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iOS15の「メールプライバシー保護機能」がリリースされたのでメールマーケティングへの影響を改めて調査してみた。

はじめに

こんにちは、株式会社WOW WORLDの藤田です。
※本記事は2021年10月7日に公開したものを、リライトして同12月13日に再公開しました。

Appleから、iOS15が2021年9月21日にリリースされました。そのiOS15の新機能に「メールプライバシー保護機能」があります。前回の記事「iOS15の『メールプライバシー保護機能』のメールマーケティングへの影響を調査してみた。」では、この機能がメールマーケティングに与える影響を書きました。

実際にリリースされた機能の動作は、私が予想した動作とはだいぶ異なっていました。今回はリリースされたiOS15の「メールプライバシー保護機能」が、どのような動作をするかを書きました。

当初のApple社発表とプレビュー版で予期されていた影響

前回の記事では、当初のApple社の発表とプレビュー版の動作から、HTMLメールについて、以下4つの影響の可能性があると書きました。

①HTMLメールが届くと開封扱いになり、開封率(=メールを開いた人÷メールが届いた人)が増加する
②時刻、IPアドレス、UserAgentに基づく動的なバナー画像応答ができなくなる
③メールを読むデバイス情報の取得ができなくなる
④HTMLメールで使用する画像への集中アクセスが発生する。

これらの影響は、HTMLメール中の画像の取得方法が変更になることにより発生します。従来は下記の図の流れで取得していたものが

画像1

プレビュー版での検証の結果、下記の図のように変わると想定していました。

リリースされた際の動作はどうなったか

ところが、2021年に9月21日にリリースされたiOS15のメールプライバシー保護機能は、HTMLメール中の画像の取得について3つのケースがあるややこしい動作をしていました。
A:受信者がメールを実際に開封したので画像の取得が行われる
B:受信者がメールを開封していないがiPhoneが自動で画像を取得する
C:画像の取得は行われない
比率はおおよそA:B:C =2:2:6くらいと捉えています。
(Aの比率はメールの良し悪しによる受信者の反応によって上下します。)

1つめのケース(2割)
2つめのケース(2割)
3つめのケース(6割)

Apple社は iOS15のメールプライバシー保護機能を以下のように説明しています。

画像5

たしかに、送信者側は開封取得用の画像にアクセスされたことをもって開封したと判断することができません。iPhoneが自動で取得した可能性があるためです。ただし、開封取得用画像への長期間での累計アクセス回数を見れば、メールを見る受信者かどうかの傾向は分かりそうです。
個人的には、メールを受信したタイミングでもなければ、人がメールを開いたときでもなく、iPhoneが適当なタイミングでランダムにメールの中の画像を取得しに行くことに驚きました。

HTMLメール中の画像の取得についてはこのように変わりました。
1.アクセス有無:受信者が開いた場合、または、iPhoneが自動で取得する場合がある、おおむね2割+2割の4割
2.アクセス時間:受信者が開いたタイミングだったりiPhoneが自動で取得するタイミングだったり、まちまち
3.アクセス元IP:Appleのプロキシ(CDN使っているから場所不明)
4.UserAgent(ブラウザの種別):Appleのプロキシの謎UserAgent「Mozilla/5.0」(これだけ、iOSとかiPhoneとかない)

プレビュー版とリリース版の変更点としてもう1つ、「メールプライバシー保護機能」が、既定で有効である、または、メール受信時に有効になるよう促される、ということがあります。結果として、iOS15のほとんどのデバイスでは「メールプライバシー保護機能」が有効になっています。

現時点で「iOS15のメールプライバシー保護機能」により発生するメールマーケティングへの影響


現時点で5つの影響が生じています。

①見かけの開封率があがる。
例えばメール配信先の4割がiPhoneで、これまで開封率が20%(10通送れば2通読まれる)であれば、このような分布だったのですが(総数=1,000で例示)

今後iOS15が普及するにつれ、下のように変わっていきます。

②マーケティングオートメーションでよくある「メール開封しない方にだけ別のコミュニケーション手段(例:DM)でコンタクトを行う」というシナリオは避けた方がよい。

iOS15リリース後、送信するシステムでメールを開封と判別したケースには「受信者はメールを見ていない。iPhoneが自動で画像を取得しただけ」という方が含まれるためです。
今後は、メールの中のクリックの頻度、サイトのアクセス頻度、アプリの使用回数、購入回数といったスコアリングに基づいて、コミュニケーション手段を決めていくのがよいのかもしれません。

HTMLメールで使用する画像について、時刻に基づく動的なバナー画像応答は間違った結果を表示する可能性がある。

時刻に基づく動的なバナー画像応答とは、今日の23時に終了するセールについて
- 12時にメールを見た:あと11時間でセール終了
- 18時にメールを見た:あと5時間でセール終了
- 22時にメールを見た:あと1時間でセール終了
とバナー画像の応答をアクセスされた時刻などに基づき変更する仕組みです。
この仕組みが数%の確率で
- メールが10時に届いた
- iPhoneが13時に取得した:あと10時間でセール終了の画像を取得
- 受信者がメールを22時に開いた:このとき13時に取得した画像が表示され、本当はあと1時間でセール終了なのに、”あと10時間でセール終了”の画像が表示される
と誤作動を起こします。

HTMLメールで使用する画像について、IPアドレス、UserAgentに基づく動的なバナー画像応答はできない。

例えば、日本からのアクセスとアメリカからのアクセスで応答する画像を変更する、または、WindowsとiPhoneなどデバイスや解像度で返す画像を最適化する、といったことはできません。

⑤ HTMLメールで使用する画像へのリクエストから、メールを読むデバイス情報(UserAgent)の詳細な取得はできない。

ただし、UserAgent が「Mozilla/5.0」であれば、Appleのプロキシであることは確実なので、iPhone、iPad、Mac のいずれかと判別できます(デバイスの数からiPhoneとみなすことが多い)。

終わりに

このiOS15のメールプライバシー保護機能、UserAgentや位置情報の秘匿は、今後、他のプラットフォーム(Google、Windows)に波及するかもしれません。

このような環境の変化について、今後どのように対応すればよいかなど、メール送信についてご要望やお悩みを持つ方は、弊社のWEBCASというサービスへ、お気軽にお声がけください。

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