンが評判(『世界一美味しいクロワッサン』という人も)。

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Drop Coffee(ストックホルム)

ここのコーヒー豆は世界的に人気があり、創始者の1人であるJoanna Almさんは、世界コーヒーロースター大会で3位入賞。南米やアフリカの豆生産者とのコミュニケーションも大切にしている。スウェーデンらしい温かい雰囲気のカフェ。

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7g Roaster(ポルト)

僕がヨーロッパでいちばん好きなスペシャルティ・カフェ。半分は屋外に解放されていて、明るくカジュアルで、最高に居心地がいい。コーヒーはもちろん、ポルトガルの軽食も美味しい。「7g Roaster Apartment」というホテルも併設されていて、宿泊客にもこだわりのスペシャルティ・コーヒーを提供している(いちばん好きなのに写真を撮り忘れたので、オフィシャルの写真をFacebookページから拝借しました……)。

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Cafuné(ブルージュ)

僕のブルージュ滞在を楽しくしてくれた一軒。古い街並みにあって、ここではクリエイティブで新しい息吹が感じられる。Probat社のロースターを使って、こだわりの豆を独自に焙煎。エスプレッソベースの飲み物を一杯ずつ丁寧に入れている。ブルージュ内のカフェのほか、ブティックやパフュームショップなどにもコーヒー豆を卸している。

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Joost & Maartje(マーストリヒト)

オランダ南部の街で、若いカップルが運営するカフェ。オランダらしいシンプルな店内は、奥行きが深く、木のインテリアと観葉植物が居心地のいい空間を作っている。独自に焙煎したコーヒーと、ホームメイドのケーキやランチが美味しい。

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Toki(アムステルダム)

ここでは前述の「Bonanza Coffee Roasters」の豆を使用。オーナーが入れるこだわりのコーヒーと、Max Lambデザインの写真映えするインテリアで、開店以降またたく間に人気を馳せ、今やアムスで最もインスタグラムでシェアされるカフェとして知られている。パンにスイカ大根や卵が載った「Tokiトースト」が人気。いつもクリエイター風な人たちが集まっている。

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Drupa Coffee Roasters(アムステルダム)

アムステルダム在住の出張美容師で、コーヒー豆を自家焙煎してくれるナガイケイさんに教えてもらった、コロンビア人とアルゼンチン人のカップルが運営するカフェ。コロンビアのコーヒー農場で学んだ知識を彼らのスペシャルティ・コーヒーの焙煎に適用した。デンマーク製のロースターを使って、コロンビア産の豆を店内で少量ずつ焙煎している。

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Public Space(アムステルダム)

新開発され、アバンギャルドな雰囲気を持つノールド(北部)地区のアパートビルにオープン。オーナーはオランダ人と、南アフリカ人×スコットランド人のハーフ、チーフバリスタはアメリカ人。デンマーク製の家具がモダンな店内は、自由で開放的。一瞬どこにいるのか分からなくなるような、不思議な融合が味わえる。

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最後に、僕のスペシャルティ・カフェ探しに一役買ってくれているWebサイトが「The Coffeevine」。アムステルダムベース(実はご近所さんだったことが最近判明!)の起業家が作ったサイトで、コーヒー好きの仲間が世界のスペシャルティ・カフェの情報発信やコーヒー豆のサブスクサービスを展開している。次回の旅の参考にしてみては?

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。
構成・文:山本直子
フリーランスライター。慶應義塾大学文学部卒業後、シンクタンクで証券アナリストとして勤務。その後、日本、中国、マレーシア、シンガポールで経済記者を経て、2004年よりオランダ在住。現在はオランダの生活・経済情報やヨーロッパのITトレンドを雑誌やネットで紹介するほか、北ブラバント州政府のアドバイザーとして、日本とオランダの企業を結ぶ仲介役を務める。

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